深海(仮)2
本当に突然だった。
なんでもない日々を過ごしていたはずなのに、
いきなり家に人相の悪いイルカ達が押しかけたかと思うと、
噛み付かれて気を失い、気がついたら檻に閉じ込められていた。
周りに話を聞くと、
誰にも共通点はなく、普通の魚達だった。
その魚達も、イルカに襲われて気絶したみたいだった。
始めは何故こんなことをするのか聞く魚もいた。
しかし、イルカ達は質問に一切答えることはなく、
何か言葉を発するたびに鞭を取り出した。
ただ淡々と鞭で叩くその姿は、恐怖でしかなかった。
こいつらには心がないのだろう、
そう誰もが感じたほどだ。
もう何日経ったのだろう、
日の光は届かず、時間の流れがわからない。
食事も満足に与えられず、取り合いになったりもした。
最終的には力の強い魚が独り占め、
弱い魚達はただでさえ少ない食事がもっと少なくなり、
みるみる衰弱していった。
「おい……しっかりしろ……! おい!」
横たわったフグの隣でもう1匹のフグが叫んでいる。
幼いクマノミには、少し刺激が過ぎただろうか、
急いで母クマノミが目を塞ぐ。
しかし目を塞がれるまでの一瞬でクマノミは見てしまった。
生々しくも衰弱した、もう動くことのない犠牲者を。
深海(仮)2