青空の下で君を待つ

かおる

  1. 前置き
  2. 1話
  3. 2話
  4. 3話
  5. 4話
  6. 5話
  7. 6話
  8. 最終話

登場人物紹介(重要)


雪(ゆき)


11月2日
高校1年
春の幼なじみ
────
春(はる)


2月14日
中学3年生 秋、病気で亡くなる
雪の幼なじみ

前置き

「久しぶりだね。(ゆき)

「...は?なんで?」

────

「はるー?花火見に行くぞ!」

「雪、もうちょっと待ってて!」

僕は玄関で靴を脱ぎ

「おばさん、こんにちは。(はる)、連れていきますね。」

と。

春は僕の産まれた頃からの幼なじみだ。
┈┈┈┈┈┈┈┈
ゴッと鈍い音が家の中に響いた。

その瞬間、僕の前は真っ暗になった。

春が倒れたんだ。

僕はおばさんと一緒に春の部屋へ急いで向かった。

春は頭を打ったようで頭から血がどくどくと激しく流れていた。

部屋のカーペットが真っ赤に染まっていた。

春は昔から体が弱かった。

病院に運ばれ入院する事になった。

だが、春の病気は悪化する一方だった。


──その年の秋、あの日から1度も目を覚ますことなく春は亡くなった。──

毎年行っていた花火大会に行けずに僕の前から 消えた。

────

春が亡くなってから1年後の花火大会の一週間前に僕の前に姿を現した。

春は眉毛を寄せて寂しそうな笑顔を作っていた。

それは、僕の大好きだった春の笑顔だった。

真っ白のワンピースを着ていてふわふわと浮いていた。

「春?なのか?」

「...うん。びっくりした?」

「びっくりしたけどまた会えて嬉しいよ。」

「雪、花火大会行けなくてごめんね...」

「ううん...。」

春の声が表情が癖が懐しくて

虚しさだけが募る(つの)

春の目には今にも溢れてしまいそうなほど

溜まった涙があった。

その涙が流れる前に僕はその涙を掬おうとした。

だが、僕の手は春の体をすり抜けた。

春は悔しそうな顔をした。歯を食いしばりポロッと涙を流していた。

僕は知りたくなかった。

春がもう触れられない場所にいることに。

気づきたくなかったんだ。

春の流した涙さえも拭けなくなってしまったことに。

もっと、一緒にいれた時間を大切にしておけばよかったなんて

今になって思ってしまうんだ。

喧嘩なんてしなければよかった。

春が悲しまなくてもいいように

僕が守ってやればよかったんだ。

春の病気なんて蹴散らすように僕も春も笑っていればよかったんだ。

春は僕が拳を強く握っていること気づき、

また苦しそうに涙を浮かべる。

「雪...そんなに自分のことを責めないで。

私は雪と花火が見たい。ただそれだけよ。

あなたに自分の気持ちさえも伝えられなかった。

雪にこんな思いをさせてしまっている。

私の未練......。」

春は、悔しそうに嘆く(なげ)

1話

「ゆ~き~!お出かけしよ!!」

「どこ行くの?」

「う~ん・・・」

(はる)は、もう死んでいる。

だが、僕と6日後の花火大会に行きたくて

成仏が出来ていないらしい。

なので、僕にだけ見えるんだと春は自慢げに言っていた。


そして、僕の家に転がり込んできたというわけだ。

「あ!!海に行きたい!!!」

「行ってどうするんだよ。泳げないだろ」

「そんなの決まってるじゃない!」

「…」

嫌な予感。

(ゆき)の素晴らしい裸を見るためよ!!」

そう言うと春は目を輝かして、僕の横腹をつぅ~となぞる。

そして、春は目を伏せ

「…本当は、海を見てみたい。」

と、小さな声。

春は体が昔から弱かったから海など見たことがなかった。

そのかわり、僕が写真を撮ってきて海が綺麗だということを

話してやっていた。

「うん。知ってたよ。ずっと、見てみたいって言ってたもんな。」

ざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・

春は初めて見る海の方へ向かう。

そして、春は真っ白のワンピースを

捲くり上げ海に入る。

春は当然濡れない。

霊体だから。

それでもきゃーきゃー言いながらどんどん入っていく。

「春!!!もう奥に行ってはダメだ!!!!!!」

僕は、不安になりざぶざぶと春の元へ駆け寄る。

海を見たこともない春はもちろん泳げない。

そんなことは春も重々承知のことだった。

だが、春は僕に抱き寄る。

「なんで…私が死ななきゃいけなかったの? 

私も生きてたころに見たかった!可愛い水着だって着てみたかった!!

雪と来たかった…」

春の感情が溢れる。

春の顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。

「うん。知ってた。

春は頑張ってたよ...

僕よりずっと…苦しかったんだよね。

でも、僕は知りたくなかったんだよ。

春の死について目を背けてた…ごめん。春...」

その時一瞬春が生きてた時のような暖かさと感触があった気がした。

「雪...連れてきてくれてありがとう。」

「うん。伝えてくれてありがとう。帰ろうか。」

僕達は、真夏の海の中で伝えていなかったことを伝えられたことに

嬉しさを覚え、笑顔を浮かべた。

そして僕らは来た道を帰った。

その途中、鳥が飛んでいるだとか川の流れが早いだとか

新しいカフェが出来ているだとかを駄弁りながら帰った。

僕は春が生きていたことを思い出さずにはいられなかった。

┈┈┈┈┈┈

ざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・

春は初めて見る海の方へ向かう。

そして、春は真っ白のワンピースを

捲くり上げ海に入る。

春は当然濡れない。

霊体だから。

それでもきゃーきゃー言いながらどんどん入っていく。

「春!!!もう奥に行ってはダメだ!!!!!!」

僕は、不安になりざぶざぶと春の元へ駆け寄る。

海を見たこともない春はもちろん泳げない。

そんなことは春も重々承知のことだった。

だが、春は僕に抱き寄る。

「なんで…私が死ななきゃいけなかったの? 

私も生きてたころに見たかった!可愛い水着だって着てみたかった!!

雪と来たかった…」

春の感情が溢れる。

春の顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。

「うん。知ってた。

春は頑張ってたよ...

僕よりずっと…苦しかったんだよね。

でも、僕は知りたくなかったんだよ。

春の死について目を背けてた…ごめん。春...」

その時一瞬春が生きてた時のような暖かさと感触があった気がした。

「雪...連れてきてくれてありがとう。」

「うん。伝えてくれてありがとう。帰ろうか。」

僕達は、真夏の海の中で伝えていなかったことを伝えられたことに

嬉しさを覚え、笑顔を浮かべた。

そして僕らは来た道を帰った。

その途中、鳥が飛んでいるだとか川の流れが早いだとか

新しいカフェが出来ているだとかを駄弁りながら帰った。

僕は春が生きていたことを思い出さずにはいられなかった。

2話

(ゆき)、浴衣買いに行くぞー!!オー!!!!」

「誰の?(はる)もう持ってるでしょ?」

「雪のに決まってるじゃない!」

僕はいい!と言っているのに全く聞かない。

春の性格は自分の決めたことはとことんやるまで諦めないんだ。

「じゃ!行きますか!!!」

行く気満々。

┈┈┈┈┈
「雪!これ、いいんじゃない?」

浴衣売り場でスキップしながら

春は僕に似合いそうな浴衣を指さしている。

たくさんある中でも春が好きそうな紺色のストライプ柄が目に付いた。

それを手に取り見ていると横から春が顔を出してきて

「それ!いいじゃない!!!!着てきて!?」

「......うん」

僕は春の気迫に圧倒され試着室に入り、

ズボンと服を脱ぎ、着物を着た。

「雪ー?」

小声で春を呼ぶ。

外で待ってた春が扉を透き通ってくる。

「お!似合ってるね!!!!即決!!」

「うん。大丈夫?変じゃない?」

「うん!バッチリ!!」

僕らは買った浴衣を持ち、家路を急ぐ。

あと、花火大会まで3日。

3話

花火大会前日。

(ゆき)。明日だね。これで最期になると思うと寂しいな...。」

「...泣かないよ。最期は笑っておくるよ。(はる)がまた未練残さないように...」

また、春の目に涙が浮かんでいる。

「うん!」

「明日言えないかもだから言うけど、僕ずっと春のことが...好きだった。」

春の目に溜まっている涙が溢れる。

「ありがとう。私も好きだよ...。先に言われちゃったなー。」

「ん?」

春は頬に流れていた涙を拭く。

「うん。明日、告白しようと思ってたんだよ。」

「そうだっただ...」

「うん。」

春の笑顔。

泣いている春の笑顔は今まで見た春の笑顔の中で

1番綺麗だった。

4話

花火大会の日。

(はる)、行こっか。」

「...うん。」

思いのほか春の顔は寂しそうだ。

「母さん、花火大会行ってくるから今日遅くなると思うからご飯いらない。

行ってきます。」

僕は家の扉を開けた。春は僕の後ろに付いて浮かんでいる。


花火大会がある海までは電車に乗らなくてはいけなかった。

ガタンゴトン...僕達の間に会話はない。

最期になる今日という日を頭に刻むのに必死だったからだ。

「春...。」

「...ん!?」

横に座っていた春はパッと顔を上げる。

「本当に未練は花火大会だけだったのか?」

「え!?...なんで?」

「ううん。......なんでもないよ。」

僕らの間にはさっきと違った無言の時が流れていた。

そして、春は眉毛をハの字にして困った顔を見せたが、

すぐに口を開く。

「本当のことを言うと(ゆき)ともう一回しゃべりたかったし、

告白もしたかった。」

「そっか...教えてくれてありがと。」

春の言葉を聞いたら苦しくなった。

花火大会以外の未練はないということだ。

僕のさっきの質問は多分、春の未練に

縋りたかったのかもしれない。

春の未練があればもっと一緒にいれる。

僕は、そんな馬鹿げたことを考えてしまったんだ。

そして、別れの時が近づく。

さっきまでガタンゴトンとなっていた電車が音をなくした。

僕達は電車から降り、5分くらい歩いたら着く

海に向かう。

「懐かしい............」

「......うん。毎年来てたもんな。」

周りのカップルや家族連れは笑顔なのに、

僕達の目には大きな涙の泉がある。

別れの時が近づいてくるのに笑顔を作れない。

笑顔でおくるよとカッコつけたのに...。

5話

先に喋り出したのは(はる)だった。

(ゆき)!たこ焼き食べよ!!!」

「うん。」

毎年同じ。

同じ屋台で同じたこ焼きを買う。

ずっとずっと同じ。

余計苦しくなるけど春は必死に僕の気分を上げようとしてくれている。

春は僕に訴えているみたいだった。

『私のことを忘れないで。』と...。

「春、場所取り行こうか。」

「いっつものところにしよ。一番の特等席!」

僕達が花火大会に来ると毎年砂浜ではなく

少し離れた公園のジャングルジムの上。

そこは花火がちゃんと見えるし、誰も来ない。

僕達はさっき買ったたこ焼きを食べながら、

花火が打ち上がるまでの数分の時を過ごす。

ドンッ.........ヒュルルルルル...

花火が打ち上がった。

「わっ!」

春の顔が花火の光で照らされている。

その顔には大粒の涙があった。

それを見た僕はもらい泣きをしてしまう。

春は泣いていたが満ち足りたような笑顔を浮かべていた。

幸せだと言わんばかりの笑顔と涙。
┈┈┈┈┈┈┈
僕には考えられないような思いをして、

僕の前に姿を見せたんだと思う。

信じてくれないかもしれない。

花火大会に行ってくれないかもしれない。

告白断られるかもしれない。

そんな思いをしていたと思う。

僕が春の立場だったら未練タラタラで

春の前には姿を見せられないと思う。

春はやっぱりすごい。

そんな春が僕は誇らしかったし、憧れだった。
┈┈┈┈┈┈┈
春は鳴り止まない花火を見つめながら

僕の手を握る。

「あれ?触れる!!」

春は涙で濡れる手をぺたぺたと僕の手をポンポン叩く。

触れないはずの春は最期の時が近づいていると言わんばかりに

奇跡を起こす。

神様も意地悪だな。いや、喜ぶべきだろうか...。

「春。ごめん。抱きしめていい?」

春は僕の涙を拭きこくこくと縦に首を振る。

『・・・・・。』

僕達の声は花火の音にかき消される。

僕達の影が一つになる。

抱きしめた瞬間悲しさと嬉しさが溢れて涙として流れる。

花火の音が消える。

「雪、もう時間みたい。」

「嫌だ...。春...」

「キス...最期にキスしよ...。雪...愛してる。」

「ん...」

僕達は最期のキスを交わす。

春の体はどんどん薄くなっていく。

「雪、ありがとう。わがまま言ってごめんね。

私の部屋の本棚の後ろを見て...。雪、ずっと愛してる。」

「春!僕も愛してる...。」

僕は春に今まで生きてきた中で一番の笑顔を浮かべる。

春は最期にニコッと笑い、柔らかい光が包み放たれる。

「春...春...。さよならなんて言わない...!また、会おう...ありがとう...。」

6話

花火大会から1ヶ月。

「おばさん、こんにちは。」

(ゆき)くん...。久しぶりね。ちょっと痩せたんじゃない?」

「そうですかね?」

僕はおばさんに笑いかける。

(はる)の葬式の日から1度も来ていなかった。

春の家には春の匂いが残っている。

思い出してしまう。春の生きていた日々を、幽霊として現れた日々を...

思い出してまた泣いてしまう。

でも、おばさんの前では泣けない。

おばさんが一番辛いだろうから。

「拝ましてもらってもいいですか?」

「うん。春も喜ぶわ。」

おばさんの方が痩せている。

笑顔も減った。

春の家の仏壇には春の写真が置いてあった。

僕も持っている写真。

『春...久しぶり。やっと来れたよ。本棚の後ろ見るからな...』

拝み終わるとおばさんに春に頼まれたことを言い、

春の部屋に入らせてもらった。
┈┈┈┈┈┈┈┈
多分、位置が変わっていない。

おばさんはこの部屋を無くすのが苦しいんだ。

綺麗に掃除がされている。

制服が布団の上に置いたまんまだったり、

春の姿を思い出さずにはいられない。

「雪くん?大丈夫?...平気?」

「...はい。」

おばさんは心配して様子を見に来てくれた。

そうといい、扉を閉める。

白い本棚。本棚の中にはアルバムが3冊並べてあり、

その中の2冊の表紙には『雪と春』という題名が書かれていた。

ペラペラとめくると僕と春の写真がたくさん入ってあって

一つ一つの写真にはコメントが書かれている。

見ていると辛くなり、すぐにアルバムを閉じた。

そして、本棚の後ろを見た。

そこにはマスキングテープで貼り付けられている便箋があった。

便箋には『雪へ』と書かれていた。

その便箋を持ってきたカバンに入れ、

リビングにおりおばさんにまた来ます。ありがとうございましたと

伝え春の家をあとにした。

最終話

(ゆき)

この手紙を見ているということは私はもう、

この世にはいないでしょう。

雪には色々迷惑かけたな~

わがままな私をいっつも見守ってくれた。

私はそんな雪が大好きでした。

雪は優しいから私のことをズルズル引きずって

彼女を作らないんじゃないかな?

私のことを忘れて欲しくないけど

雪には幸せになってほしい。

雪が幸せになるのなら私のことを忘れてください。

雪を泣かす女がいたら化けて出てその女を怖がらすよ!

だからね...私のことは忘れてもいいんだよ。

時々思い出してくれれば充分だから。

雪、最後になるけど私は雪の味方だよ。

また、会おう!

雪、愛してる。

最愛の幼なじみより』


僕はこの手紙を読み終わる頃には大粒の涙で顔がぐちゃぐちゃだった。

(はる)...忘れないよ。忘れられないよ。

また、会おう。春...。

青空の下で君を待つ

あなたは大切な人が急にいなくなり幽霊としてその人が現れたらあなたは信じることができますか?

青空の下で君を待つ

雪は中学生の時、幼なじみ春を病気で失う。 数年後、春は未練があると幽霊として現れた。 春の未練とはなんなのか...

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日

CC BY-NC-SA
原著作者の表示・非営利・CCライセンス継承の条件で、作品の利用を許可します。

CC BY-NC-SA