言葉のファンタジー
子育てとは、日々発見の連続だ。そもそも、彼らの存在自体が宇宙人レベルの不思議に満ちている。彼らの発する言葉達にはいつも美しい歌のカケラが惜しげもなく鏤められている。そんな言葉の中から選りすぐりの一片を・・・
洗濯機
ある日、まわっている洗濯機の傍らにじっと佇み、微動だにせず一点を見つめていた息子が、不思議そうに私に訊いてきた。「ママ、せんたくき、お腹すいてる?」「???」意味がわからず、一瞬の間を置いて「なんで?」と訊き返した私に「だって、せんたくき、さっきから『ぐわん(ご飯)ぐわんって』」
食いしんぼうの彼には、洗濯機の音がご飯を催促しているように聞こえたらしい。
それからしばらく、洗濯をする度ににんまり笑ってしまう私がいた。
ジャムのお昼寝
ヨーグルトにジャムを入れて食べるのが大好きな息子。特に苺のジャムに目がない。いつもヨーグルトを食べ終えても、追加のジャムを要求。「食べ過ぎたらご飯が食べられなくなるよ」とか「虫歯イキンにやられるよ」などと説得するが、なかなか諦めない。私ににて結構ガンコなんである。そんな彼を一番納得させた言葉は、「ジャムもネンネの時間なんだよ」というものだった。
それ以来息子は、冷蔵庫を見ると扉を指さして、「ジャム、ネンネ」とのたまうように・・・
それからというもの、その場面に出くわした冷蔵庫の主に、事の顛末を説明するハメになった。
その子も、はや大学生。今となっては、懐かしい思い出である。
あんたはリスか?
食いしん坊の兄に負けず劣らず食い意地のはった次男。シュークリームを食べた時の出来事である。もの凄い勢いで食べていた彼の動きが、ハタと止まった。何をしているのかと顔を見ると両方の頬っぺたが膨らんでいる。「ごっくんせえへんの?」と訊いても顔はそのままである。どうやら最後の一口を呑み込んでしまうのが惜しくて、口内にクリームを温存しているらしい。気持ちはわからんでもないが・・・あんたはリスか?
男気
基本、「男の子でしょ」とか「男らしく」などと言うことなく、特別に性別の分け隔てをせずに子育てをしてきたつもりである。しかしながら次男には生まれながらに、大和魂とでも言うべき美意識が備わっていたようだ。三歳にして忍び泣きをする子だった。泣きたくなると人目につかない場所に隠れて声を殺して泣いていた。言葉にして自分の気持ちを伝えることが下手で、いつも損ばかりしている。そういうところは母親に似てしまったのかもしれないと少々申し訳なく感じていた。
ある頃から、もっと自分を表現する子になって欲しいと、「自分の気持ちを伝えていいんだよ」と促してきた結果、彼はとてつもない毒舌家へと変貌を遂げた。今や、彼の正論であるが故の注意しがたい毒舌に辟易の日々である。
あの、小さな”高倉健”は何処に行ってしまったのか?
心のままに持論を展開できるようになった我が子に安堵する傍ら、いささかの後悔を禁じ得ない母ではあった。
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