存在消滅遊戯

ホラーに挑戦。

存在消滅遊戯

小さい時に一度は遊んだことのある
遊戯に
私はいま
恐怖を感じている。

夕方のまだ少しだけ空が明るい時間
ガードレール下の薄暗い道を
髪を振り乱しながら
必死に走った。
いや、私としては
逃げているのだけれど
他の人たちには
“あれ”
の存在が見えないらしく
制服のスカートの裾を
汚してまで走る
私の方が
ちょっとおかしな人
という目で見られているような気がした。
でも今は
他人からどんな風に見られようと
どうでもいい。

“あれ”は
くすくす笑いながら
私の後ろから離れない。
何度引き離しても
例の歌を歌いながら
気がつくと
必ず
後ろにいるのだ。

例の遊戯は
“あれ”
の名前を当てる遊戯だ。
でも私は
“あれ”
の名前を当てるつもりはない。

“あれ”
の名前を当てた人は
もう現世にはいられない。

私の友人も1人いなくなった。
でもそのことは
私以外誰も知らない。
存在自体が
なかったことになっているのだ。
彼女の存在を覚えているのは
今では私だけだ。

足が疲れきってしまったが
何とか
“あれ”を振り切って
自宅に戻った。

「お友達が遊びに来たわよ〜」
のんびりしたお母さんの声。

廊下から足音が聞こえる。
ドアが開かれ
存在自体いなくなったはずの
友人が目の前にいた

私は驚いて思わず
言ってしまった。

友人の名前を。

「ずるいよ自分だけ
助かろうとして
この遊戯は
かわりばんこに
鬼になるんだから……」
と鬼を演じていた友人は
可愛らしく笑った。

今度は私が鬼。
存在自体消滅した私の
名前を当ててもらえるその時まで。

存在消滅遊戯

存在消滅遊戯

昔ながらの遊戯に追いつめられる女子高生の物語。(この作品は小説家になろう、Pixiv、カクヨムにも投稿しております)

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • サスペンス
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-05-06

Copyrighted
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