10秒電話


木曜日の夜7時

私は深呼吸をしてボタンにふれる

なぜこの曜日を選んだのか

自分でも覚えていない


目を閉じて数分間

流れてくる音楽に耳をすます

何十回も聞いているのに

名前も知らない

私の好きな曲


しばらくすると声が聞こえる

疲れていそうな

眠そうな

そんな声

夜なのに私はこう言う

「おはようございます」

って

そしたら聞こえてくる

彼の声

だから私は続ける

「仕事中ですか?」

そしたら、ほとんどの確立で

同じことを言われる

そして同じことを聞かれる

「どうかしたの」

って

だから私は笑顔で答える

「たいしたことないです」

すると彼は了承して

ボタンを押すんだ


時間にして10数秒

これが楽しみだと自慢したら

友達に笑われた

普通の恋ではないと

前から気づいている

この恋が実る保証なんてない

それでも麻薬のように

やめられない

誰にも理解できない

私の恋


それでもいつか

1分電話になることを祈って

来週もボタンを押すだろう

10秒電話

10秒電話

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2016-04-28

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