死街

 この街(おまえ)は死んだ!
 子は親を選べない、と云うが、それは街も同じなのだ。勝手に住み着かれ、飽きたら捨てられる。
かつては愚かな人間どもに愛されたおまえも、みなに出て行かれては死んだも同然なのだ!
 あぁ、哀れな街よ!地を掘り返され、埋められ、木々は手折られ、美しき緑の大地(元のおまえ)はすっかり失われた!
もうおまえが寵愛を受けることはないだろう。色を失った街、曇天の街、灰の街。そんなおまえを愛す者などもういない!
おまえを輝かそうと躍起になっていた者も、それを待てずしてここを去った奴らを見て、同じようにおまえを捨てた。
 あぁ、哀れな街よ!おまえは死んだのだ!
おまえに命を吹き込む者はもういない!さぁ、ここで息を引き取るのだ!
 これがおまえを好き勝手した愚者が導いたおまえの末路だ。
皮肉なことに、最後に寵愛を受けるのは、その愚者らを生み出した青き大地、すなわちかつてのおまえなのである。
お気の毒なこって!
 そして愚かなおまえらは、この先せいぜい苦しむんだな!さらば聖者よ!

死街

死街

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • サスペンス
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-05-03

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