グラバシ・アイエガ

　グラバシ・アイエガ。カイナッハおよびルードル型統治国家群Aー７６７の出身。父親は山登りの王ニコラ・アイエガ。母親は女優のマルリヒ・バーナンクイル。両親は線歴２.０７に分離生活へと入る。慣習に従って、グラバシは１０歳離れた従姉妹に育てられる。エナン暗総壱学校を末席で卒業。級友に公開王セリナム・ジューデンシ、魔天審判アレバイ・グシレスカがいる。知能レベルが当時の知識人ガリレット・アーンに匹敵していたグラバシがなぜ末席だったかは、謎だ。筆者が想像するにグラバシの血筋が問題になった可能性はある。虐殺王ジーナンクレルの血筋が母親に混じっている事実はない。が、過去の暗刀時代において、記憶保管士の大移動があったことも、無視できない。そのとき、正統記憶（公式の政府が管理していた記憶群）が失われたのだろう。Ｂ国家において活躍したグラバシだが生まれ故郷のA-７６７では、ついに日の目をみないのも、不確かさのなせる技だろう。
　十二人委員会において、レクナム・ジーン、サルバリ・ミシュリアとともに、アレクムーン月事件を起こしたグラバシが目指したのは、バラメリア思想国家体であることは、グラバシの著書「Ｂ群国家の末裔」において確認できる。一方、この書物形態が、未曾有の混乱を見落とさせる原因にもなった。本当にグラバシが書いたものかどうかわからないのだ。偽グラバシ・アイエガはわかっているだけで、５人いる。影武者だったデルミシ・ジョエーバーエワは例外として、他の４人は、グラバシの権力を受け継ごうとする意図があったはずだ。当時、グラバシの権力機構は、一望遷都システムに中核があった。だからこそ、まぶたの上の虫であった空白期間を狙って偽国家首長が生まれたのも、当然のなりゆきであった。偽グラバシをすべて退けた真グラバシ・アイエガは、頬に巨大なキスマークがあったという。それが目印になって、特定されたらしい。そもそも、彼を彼と認めるには、キスマークをつけた張本人女帝バーバラ・ソイオレンの力が大きかったという。そもそも、グラバシ・アイエガは存在したのか？という疑義も学者からはあがっている。むしろ、当時の国家が生み出した架空首長人間だっという説もある。メシラン・ジャニーウイン（グラバシの幼なじみと自称する女流ゲーム士）も、記憶管理官に十三時間におよぶ語りを行ったと記録にある。グラバシ・アイエガの性別については、女性、男性、蛇性のどれかと考える点では、皆の一致するところだ。女帝バーバラの庇護にあるときは、男として振る舞い。Ｃ群国家レーブラ馬士の部下の時点では、女だったという報告もある。
　そもそも、グラバシは、アイエガ朝を興した。けれども、アイエガ朝の規模たるや、とても電脳国家の形をなしていない。一方、子孫を残さなかったので、アイエガ朝は、閥族刀師たちの反乱によって崩れた。自然言語的展開によって、グラバシの名前は、記憶王バラメシ・ジャークムに残されたが、一方、普遍記憶入りは見送られた。
　グラバシの一生
　Ａ－７６７Ｃ国家群に生まれる。
　エナン暗総壱学校に入学。末席で卒業。
　ドリアデーン更改に応募。
　Ｂ国家で闘士として、名声を得る。バーバラの寵愛を得る。
　Ｃ群国家でレーブラ馬士に仕える。
　千年鉄道とうたわれた５００年事故のなかったレースン国家鉄道にて事故死。