君が残したその花は
花言葉シリーズ第二弾
真っ白い部屋の、真っ白いベッドの上で、真っ白い顔の彼女は、淡く微笑みました。
「ごめんなさい。」そう言って、淡く微笑んだのです。彼は、確かにその言葉を耳にしたはずなのですが、なんだか別世界でささやかれたかのように感じていました。
「どうして謝るの?それじゃあまるで…。」まるで、なんなのか。彼にはその続きを言うことができませんでした。彼女はそんな彼を、優しく見つめました。
「そんな顔をしないで。あなたの方が病人のようよ。」と彼女は言いました。彼は、何も言うことができませんでした。面会時間が、終わろうとしていました。
「今日は、帰るよ。また明日来るから。」明日も君に会うことができますか、とは、聞けませんでした。彼女は、そんな彼に一つお願い事をしました。彼は、わかった、また明日といい、病室から出ていきました。
次の日、彼女はそこにはいませんでした。なんとなく、わかっていたことでした。わかってはいたけれど、それでも涙が出ました。彼女のいた病室は、まだ片付いておらず、彼女の痕跡がそこら中にあふれていました。彼は、彼女にお願いされた花を片手に握りしめたまま、ぼうっと立っていました。ふと、机の上に本が置いてあるのを見つけました。それは、植物図鑑でした。彼は、植物図鑑を夢中でめくりました。そこに、彼女にお願いされた花のページを見つけました。その花の花言葉が目に入った時、彼は、彼女のお願いの本当の意味を理解しました。外で、セミが鳴いていることに気が付きました。夏が、来ていたのです。
君が残したその花は
勿忘草の花言葉は「わたしを忘れないで」