ENDLESS MYTH第3話ー3

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 そこは手の届く小さな宇宙のようだった。漆黒の空間なのは相変わらず変わらないのだが、周囲に広がる無数の銀河。その大きさは3メートルほどしかなく、これも相変わらずの形容しがたい種族が、そうした銀河の中心に立ち、銀河の星星を指先で触っては、何かをチェックしたり、並び替えたりしていた。
 転送したジェフは、そこがどういった意味を持つ空間なのかを把握できなかった。
 ただただ広大で先が見えず、雲霞の種族が密集しているのだけは呑み込めていた。
 レザーマスクの女性は、1人の現代人と1人の未来人から視線を横に移動させた。
 すると漆黒の空間に、原寸大の地球が現出したのである。
 足下全体が例の如く悲鳴を上げている様子が、再び彼ら2人へと突きつけられたのだ。
「地球は、世界が消えてしまう」
 落胆に肩を落とすジェフ・アーガー。
「この次元のテラは救われました」
 と、レザーの口元から機械的な声がジェフの顎を上げさせた。
「これを見て」
 そう女性が言った直後、足元の地球へ急激に風景が落下すると、またたく間にそこは地球内部の、破壊された都市の中心部へと変化した。
「タイムズスクエアか」
 一目でベアルド・ブルには認識できた。ニューヨークでもっとも有名な、タイムズスクエアの交差点に、漆黒の空間は変貌していたからだ。
 けれどもそこに輝きはない。ビルは崩壊し、ネオンの光は失われ、信号機は倒れた、人の姿は消えていた。
 ただあるのは、瓦解した瓦礫と朽ち果てた遺体の山ばかりである。
「これは現在のニューヨーク。ご覧の通り、デヴィルズチルドレンの姿はありません」
 確かに魑魅魍魎の姿はない。
 鋭い爪で地上に痕跡を残したが。
「地球は、世界は救われたと!」
 すがるようにニューヨークの中心でジェフは、マスクの女性へ質問した。
「それは短絡的な考えだと、貴方もご存知でしょう?」
 ジェフが本心からそう言っているのだと、彼女は思っていなかった。
 彼女は鼻を鳴らすと瓦礫の山を、視線をジェフへ維持しながら指先で、彼の意識をそこへと促した。
 ジェフ、べアルドが瓦礫の山を見た時、瓦礫の隙間から黒い液体がにじみ溢れた。
 オイルかなにかの液漏れか?
 ジェフはそう思ったのだが、それが液体ではなく、蟻のような小さな生命体なのだと瞬間的に気づき、背筋に寒気を感じた。
 蟻ではない。無数の脚を備えた、黒い目玉であった。
 それがうじゃうじゃと蠢き、見るものに寒さを与えた。
「人類の戦争はこれからです。ホモサピエンスがテラに生を受けてより250万年。本当の歴史はこれからなのです。果てしなく長く、終わりが来るのかも分からない、敗北への戦争を知るのです」
 ニューヨークの街は霧が晴れるように霞と消え、次に彼らの前に現出したのは、南アメリカ大陸に位置するギアナ高地の圧倒的な自然であった。
 しかしそこに数日前まで広大に生息していた大自然は、跡形もなく消えていた。
 ただそこにあるのは絶壁の岩壁が崩壊して、緑が無残に押しつぶされた、荒廃した世界である。
 壊れた大自然を背景に、レザーマスクから再び機械的音声が流れた。
「世界は崩壊しました。人類の文明は再び再生しなければなりません。遠く、果てのない戦争と文明の再生、拡散、他種族との接触。茨の道がこれから始まるのです」
 うそぶいているとは到底おもえない彼女の言動を受け、ジェフは思考回路が真っ白になってしまった。
「その中から多くの英雄が誕生する。敵はあまりに強大すぎる。だから他種族と協力して、戦わなければならない」
 横の未来人がジェフへ言い放つ。
 これを受け、突如として輝く光がギアナ高地の空に輝いた。
「しかしそれは物語の本当の流れにはない。全ては脇役にしかならないのです」
 イヴェトゥデーションの統率者の声色だ。
 純エネルギー体は、姿を具現化することなく、平静に語った。
「救世主、全ては彼のために動くのです」
「メシア。彼は何者なんだ」
 ジェフが間髪を入れずに問う。
 が、皆は沈黙を持って、答えた。
 今はまだ明かす時ではないかと意図する沈黙なのは、現代の若者にもすぐに理解できた。

ENDLESS MYTH第3話ー4へ続く  

ENDLESS MYTH第3話ー3

ENDLESS MYTH第3話ー3

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-04-29

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