文章修業・るろうに剣心・~京都大火編~剣心最初のアクション・シーンである新月村での戦いを文章化。
映画、実写版の「るろうに剣心・京都大火編」での、剣心の一番最初のアクション・シーンである、新月村での大乱闘のシーンを、文章に起こしてみました。
うまくいっているかどうかはわかりませんが、文章の練習には最適だと書きながら思っていました。それにしても、あのアクションは、……すごい…………。
「…とう、ちゃ、ん……かあ、……ちゃ、ん……?」
少年が、そのこの村でも一番大きいであろう樹の上を、ただ呆然と、見上げていた。
たった一つとて、葉のついてはいない枝枝の先にあるものを。
この村で、最も見やすいのであろう高さの、まるで獣を捕獲した後のようにされながら人間扱いなどは微塵も考慮されなかったのであろう荒く、汚い縄で正視に絶えぬ状態でくくられてしまいながら明らかに「絶命」をしている――泥と血とで汚れきっており、その哀れな亡骸(なきがら)たちが乾いた風に揺らされているのを、まるで、地獄が形を持ち、生まれい出てきたかのような惨状を、そんな、許容しがたい光景を、ただ、見つめていた……。
そして、それを受け入れるということは精神を破壊するのと同義であろう、残酷な「現実」に対して、ようやく少年は己の脳が、その処理を可能にしたらしく……。
すると今度は、疑問を口にするようなリズムではなくただ、自分を産み、そして育ててくれていたこの世で最も愛する人たちが、あたかも野良犬の死骸のような姿となり、死後においてすらもこのようにさらし者にされているという事態に、初めにはまず「怒り」が。次には「悲しみ」が湧きおこっていき、そして最後にはおそらくどの感情とも呼べないもの――しかし、「喜」や「楽」以外の全ては間違いなくそこへと押し入っており、汚らしいマーブル模様を作っていることだけは、確信の持てる声を放ちながら、彼は〝絶叫〟を、村の隅々まで届いただろう音を持って、飛ばしていく。
膝を抱え、泣き、頽(くずお)れる少年の声に同調するかのようにしながら……。
樹の、更に向こう側にある、こんな村にはふさわしくない程の高い櫓(やぐら)の上に取りつけられている「半鐘」から、――かんかんかかか、ん……か、か、かん……!!! と、いう……。
……ある意味で、彼の声には最も忠実に応えてくれたようにすらも感じる、声を詰まらせたかのような、リズムの速い甲高い音がこちらにも響いてきていた。
……が、……しかし。
――……それに、本来なら応じるはずであろう村人たちの姿はなく、声すらも不自然に感じる程に聞こえてはこなかったし、また気配もない。
その逆に――彼の出した声に対して帰ってきた者は――まるで、夏の蠅(はえ)が腐乱した肉へと群がりその身体を黒く、五月蠅(うるさ)く不愉快に覆い隠すかのような印象すら持ってしまうような者たちであり……。
その死臭に誘われるかのようにしながら身体へと、まとわりつかせるようにしながら剣心たちのいる所へと集まってきていた。
荒れはてている、この新月村の奥の方から次々と――全身を黒、そして濃い紫で統一しながら包んでいる人間たち。
その恰好(かっこう)からしてもそうであるのだが、それ以外にもその手に持っている武骨で、おそらくは骨を砕くことしか使用されてないだろう棍棒(こんぼう)や、または腰に差されている傷だらけの鞘にかくれている日本刀だけが不気味に揺れている。
そんな、手にもっているものが全て人を殺すためのもの――もしくは破壊するためしか存在しえない「武器」だけという恐ろしい人間たちが、きていた。
こちらを見つめており、そしてその全員の方から近寄らばおそらくあまりにも生々しいくらいにつよい血の臭いと、また自分に関係してる者以外の「者」――つまり「物」に対しては間違いようもなく、何の痛痒(つうよう)も感じないであろうぎらついてるくせして淀(よど)んでおり、そしてあまりに暗くて底も見えない。――そんな、他者を蹂躙(じゅうりん)することによってしか己というものを維持出来ないケダモノというにも不適切な男どもが、数十人単位でこちらへと、ぞろぞろと群れをなし近づいてきているので、あった……。
当、然。――……この、自分の両親とそして、敬愛してた尊敬していた兄とを無残にも惨殺されてしまった少年が立ち上がり、その仇の連中だとして血の吹き出そうなほどに今まで身の裡(うち)にだけ収めてたはずのものを、全ての憎悪の感情を爆発させながら形見でもある、兄の脇差を不器用に抜き放ち、「――よ、くもッッ!!! ……父ちゃ、んと、母ちゃ、ん、……を!!!! ――ゆ、ゆる、さ……んッ……ゆ、ゆる、さ、……――!!!!!」と。
――まるで構えにすらもなっていない柄を通常とは逆の、逆手(さかて)で持ってしまいながらも――しかし確かにその「瞳」と裡にある「感情」だけは今、向かい合っているあの男達とほとんど同じような色と臭いをしているということには――緋村剣心は即座に気が付いてはいたものの――それを語ることだけはせず に……ただ、擦り足で音も無く少年の斜め前へと横切ると、自分の『逆刃刀』の柄を彼の眼の前に差し出しながら、彼へと柔らかな微笑みを浮かべた後、で――その身体からは先程までのふうわりとした春の花の香(こう)のような空気を底へと沈ませており、代わりに重い重い、地の底にある、どろついている固形に近い感情へと徐々に移していく。
今、無言で相対しようとしている男達よりも、遙かに暗い「瞳」をその顔へと宿しながら、彼はただ〝圧〟をその空いている空間へと「撃ち」ながら――ゆっくり、と……。
――距離にして二十メートル程離れているだろう、男達の方へと――つまり、吊るされている、少年の両親を間に挟むような形となりながら――向き合っていた。
「…………なんじゃァ、……お前、は…………?」
すい、っと一人の男がそう言いながら剣心の前に出る。
「……死にたいん、……か……?」
そう。言うのが速いか。――声と同時に刀を抜き去り上段から脳天へと大きく一気に振りかぶって、斬り落としたのだが、剣心は前でなく『後ろ』へと左足を滑らせて、逆刃を鞘から抜き、相手の空いている鳩尾(みぞおち)へと、一瞬で「叩く」。
倒れていく男の音がしたのとまた同時に。
逆刃のため、ふつうの納刀と違って天に鞘を向かせたままに収めながら――一斉に男達の怒号が響いたかと思うと、己の持っているそれぞれの武器を抜き、構えた。
それに対して、動揺など微塵も生じていない見せてもいない、可笑(おか)しな逆刃を持つ可笑しな男は――ただ、ゆっくりと刀の鍔(つば)に指をそえてから、男達の方を見据(す)えていた。
見る者がみればそれは一番手出しをしてはいけない。――それこそ、人を確実に効率よく殺す術を心得ている者だけが持つ、正に静かでおとなしく、しかし凶暴な「闇」としかいいようのないものを、その小さな身体から――その「匂い」からなどは、最も縁遠そうで華奢(きゃしゃ)な、長髪の優男(やさおとこ)から醸(かも)し出されていることにすら、気付かずに。
「……おぬしらが、志士雄の手下、か……?」
一番、先頭にいたこの集団をたばねてるらしき、左頬には大きな縦傷(たてきず)も三本ある、そして左眼には鉄製でごつい眼帯をつけている男が、声を出してるはずなのに、どこか現実感の薄い、少し高めのかすれた声を出しながら、「……だったら、……どォした…………」と。
あまりに投げやりにすら聞こえてくる程の声で返していた男に対して、再度、剣心が、「……何故、この人たちを、殺した……?」と、尋ねていく。
男の方は「……こいつらの息子、が、……この村の情報を、漏らそうと、した……」
一端句切り。そして、片方だけの眼をぎょろりと大きくしながら、更に、
「……その責めを、負って……」
僅(わず)かに、口元が笑みのように緩んだ。ばつん、と、会話を断ち切るようにしながら、小さく、
「――〝処刑〟、したァ…………」、と。
言った。
――長髪の、そして、左頬に十字傷がある小柄でなよなよしく、弱そうなその男の口元にも、同じようにわずかに緩みに似たものが出ていた。いいや、引きつらせたようにも見える顔をしながら――目元を長い前髪でうつむくことによって隠していて、そして。
「――……見せしめ、と、……いうわけ、……か………………」
男が肩に、本当に、木からただ削り出してきたような棍棒を、担(かつ)いでいく……。
十字傷の男が再度、納刀してた刀をぬき取ったかと思うと、背後にいた、運動能力に非常に長(た)けている女に――巻町操に対して振り返ることもなく、「……その子を、頼む……」と、静かに告げると、「……、……えっ、……?」と。
その急な展開に全く思考がついていけずに……しかし、彼のしようとしていることを、止める間もなく――「……斬っちまえェええええェええええええええええええええええええええ!!!!!」と、いう。
誰かの「号令」と、共に。
――零(こぼ)れようとしていたが、かろうじて均衡(きんこう)をたもってたような、子どもの作ったような他愛(たあい)なき砂山のような緊張が一気に崩れ、互いが互いの思考を「行動」へとうつしていく――。
剣心が、集団に逆刃を一直線にふり、斬る。乱れる。崩れたところへと、『胴』・『胴(ド)』・『ド』・『ド』・『ど』・『ど』、『ン』!! と、振り。振り。振り。振って、斬る。
自分たちよりも遙かに体力も体格も、その、力さえも到底かなわぬだろう、と高(たか)をくくってた男たちの方は、たったひとりの十字傷のある、しかも真剣ですらない、殺傷力も低い『逆刃』の男が放つ、振ってゆく剣に押しきられ、倒され、そして五人が一斉に後方へと崩れ、また、倒れる。そこへと更に胴。また、左肩。それで二人が一瞬で、倒れた。
そこで、初めて――驚異的な速度を持っているその男が止まり、自分の身体と逆刃を大きく開くことにより、三百六十度の間合いを即座に、確保していた。
そして、すぐ、動き出す。
敵。足を払う。倒す。後ろの男の出した、首を狙う横振りを逸らして、かわし。――すぐさま、相手の右袈裟を「斬る」。その横にいる男に一閃。回転し、後方にもう一度の左胴。前方にその勢いのまま、また、足首を払い、倒した。左胴をした男へと、とどめをさす〝一撃〟。
顔を上げた、後で。――非常に、脚力には優れてるのだろう、倒したばかりの味方の背を利用して、出来ていた即席の「台」から跳躍(ちょうやく)した男が向かう。
上段で、剣心へと振りぬいては来ていたものの。
その男よりも、はるかに速い反射神経を使って緋村剣心――いや、「緋村抜刀斎」――は、がらあきとなってるその胴体へと、首元、肋骨(ろっこつ)、そして上半身のばねを利用して刀を僅(わず)かに引き、瞬時に「溜め」を作ったかと思うと――敵の胸元へ一気にゼロ距離で「撃ち」こんだ。すぐさま敵が、昏倒。動けなく、なる。
それ、を。
少年を守るという、大事な仕事ことすらをも失念しながら――……これまで、ずっと見て来ていたあの、なよなよっちくてふらふらとしており。へらへらとしていて掴みどころもなければ骨も全く無さそうであった――彼女の理想の『男性像』からは正に、月とすっぽんくらいに程遠かったような男――緋村剣心、が――……。
まるで、〝夜叉〟のように空気も動きも何もかもを変えていき。
――屈強そうな。……事実。
標準的な人間よりかははるかにそうであろう荒くれ男どもをただただ、まるで、機械のように、表情も変えずに。
自動運転機械(オート・マタン)のような淡々とした冷徹さを前面に吹き出させながら、次々、と。
身体はゆるんでいるのにどこも隙がない、初めから、勝つというイメージが出来ない。そんな未来が予想出来ない程の動きと共に、「斬り」、「撃ち」、木くずを吹くかのようにして、男たちの気が、失わされて、いく――。
そんな異様な光景を目の前にして。……また、ふらふら、と――巻町操は呆然としながら、ただその「事実」を、見ていた。
自分の、想像のつかない領域で今、物凄いことが、起きている。
自分の、想像もつかない彼女の傍(そば)にいる人たちからしか――しかも心震える。……でも「お話」の中でしか知らなかった、本当の幕末の戦いがおそらく今「ここ」には、ある、存在してい、る――。
そんな意識の流れすらも強引に断ち切るかのようにしながら――剣心――緋村抜刀斎がすり足をしながら、上段から振り落とし、また一人を気絶。
胴、胴と撃ち二人が気絶。その勢いを殺すどころか更に、加速しながら相手の剣を弾いていなし、胴を放ち前へと「突き」を繰り出す。――男の背後に固まりながら彼を取りかこもうとしていた五・六人の身体が、元々、弱かっただろう小屋のような家が強引につけ加えられる人間の重さと衝撃にたえきれずに、あっけなく崩壊をしてゆき、それと同調させるかのように後方へととばされてしまった男どもが、一気にもつれ合うようにして気絶していく。
ふかく身体を沈み込ませながらも力みは微塵もはいらずに、剣心が、崩れたおれた男たちの更にうしろにいる男の二人に片手で左右の横に振って薙(な)ぎ倒す。
斬りかかってきていた男の振りにあわせるように逆に肩に逆刃をあてると、相手が、刀をもっている右腕の間へと、己の逆刃の根元をいれたかと思うとその身体を一瞬の「盾」につかい、振り払ってからどかし、再度「突き」を、放つ。
一撃で敵のひとりを打倒すと、その場でぐるんと回転して自分の背後にいる男の襟元(えりもと)を掴(つか)み、それを更に遠心力を利用して投げ飛ばしたとおもえばとたんに開いてしまった空間へと、戸惑(とまど)う男たちの意表をつく形となるまま、即座に前方の男へと肉迫(にくはく)し、ぴたり、と敵に背をつけたかと思うと、密着したまま敵の刀がぬき取られてる状態の「鞘」を、つかんでいく。
そうやって、その男の動きが取れずにいる間に再びぐる、と。
身体を独楽(こま)のように回転させると、おこす遠心力をこめた一撃を小柄な体で、出来うるかぎり最大の「振り」をもって、前にいた男のこめかみへ直撃させ、白目にさせていく。
剣心は、男をまるで無表情のまま見ることさえもせずに――さらに、前方の男を右袈裟、左逆袈裟、もう一度袈裟の三発をわずか半秒で、叩き込んでいた。
しかも、壊れている家の柱へと男が抵抗する間もなく激突した後さえも、剣心は「情け」という言葉からははてしなく遠い、真逆の撃ちこみで、ごん・どん・げん!! 叩きつけてゆき、かろうじて、死んでいない状態へと、追い込んだ後。
そして、そのすぐ後に――背後で一斉(いっせい)に彼を狙おうとしてた三人を、こちらも回転しながら真横に一気に刀を振りぬくと、同時に、戦意を一瞬で削(そ)ぎ落とす。
残り、すくなくなった敵の一人をまたひと振りで沈ませた後で。
その、次の相手も一度うけた後の斬撃でたおし――ぐらついてる、一番後ろの男の左肩をけって、この戦いをやり始めた時にやられた跳躍(もの)を――もっと激しく、やわく空中で強く振りかぶってから地面にいた男達へと叩きつけていた。
最〝恐〟と呼ばれていた古流剣術、『飛天御剣流』の中でもとくに使用頻度の高い『龍槌閃(りゅうついせん)』というその技により、かたまっていた残りの三人の男の腰を――精神を――砕いていく。
奥から沸きあがってくる動揺を、隠しきれないその三人の元へと。
――剣心は、顔が見えないほどに深く深く俯(うつむ)きながら――しかし、迸(ほとばし)り出る、狂的で、そして、激しく。
――いわば、青く。……そして、いつまでも消えることのない地獄からの〝使者〟のようになりながら、途切れることもないそれを纏(まと)っているようにすらも、男たちはその眼へと強引に『幻視』させられてしまって、いた――。
……志士雄さま、と、……おんな、じ、………………!!!!????
〝鬼〟が、迫ってきてい、た……。
――一人目の男をごみのように一撃で倒した。二人目の男も同じように、薙(な)ぎ倒す。
そして。
最後の一人となり、やはりこの集団武装していた男たちの一応の『頭』だったであろう――さきほど、剣心に対して、少年の両親を殺した理由を僅(わず)かに楽しげに告げてきていた、あの生きてるのかどうかすらもあやしいような男、が――
その、とってきたであろう残虐卑劣(ひれつ)な行為とはまるでちがう――濁っていて、瞳からはいきてる人間の光などは微塵(みじん)も感じられない。……それどころか、「遊離」してるようにも見えた眼帯の男、は――その時になって、ようやく『理解』してい、た……。
人間という生物が本当に生きてるという「証」でもある、感情(もの)を。
その、〝恐怖〟という感情に全身を――いいや。魂さえもが犯されてしまってるような、そんなおびえきっている表情をさらしながら、目の前にせまり来る赤毛で、チビで、そして弱そう、で――そして圧倒的にふかい〝青い業火(ごうか)〟を、その猫背気味の身体から全力で吹きだしてきながら――徐々に徐々にと、近づいてきている、あの赤毛の『悪魔』にたいして……たまらずに、最早(もはや)投げやりとしか周囲には映らないであろう、構えらしい構えすらとれずにいる裏返った声ではなってきている斬撃を、剣心は無表情にがちんと刀で簡単にふせいでから、腹へと一撃、その後足にももう一発「撃って」から、地に一度足をついて、僅(わず)かに相手の男が苦悶の音(ね)を、上げるのを見る。
――……それでも。
最後の男の意地か、ふたたび剣を構えて、そして振ろうとしてた相手にも剣心――いいや、〝緋村抜刀斎〟――は、さっきとまったく同じように能面のように防ぎながら、蹴りで体勢を崩し。そして、今までで一番の攻撃(もの)。
勢いのある斬撃を右肩の逆袈裟。軌道(きどう)をなぞり右下で袈裟――また同じように、なぞるように最後に右肩へと。
最大級の〝重さ〟を腰で入れて〝逆袈裟〟を最後に、叩き、こんで、いく。
気絶しかかっているその、男にたいして。
――ただ剣心は、振り抜きましたとでも言わんばかりに、『ごみ』を打ち捨てるかのような「暴力」によって顔面のこめかみを吹き飛ばしていく。容赦なく〝撃ち〟、こんでい、く。
はしごに、激突していた。
泡を、ぶくぶくと。吹きながら……。
……自分の首を、わざわざ壊れかかってる家の横にたてかけられてたはしごの隙間へと、自らはまり込むようにしながら顔を突っ込んでく形となったまま、で……。
男が、白目を剥(む)いて、口からはこれまた人のまだ生きている証(あかし)であるぼぐぼこぼこぼぼ、ぼ……という、意外に白っぽい泡をとめどなく顎(あご)から木枠の足場へと、滴(したた)らせて、落としていた……。
まるで、斬首台に載(の)せられてる、罪人の〝生首〟のようになりながら――沈黙、していた…………。
……嵐のように――そう形容するのが一番いい表現(もの)であろう破壊力ある凄まじくひどい蹂躙(じゅうりん)の光景を、馬鹿のように立ちつくしながら、ただただ傍観(ぼうかん)していた羽目に陥(おちい)っていた、大切な両親と敬愛してた兄とを殺されていたということも。
そして、赤毛の軟弱男から、そんな悲劇のこの少年をあの悪漢(あっかん)たちから守りきれという、重大な「任務」を任されていたということすらも、彼女らは忘れて……。
その、全てを今だけは頭からはっきりと失念させながら……ざ、ッ、ざッ、ざざッ、ざざざざ、ッッッ……と、いった。
軽い草鞋(わらじ)が砂をかんでいる音をこちらへと響かせながら歩いてきている〝男〟が――殺傷力の低い、逆刃刀をつかって、あの、大人数をたった一人で全員 あますところなく昏倒、もしくは行動不能とし、撃ちたおしてしまった、男が――「緋村剣心」が歩いて来ているのを、ただ、見ていたの、だった……。
彼が、静かな口調で――しかしどこか、悲しみで埋めつくされてるようにすらも聴こえてくる小さな声で、けれども、よくとおる優しい声のまま「……弔(とむら)ってあげるで、ござるよ…………」とふたりに放っていた……。
それを聴いていた二人は――まるで、シンクロでもしてるかのようにしながら同じような表情で同じような頷(うなづ)き方のままで、その言葉を首を縦にぎこちなく振っておくことで了承を返していた。
剣心が、そこで。
ようやく、いつもの爽やかな風をイメージさせてくる穏やかさを持った柔和(にゅうわ)な顔を作ったと同時に。
――しかし、……その時、……――
文章修業・るろうに剣心・~京都大火編~剣心最初のアクション・シーンである新月村での戦いを文章化。