茅乃的後日談
4/29のKP修行あきらさん卓でセッション参加したのでその後日談を。
烏水茅乃は覚えていた。
日常からほんの少しだけずれた、奇っ怪な空間に迷い込んでしまったことを。
体験したあの恐怖を、底気味悪さを。
そして、そこで垣間見た畏怖すべき存在を。
全て、鮮明に覚えていた。
あの不可思議な体験から数日。茅乃は昼下がりの町内を歩いていた。
「あれー?茅乃じゃん。こんなとこで何してんの?」
聞き慣れた声に視線を向ければ、昔馴染のファンタジックの姿。「フェルンくん、」声を上げれば、金目の烏は快活に笑った。
「茅乃がこの時間に外出てるとかいつも通りだな。なんか用事?」
「今から深宵ちゃんとケーキ食べに行くんだ」
「深宵と?」
そりゃまた珍しい組み合わせで、と楽しそうに話す彼もまた、件の怪奇に巻き込まれたひとりだった。
二人の間にあの時の話題が上がることは無い。
フェルンは覚えていないのだろうか。はたまた、夢かなにかだったと思っているのか。茅乃に彼の真意はわからない。
わからないけれど、聞く気にはなれなかった。
それじゃあまた、と手を振って別れる。心と真逆の言葉を吐く彼は、今日もいつものメンバーで遊ぶらしい。
願わくば、最近大量の飴をよこしてくれる猫のファンタジックが気疲れしませんように。それから、止められなくてごめんなさい。
歩みを進めた茅乃は公園の前を通り過ぎる。
公園からは子どもたちの賑やかな声が聞こえてきた。楽しそうに駆け回る子、砂場でお城を作っている子。
そんな姿に、幾分かの微笑ましさを感じた時だった。
「楽しそうでいいなぁ」
「次はわたしとあそんでね、お姉ちゃん」
聞き慣れない、それでも確かに聞いたことのあるあどけない少女の声。
脚が止まった。
太陽はまだ空高く輝いている。
春の陽気に包まれているのに、肌寒い。
あの声は、確か。あの場所で。
「あの、どうかなさいましたか?」
数刻停止していた思考を動かしたのは、柔らかな声。優しげな目をした女性が、心配そうな顔でこちらを見ている。
見覚えのある顔だった。
「なんでもないです」
震える言葉を紡いで、茅乃は早足で歩きはじめる。
一刻も早くこの場を去りたかった。心優しい友人の顔を見て安心したかった。むせ返る程の甘い匂いにつつまれたかった。
日常に戻ってきた実感が、欲しかったのだ。
烏水茅乃は覚えていた。
同じように迷い込んだ旧知の烏と先ほど声を掛けてきた美しい金糸の髪を持つ女性が連れていかれてしまった後のことを。
あどけない少女の声を。
「母」を語る、恐ろしいものの声を。
すべて、忘れることなく、記憶していた。
少女の声により死の恐怖を追体験した茅乃は、成功で1、失敗で1D4のSANチェック。
茅乃的後日談
最後の一文はおふざけ。
回したらSANチェック:59で失敗、1D4=4で最大値減少でしたウケる(ウケない)