古都の風(短歌集)/2016年5月京都にて
【出雲の阿国に捧ぐ】
賀茂河原萌ゆる若葉の息吹受け
阿国よ踊れ血を通わせて
舞い踊る時の風受けなあ阿国
その眼の先に何を見しかや
遥々と浮世の川を流れ来て
加茂の河原につきて身を舞う
この世をば浮世とはよく言うものよ
この身も踊りも賀茂の泡沫
色恋の落ちゆく先はなあ山三
賀茂の流れに浮くこの桜花
このときの阿国は知らじ身は果つるとも
永遠にその名と芸が生きるを
(賀茂川べり阿国の記念像の前で)
大道芸どうせやるなら古都らしく
今様阿国を舞う人もがな
葉桜に陽は煌めきて賀茂の川
きょうも命の水を湛えて
千年の古都の川辺をゆく人の
優しき笑顔に涼しき緑風
我が文の涙の跡を覚られまじと朝露に
濡れし若葉を添えて送りぬ
今小町筆をスマホに持ち替えて
文を交わせり賀茂の葉影で
緑風に吹かれて開くは京弁当
匠の技は隅々にも満つ
色の香を超えゆく先に建仁寺
行きつ戻りつ迷う浮世か
(祇園花見小路にて)
いにしえの夢を求めて彷徨いぬ
古都の巷に変わらぬ人波
川床で料理食いたや舞妓も呼んで
年金暮らしには叶わぬ望みか
景観を損ねるならばデザイン考えるとかして
自販機とゴミ入れトイレなければ困る古都
( 歩いてみて実感した。府の職員の皆さんよろしく)
古都の風(短歌集)/2016年5月京都にて