夕飯の支度。
駅前には
今到着したばかりの父の車。
手を振ってここだよ。と
学校帰りの私を呼ぶ。
後部座席にはシチューの材料が置かれ
鼻歌を歌いながら父は家路を急ぐ。
ただいま。と開ける玄関の引き戸
私は手を洗い父の邪魔をしないように
ジャガイモと人参の皮をむく。
大鍋の前で鼻歌を響かせる父に
終わったよ。と一声かけた進学前の金曜日
町内を巡る車に揺られ
忘れていた事を一つ一つ思い返していた。
「お父さんのビーフシチューは、美味しかったねえ。」
綺麗に晴れた納骨の前日
大鍋を洗いながらつぶやく妹の横では
ジャガイモが一袋
綺麗にむかれて
鍋の中で遊びまわるのを待っている。
夕飯の支度。