月のお姫様
ぼくはあの日の夜 見てしまったんだ
星いっぱいの空の下、ぼんやり浮かぶ
女の子をさ!
ぼくは信じられなくて、目をこすったり
ほっぺをつねったりしてみたけれど
やっぱりその子はそこにいた。
まるで夢をみているようだったよ
次の夜、あの子はまたそこにいた。
ぼくは我慢できなくて
その子の元へ走り出した。
「きみ何してるの?」
女の子はぼくを見て、
良い子は寝てるはずよ?
なんて笑ってから
みんなを見守ってるの といった。
「みんな?どういうこと?」
「星の子たちやあなたたちを
見守るのが私の役目なの」
それだけいうと 女の子はまた
空を見上げてしまった。
そのまた次の日
ぼくは女の子に 会いに行った
「ねぇ、たのしいの?」
ずっと星を見上げているだけなんて
ぼくは疲れるし 嫌だよ。
「たのしいわよ。
星たちはね どんなに遠くにいても
おはなしできるの」
「ふぅん」
次の日も 次の日も
女の子は そこにいた。
いつものように ぼくは女の子に
会いに行ったんだ
「あら、こんばんは」
いい夜ね といった女の子は
体が透けてしまっていた
「きみ、体が消えかけているよ」
「ええ、きょうで消えるのよ」
「どうしてだい」
「そういうものなのよ」
「意味がわからないよ」
女の子は 少し笑うとまた
空を見上げた。
「ねぇ、もう会えないの」
「いいえ、また少ししたら会えるわ」
ぼくがだんまりしていると
「さみしいときは 空を見上げて
わたしはいつも 見守っているわ」
と言って どこかへ消えてしまった
ぼくは思うんだ
あの日 消えてしまった
頭に星を乗っけた 女の子はまるで
月のおひめさま みたいだと
今度 あの子が帰ってきたら
きみたちにも 紹介してあげるよ
きっと仲良くなれるさ
このぼくが なれたようにね
月のお姫様
女の子は“月”でした。
消えたり、現れたりするのは、月の満ち欠けを表しているからです。
どこかで空を見上げる女の子がいたら
その子が頭に星を乗っけていたら
わかりますよね。その子がだれなのか。
彼女を見つけたら、
どうか男の子に知らせてあげてください
女の子を探し回っている
あの男の子に……