イツカ、ドコカデ
目の前を 年老いて病んだ犬が散歩している
何故か見てはいけないような気がして
ぼくは飼い主に軽く挨拶し通り過ぎる
通り過ぎた後 何故あんな罪悪感が芽生えるのか考えた
息苦しくなり空を見る
白く濁った空が泣くように視界をけぶらす
ぼくはその感情に名前をつけない つけられない つけたくなかった
ぼく達は電車に乗る
「死」という降車不可能な真っ赤な電車に
その犬はきっと先の方にいる
ぼくはどの辺だろうか
知るのが躊躇(ためら)われる座席へと腰を降ろす
車窓には一面の花畑 この世のものとは思えない風景を流す
一つ後ろに乗っている誰かをぼくは待っている
いつかどこかで出会うのをぼくは待っている
それがきみならば ぼくは嬉しいのだけど
イツカ、ドコカデ