なにもない時間で なにもない場所で ひとりの詩人は歌っている
 その声はだれもいない空間にひろがり 音をきいているのは 月と星たちだけであった
 星屑(ほしくず)たちはゆれながら落ち その内のひとつが詩人の歌にさそわれて、やってきていた
 なにもない時間で 星はかれのまわりを踊ったが かれは、気がつけない。
 かれには視力がなかった なんにも見えず なんにも、感じない
 かれのそばには、誰よりもひかりかがやく 
 この世で生をうけ、もっとも欲するものがあったというのにで、ある

 かれは 気がつけない

 星はあきらめて 空へともどろうとしていた
 その一瞬 盲(めし)いた瞳にひかりがともる

 見えるだろう ほら そこにあるもの、が
 空から家出してきたきみだけの そう きみだけの

 
 きみだけの、ひかり が

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-04-22

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