そめる道
暖まったコンクリートに鋭角の陽が差し、火のように照っている。
朝とは違ったそれを、サクサクと進んでいく。
何をしようとは決めていない。ただ1日が終わり家路につくには、まだ早いと思ったのだ。
どこに行こうか、何をしようか、まったく定まっていないのに足はフラフラとあさってに向かう。
街路樹が葉を揺らしながら人混みを眺めている。こんなコンクリートだらけの、人混みが絶えない場所で、おまえはよく生きているな。
俺には無理だ。いますぐに無理とは言わないが、限界がきているのを感じる。
灰色の街のなか決まったリズムで繰り返す日常。周りに人が溢れていても誰もが互いに関わりを拒むように過ごす無機質の常識に、私は辟易してきている。
いっそおまえのように、何も言わず、何も見ず、何も聞かずにただただ、そこに在っていたい。内から破壊を進める喧騒も、おまえには関係ないのならば私はおまえを恨む。それだけに羨ましい。
その在り方が、羨ましいのだ。
青々と茂る葉はザワザワと声をあげ、無機質を旨とする街のなかで幹は頑固に佇む。その側を多くの人が歩いても、誰もそれを見るとはしない。
私は見た。ただ見ていた。そこにどっしりとしたものがあったからだ。木はざわめく。雑踏を根で感じて呼応するように、ざわめいている。
私は聞いた。そのざわめきは、なにか、私の内部を引っ掻くように響く。
そめる道