sword/bottom of zero
小説家になろうにも掲載中
可愛いわ正義
2828年、伊藤久美子博士が発見した「魔法粒子」と呼ばれる未知の物質を人の手により改造、人の脳内に組み込み生命エネルギーを魔力に変換できるようにし、遺伝するような形にし、世界中にばらまいたことにより人に一つの機能、食べることや呼吸することと同じように、として備わるようになった。
そんな人類史の大変革からはや1世紀。
いつもと変わらぬ日常を歩む少年がいた。
「お兄ちゃん、朝なんだよ、起きるんだよ」
俺こと桐崎蓮(きりさきれん)の朝はかわいい妹のかわいい声とそれとは裏腹のすさまじい勢いのチョップで始まる。
「オウウぅぅぅぅ。あぁぁぁぁ?!」
「お兄ちゃん、起きてくれた?」
「うぅ。妹よお前がもう少しぶすであれば今すぐ説教してやりたいところだ。だがしかぁし、可愛いわ正義のもとに貴様を許そうでわないか」
「えへへへへへ」
このままアイドルの握手会にもでれるようなえがおであった。
魔術が抜群にできるわけでもなく、勉強も平均的、顔だちは良いほうだといわれるが絶世のイケメンでもない。すなわち、きわめて「ノーマル」である蓮にとってこのかわいい妹は、数少ないほかの人と違う、誇れる妹であった。まあ、特異な力を持っていないわけでもないのだが。
下に降りると食事が用意されていた。
食卓には妹が作った一流ホテルの朝食にも劣らないおいしさをほこる黄金に輝くスクランブルエッグと脂ののったベーコン、こんがりと焼けたパン。
テレビでは最近多発している猟奇殺人事件のニュースをやっていた。
「最近多すぎだな。しかも、殺し方もえぐいよな。」
「たしか、槍みたいなもので胸を一刺しだったんだよ。」
「現代の串刺し公ってところか」
「まぁ、魔術序列上位の人たちががんばってるから見つかるのも時間の問題なんだよ」
「そういえば俺の学園にもいたな。たしか、藍原(あいはら)とかってやつが」
「お兄ちゃんだって、、」
その言葉を遮るように蓮がいう。
「そんなことより早くいかないと遅れるぞ。すず」
「、、、わかってるんだよ」
いつも通りの朝だった。やっと手に入れた日常だった。
思い上がりましたね。雑種
家を出た二人は、いつも通りの通学路を歩む。
そう、確かにいつもとなんら変わらない通学路であった。
通学路にひとが一人たりともいないことを除けばだが。
「なあ、すず。これ『人払い』のルーンが刻まれてるよな。
しかも俺たちだけを誘い込むように」
兄が警戒して問いかける
「そうなんだよ。お兄ちゃん、これ....」
すずが話し終えるよりも前に衝撃が走った。
兄が目を開けると目の前には、二人の人間と爆発でできた大きな穴があった。
兄がやるべきことはただひとつ。
妹の安否を確かめることだ
「……だいしょうぶか、すず」
兄の問いかけに妹は弱々しくしく答える
「だい、じょうぶなんだよ」
そのこえとかさなるかのようにこえがひびく
「すばしっこいやつね。仮にも串刺し公って呼ばれてるんだから王らしくどっと構えてなさいよ」
「なに、ただ術式のベースとしてワラキア公の逸話を利用しているだけだ。
そもそも私は君に用はな…」
最後まで言い切る前に少女が駆け出す。
「あんたになくても、私にはあるっっっっつぅぅぅぅぅの!」
少女の声とともに術式が展開し、炎が周りを包み込む
「これで逃げ場はなくなったわ。消し炭になりなさい
『朱雀乱舞』」
「ん?!」
攻撃をぎりぎりの所で直撃は回避したがそれでも相当なダメージが入った。
「よし、先手必勝ってやつよ」
「(くっっっ、みぎうでが。このままでは…だが。あれを使えば。くくく、まったく思いがけないところで使えるものです)どうやらこちらも出し惜しみはできないようですね。」
言葉とともに詠唱が始まる
詠唱、それは言葉に魔力を込めることによって大規模な魔方陣と同じものを瞬時に組み立てできるようにしたものだ。
もちろん、本来ならば魔法陣が補うはずの魔力まで使うためそう簡単に使えるわけではない。もちろん固有結界など例外もあるが、普通は一撃必殺の技となる。
(てことは…まずい。だけど、一撃だけなら敵は私を狙うはず。ならそれをかわして反撃すればいい。万が一あちらが狙われても横から力を加えて相殺すれば…)
「わが敵を滅ぼさんとす一撃、わが身を糧とし現世(うつしよ)にその力をあらわせ!|串刺しの森(ドラキュラ)」
あたりの空一帯に無数の槍が現れる
「なっ!?」
とても人間の魔力で現界できる量ではない
甘かった、まさか一撃必殺級のものがこんなに出るなんて…
「いくらあなたでもかわせまい、万象の創り手、よ。それにこれならば当初の目的も達成できるしな。」
「連続殺人犯に目的もくそもないでしょうが」
強がってはいるがかなりの窮地だ。
(このままじゃ…。どうすればいい。そもそもあそこの二人は何者なの)
少女の考えていることなど知らぬ魔術師は言う
「ふ、こう見えてもわたくし無駄な殺生は好みませんのです。今までのだってこの術式のための魔力がほしかったからですしね。ほら。そのためにわざわざ人払いまでしてあげたんですよ。」
「いかれてるわねあんた」
少女は思考することを放棄した
「そんなことより、そこの兄弟。他人に守られて、ただそこで震えることしかできないなんてね。私の目的などわかっているでしょうに。まぁ、わかったところでどうしようもないでしょうけどね。」
放棄された思考が再構築され一つの結論を導き出す
「あんた…まさかそこの二人を殺すためだけに?そんな一般人を殺すのにどうして」
「一般人ならあれが私を呼ぶはずがないでしょうに。全く私も不思議なぐらいですよ。あんな魔力も大してない雑魚などにね。でもね、あれがあそこまで警戒しているので一応の準備はしたのですが。まあ、思いがけないところで使えたのでよしとしましょう。全くあんな雑魚二人に何を警戒していたのか.…。っま、とりあえずみんな仲良くさようならです。」
「ここは、どこかの王に倣ってこう言いましょう
『思い上がりましたね。雑種』」
次の瞬間一斉に槍が射出された。
逃げ場などない。
俺の妹を泣かせたのなら神様だって殺して見せる
槍が放たれる前少女はこういった。
「お兄ちゃん……」
涙ぐみながら言った一言に兄は全力で答える
刹那、あたりの槍が消滅する。
誰かが何かをしたわけでもない
いうなれば、相手の魔術というデータそのものを世界という操作者デリートしたかのようだった。
「俺の前で、こいつ泣かせるなんて、いい度胸してんな。このくずが。こっちもてめぇに倣っていってやるよ
『俺の妹を泣かせたのなら神様だって殺して見せる』てなっ」
「」
男の思考が追いつく前に思考そのものが途切れる
同時に少年もその場に倒れた。
これは魔法であっても魔術ではない
魔法ーそれは、人類史の大変革とも言える、「魔法粒子」の発見によって人類の生命エネルギーそのものを変えたものである。すなわち、原型となるもの。
魔術ーそれは、前述の「魔法」を術式となるものを通して使うもの。すなわち、原型からなる矛だ。
これは世間一般の常識として知れ渡っていることだ。
そんな世界のあるマンションの一部屋、いや、そう呼ぶにはあまりにも広い。いうならばワンフロアという部屋の中の小部屋と言ったところだ。そこのベッドの上には少年が、周りには二人の少女がいた。
「うっっ!?」
「お兄ちゃんやっと起きたんだよ。起きないかもって心配したんだよ!」
「わりぃ、でもお前があんな目で……」
「うぅぅっっ」
涙ぐみそうな妹を慰めるためにいろいろ言葉を考えて、たどり着いた答えは話題の誘導。いや、それはむしろ、本当に少年の疑問になっているものだ。
「麗しき妹よ……………
ここはどこかね?」
「お兄ちゃんのバカ!」
俺の本心に気づいたのか否か妹はふてくされて答えようとはしない。
そこに、別の声がまじる。
「私の家よ。全くあんたは何に巻き込まれてるんだか。」
なるほど、他人のそれも妹と同じくらい可愛い女の子の部屋のベッドの上だというのか。そうあれこれ妄想している少年を見かねたのか少女が口を開く
「何想像してるのよ、変態。私だってあんたのためにベッド貸してるんじゃないし、そもそもここは私普段使ってないからね!もう、全く、あんたの家が綺麗さっぱり、いや綺麗ではないか。とにかくボロボロになってたからしかたなくつれてきてやったんだからね。あんなめちゃくちゃな能力も使ったと思ったら倒れるなんて……」
その一言が少年を現実へと連れ戻す。
「なぁなぁ妹よ。家が壊れたとはどういうことだ。俺の考える限りそういうことだよな」
さっきまでブツブツ言っていた妹も真剣な顔をして答える。それほど重要なのだろう。
「お兄ちゃん、変な事考えちゃダメなんだよ。まだあいつらがやったなんて…」
「ならほかに誰が?」
その部屋にいる全員が体感最低温度を感じたしたのではないかというほど殺気に満ちた一言。
「お兄ちゃん……」
「あんた、急にどうしたのよ……」
「あぁ、すまない」
二人の顔を見て少年は少し我に返り落ち着く。
それを確認すると同時に少女が問いかける
「さっきのあれなんなのよ。あれだけの武器を一撃で消し去るなんて。普通じゃありえない。そもそもあれは術式すらなかった。どうやったわけよ。」
少年もこのながれにのることにしたらしい。
「それを言うなら、俺が武器を消したのを見て、相手に殴り掛かるやつも普通じゃないと思うんだが。」
「う、うるさい
あれは別に私が暴力的とかってわけじゃなくて、、、って、そんなことで話をそらすな!あんたのあれは何なのよって聞いてんの」
「あれは、」
「あれは、魔法であっても魔術ではない。でしょ?」
妹が兄の言葉を遮る。
さてこの一言。魔法の知識を持つものなら皆があざ笑うものである。
つまりは、命そのものを使い、矛としたのだから。
いや、それ以前に人間の体は魔力を「魔法」の状態で行使できるわけがないんだ。
例えるならば、拳銃から射出する弾丸と同じ力、またはそれを超えるものを素手で投げた弾で作り出すようなものだ。
「それって…
下手すれば魔力、生命力、そのものが尽きて
死ぬってこと…なの?」
出逢ったばかりの少女であっても驚き、唖然としてしまうほどのとんでもないことだった。
人に名前を聞く時は自分から名乗るのが筋ってもんだぜ
「大丈夫、いままで死んだことないし、これからもその予定はない。」
ちらりと妹を見て答える少年
それになんの意味があったのかは知らないが、少女は言う。
「ところであんた、名前聞いてないんだけど?」
「???、なぁ、妹よ。お前はこいつと何時間もいて名前すら教えてないのか?」
「だって、それはおにいちゃ....」
「あー、はいはい。俺が悪かったよ。」
「で、名前は?」
「、、、桐崎蓮、こっちが妹の鈴。てか、人に名前を聞く時は自分から名乗るのが筋ってもんだぜ。」
「悪かったわね!全くもう。私は藍原花恋、花に恋するって書いて花恋」
「なぁ、聞いたか妹よこの怖い人。花に恋するって。笑うしか、、、ってイタタタタタタ」
「あーもういらつくわね!」
和気藹々と話す2人をよそに、鈴は顔をしかめる
(お兄ちゃん...
人が良すぎるよ。まだ仲間だってわかったわけじゃないのに。)
妹の顔を見て瞬時に何を考えているのかを思いつく兄
そして、、最も的確な一言をかける
「妹よ。心配するでない。お兄ちゃんを信じろ。」
今度は二人の兄弟をよそに、花恋は考える。
(この兄弟、やっぱりなんかある。それも、かなりヤバイ何かが)
刹那、時が止まったかのような錯覚を覚える。
世の中には虫の知らせというものがあるらしいがそれは知らせに来るのがあまりにも遅すぎた。
ガラスが割れ1人の男が入ってくる。
だが、それは飽くまでも入ってきた人数。
魔術が使える今、複数人の魔術師がいれば部屋ごと吹き飛ばすなどたやすいことである。おそらく入ってきたのは。ただ逃げ道を塞ぐためだけのおとり
次の瞬間激しい爆風が吹き荒れた
入ってきた男は死んだだろう
sword/bottom of zero