スイッチオフ

今日は思いっきり、自分を甘やかそう

 大学生は、世間では「人生の夏休み」なんてよく言われる。バイトもできる。サークルや部活もできる。免許をとることも、20歳になればお酒を飲むこともできる。授業が空いているときには、友達と遊んだりすることもできる。もちろん、自分が勉強したいことに打ち込むこともできる。毎日を、自分の好きなように生きることができるのだ。こんなことを言うと、毎日毎日、楽しくて仕方がないのでしょうね、嫌なことなんて何もないのでしょうね、なんて、言われてしまいそうだ。そんなことはない。人生の夏休み満喫中の大学生にだって、休みたい時がある。
 私の場合、それは約一か月に一度、訪れる。なんとなく、気分が沈んで、誰とも会いたくなくなってしまうのだ。それがいつ訪れるのかは、大体予測ができるようになった。そんな日を、一人で好きに過ごすために、バイトもサークルも、友達との約束も、何にも入れない日を一日作る。その日は、たとえ何があったとしても、絶対に予定を入れない。私はこの日を「スイッチオフの日」と呼んでいる。「スイッチオフの日」を最大限に生かすために、前日にしなくてはならない準備をする。まず、大学の課題。次に部屋の掃除。最後に食料品の買い出しと、DVDのレンタルである。すべての準備を済ませて、眠りにつく。
 「スイッチオフの日」には、アラームをかけない。自分の目が覚めたタイミングで、のそのそと起き上がり、パジャマのまま、朝ご飯を食べる。朝ご飯はポテトチップスとコーラ。カロリー?栄養?今日はそんなものは気にしない。そのままDVDをつけ、ベッドに転がって、ひたすらに画面を見つめる。DVDが一本見終わるころには昼になる。お昼ご飯にカップラーメンとお気に入りのスナック菓子を食べ、ネットサーフィンにいそしむ。そして突如思い立って、真昼間から、お風呂に入ってみたりする。お風呂上りには、もちろんアイス。いつもより、ちょっぴり高級なものを。夕方にはDVDをもう一本。お腹がすかないから、ご飯は食べないで、代わりに楽しみにしていたケーキと、飛び切りの紅茶を用意する。紅茶には好きなだけ角砂糖を。いつもはためらっちゃうけど今日だけは、ためらいを捨てて。ケーキを食べ、あまったるい紅茶を飲み終わるころには、そろそろ外が暗くなってくる。ベッドの上をゴロゴロ転がりながら、スイッチオンの自分を想像する。大丈夫。明日から、また。頑張れるよ。
 

スイッチオフ

スイッチオフ

誰だって、スイッチオフの時がある

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-04-30

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