黒歴史
14歳のときに、はじめて小説を書いた。
物語は、そのときに流行っていたケータイ小説を真似た、自殺未遂をする女子高校生がある男子に出逢って、云々というものだった。
どんな始まりでどんな展開だったのかは覚えてない。しかし、結論が悲惨だったのは覚えいる。男女は云々あった上に心中を選んで、手を繋ぎ、屋上から自殺をする。
好きなアイドルが主演した映画で、主人公の彼は自ら死を選ぶことにショックと衝撃を受け、きっと、それが私のはじめての小説のラストを書くキッカケになったのだと思う。
むしろ、その自殺する場面を書きたいがために色々パクって作ったのだ。
恥ずかしい黒歴史というやつだ。
それを、興味で当時の友人に読ませた。
彼女は私と同じように死にたがりだった。
彼女は、泣いた。
なんと感想を言っていたのかは忘れた。
泣いた。
私のこんな小説で泣いてくれたことが嬉しく、懲りずにまた書いた。
次は、盲目の少年が通う公園で物語が始まる。少年はその公園である少女に出会い、恋が始まるというものだった。これはもう何も覚えてない。消し去りたい黒歴史 エピソード2である。
ちなみにそれは文通相手に郵送した。無理矢理。返事はなかった。
悔しかったのか、小説家の才能があると信じていた黒歴史の三歩目は、忌々しい高校1年のときだ。
演劇がしたい、と思いたち、私は演劇の大会で
強豪と言われる演劇部に入部してしまった。
それから、ジェンガを崩したような、やっちまった黒歴史 エピソード3が始まるのだ。
小説は書いたことがあったが、脚本は書いたことがなかった。何をトチ狂ったか、私は脚本家の1人として参加することを表明してしまった。黒歴史消しゴムがあったら即使用したい。
無論、わかっているだろう。
私は書けなかった。
何も。書けなかった。
帰りの、19時過ぎの電車で同じ演劇で同じ学年の女子に、ジッと見つめられ、大きな声で怒られ、無責任だよね、と、最後は言葉では表せられない軽蔑の笑みを浮かべ、帰っていった。
私は、泣いた。
電車を降りて、うずくまり、ああ、と声を出して泣いた。
自分が悪いのもわかっていた。
努力もしない上に才能もないのも知っていた。
後から後悔しても遅かった。
書けないこともわかった上に、
私が書けないせいで芝居がつくれないことへの申し訳ない気持ちもあった。
私は(ペンすら持っていなかったが、)
そのときペンを置いた。
演劇がやりたくて入ったはずだが、結局、それが引きがねで部活をやめた。
それから、色々あったが、
その色々は今度の機会に晒すとして。
ともかくそれからの私の中にあるものが変わっていった。
自分への失望と絶望と。
きっと今でも書けない。
だって、何も思い浮かばない。
何もない。
何もないところから作らなくてどうする、とまた怒られるだろうが。
私には伝えたいことも、そんな自信もない。
もうだめだ、と思っていたところに
大学の友人が面白い話を書いた。
不思議な話だった。
何度も読んだ。あの、カエルの話も。
降りていく話も。
なぜか、書きたいと思った。
読んで、出回ってる小説を読んでるときにはない欲求が私をぐるぐる持ち上げた。
もしかしたら、悔しかったのかもしれない。
大好きな友人があんな面白いものを書けるなんて。才能があるなんて。ちょっとムカついたのだろう。
でもすぐにわかった。
私にはあんなもの書けない。
そしたら彼女は@で返してきた。
こっちの気も知らずに。
書きたいなら書けばいい。
書きたい欲求を抑えてはいけない。
と。
もっと気楽な感じで返ってきていたかもしれないが、それっぽく表現しておこう。
でも、その言葉が胸を貫いた。
最初はパクったじゃないか。
つまらない話を書いて、誰かを感動させたじゃないか。
では、戻ってみよう。
黒歴史 エピソード1に。
今からあなたが読むものは非常につまらない。
だから読まない方がいい。
でも、最初の一文を読んだら最後まで読んでほしい。
読み終わったらつまらない!ブス!しね!目が潰れる!となんとでも言って晒せばいい。
私が私のために書く話だ。
きっとこれは小説でもなんでもない。
ただの思い出だ。エッセイかもしれない。
いや、違う。
私への、ちょっとした、ストレスの捌け口だ。
名前をつけるとしたら、
黒歴史 エピソード0
ついに始まってしまうのだ。
さあ、さあ、さあ!
ご覧あれ!
これが、私の生き恥だ。
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黒歴史