雨粒ボウヤ
傘の上に乗っているのは
雨粒のボウヤ
普段は雲の上にいるのだけど
ときどき地上に降りてきては
自由きままに冒険をしている
だけど
きょうの雨粒ボウヤは
なんだかとっても悲しそう
いつも楽しそうに飛び回っているのに
どうしたのかな?
「雨の日は髪がハネちゃって嫌だな」
「お気に入りの服も濡れちゃうし」
「ずーっと晴れならいいのにね」
どうやら雨粒ボウヤは
目の前の女の子たちの話を聞いて
落ち込んでしまったみたい
雨粒ボウヤはそっとその場から離れて
またのんびり歩き出した
「ボクはきらわれてるのかな」
すっかり落ち込んでしまったボウヤは
葉っぱの上で色とりどりの傘をながめる
「ワタシはアナタのことだいすきよ」
ボウヤがびっくりして後ろを見ると
そこにはスノーフレークが咲いていた
「キミはボクのこときらいじゃないの?」
「えぇ、ワタシはアナタのことがだいすきよ」
雨粒ボウヤは目をぱちくりとさせる
「でも、ボクはみんなをしあわせにできないよ?」
「あら、ワタシはしあわせよ」
「どうして?」
雨粒ボウヤがスノーフレークに近付くと
花びらの下にハチがいるのに気が付いた
「ワタシはかさとにてるでしょう?
あめがふるとこうしてだれかがあまやどりにくるの
いろんなおはなしができてとってもたのしいわ
だから、ワタシのもとにだれかをつれてきてくれる
やさしいあめがだいすき」
雨粒ボウヤは心がポカポカ
あたたかくなるのを感じた
だけど目からはひとつ、ふたつ
つめたい雨が降ってくる
「ボク、もうかなしくなんてないのに
なみだがでてきてとまらないよ」
「それはあたたかいなみだね
しあわせでいっぱいのときにでる、やさしいなみだ」
泣き虫ボウヤはたくさんたくさん雨を降らせ
最後には大きな大きな虹をかけた
空を見上げる人たちの笑顔に
また、心があたたかくなった
雲の上に乗っているのは
雨粒のボウヤ
みんなの笑顔を見ながら過ごし
ときどき地上に降りてきては
自由きままに冒険をしている
雨粒ボウヤ