リュヌ・エ・ニュイ

みんなもお空も眠る頃
窓の向こうでは星達が眠そうに瞬いている
寂しいランタンに火を灯し
ガウンを羽織って外に出ると
いつもよりおとなしい風がすっと通り抜けた

扉が閉まる音を聞いて
ゆっくり、ゆらりと歩き出す

闇色の雲が足下に影を作り
その隙間から月が顔を出す

さらさらと流れる噴水は
風と踊りながら夜の町に穏やかな音を響かせた

水面を覗き込むと
私の周りを星が囲んできらめいて
触れないほど、近くにいた

どこからかやって来た花びらが
水面を滑って私の顔を揺らす
泣いたり、笑ったり
それだけのことなのに
胸がぽっとあたたかくなった


空に一番近い岬へ行くと
月がそっと囁いてくる

「今日もたのしかった?
僕はみんなの寝ている姿しか知らないんだ。
だから、いろんなことを聞かせて欲しいな」

その日あったいろんなこと
みんなには内緒だよって
こっそり月に囁くと
クスリと笑って目を閉じた


月と一緒の帰り道

どこかの家から寝言が聞こえて

夜更かしフクロウもあくびをひとつ

おしゃべりな花も、今は幸せそうに寄り添って眠っている



「またあした」

そう言うと月は嬉しそうに笑った

扉を開けるとあたたかい空気がわたしを包む

ランタンのロウがぽたりと落ちると
くたりと暗闇が横たわった



みんなもお空も眠る頃
窓の向こうでは星達が眠そうに瞬いていた

リュヌ・エ・ニュイ

リュヌ・エ・ニュイ
フランス語で月と夜。

皆が寝ている姿しか知らない月はきっと寂しい思いをしているのでしょうね。
だからそっと話しかけてあげて下さい。

リュヌ・エ・ニュイ

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-04-21

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted