愛
なにもない時間で なにもない場所で ひとりの詩人は歌っている
その声はだれもいない空間にひろがり 音をきいているのは 月と星たちだけであった
星屑(ほしくず)たちはゆれながら落ち その内のひとつが詩人の歌にさそわれて、やってきていた
なにもない時間で 星はかれのまわりを踊ったが かれは、気がつけない。
かれには視力がなかった なんにも見えず なんにも、感じない
かれのそばには、誰よりもひかりかがやく
この世で生をうけ、もっとも欲するものがあったというのにで、ある
かれは 気がつけない
星はあきらめて 空へともどろうとしていた
その一瞬 盲(めし)いた瞳にひかりがともる
見えるだろう ほら そこにあるもの、が
空から家出してきたきみだけの そう きみだけの
きみだけの、ひかり が
愛