深海(仮)2

本当に突然だった。



なんでもない日々を過ごしていたはずなのに、


いきなり家に人相の悪いイルカ達が押しかけたかと思うと、



噛み付かれて気を失い、気がついたら檻に閉じ込められていた。




周りに話を聞くと、

誰にも共通点はなく、普通の魚達だった。



その魚達も、イルカに襲われて気絶したみたいだった。



始めは何故こんなことをするのか聞く魚もいた。



しかし、イルカ達は質問に一切答えることはなく、


何か言葉を発するたびに鞭を取り出した。



ただ淡々と鞭で叩くその姿は、恐怖でしかなかった。



こいつらには心がないのだろう、

そう誰もが感じたほどだ。




もう何日経ったのだろう、
日の光は届かず、時間の流れがわからない。



食事も満足に与えられず、取り合いになったりもした。



最終的には力の強い魚が独り占め、

弱い魚達はただでさえ少ない食事がもっと少なくなり、




みるみる衰弱していった。






「おい……しっかりしろ……! おい!」






横たわったフグの隣でもう1匹のフグが叫んでいる。



幼いクマノミには、少し刺激が過ぎただろうか、



急いで母クマノミが目を塞ぐ。



しかし目を塞がれるまでの一瞬でクマノミは見てしまった。






生々しくも衰弱した、もう動くことのない犠牲者を。

深海(仮)2

深海(仮)2

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-05-07

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