平行世界の悪魔語
始まり
Ⅰ
眩しい太陽、時間はまだ10時過ぎ。一学期最後の授業、とは言っても終業式とかだけど、が終わってチャイムが今期の終わりを告げた。
「ん、うーん…!放課後だー!」
「だー。」
「だー!」
ここは黎明町、黎明高校。あたしは橘茜。高校二年生。体を動かすのが好き。その他は多分普通。テストの点数は悪いけど。
「そして明日から夏休みだー!」
「だー。」
「だー!」
そしてこっち、さっきからあたしに対して静かにだーだー言っているのは水色彩美。無気力でどこか抜けているけど頭が良い。中学からの親友。あたしより背は低く、長い髪をリボンで一本結び。これもあたしと逆。正反対のようだけどなぜか馬が合う。
「あかちーテンション高いねー。あやちーも、珍しいー。」
そして元気に言ってた方が篠野嵐。のんびりした話し方。アヤ―彩美よりもっと背が低い。おかっぱ頭でお人形みたい。
「だって夏休みだよ夏休み!」
「それもそうだねー。逆にさかちーはいつも通りー。」
「当たり前だって。だって宿題と部活あるじゃん。忙しいって。」
嵐に呼びかけられこちらを向いたのは空須榊。真面目な性格。ポニテ。あたしより背が高い。実家は剣道道場らしい。いわゆるイツメンがこのメンバー。
「カッキーは真面目だなー。また後であたしに見せてねん?」
「あ、らんにもー。」
「やーだーよー。自分でやらなきゃ意味無いでしょ?」
「そんなこと言ってー、また見せてくれるくせにー」
「うちらは知ってるんだよー?このツンデレさかちー!」
「う、うるさいな。たまには彩美に見せてもらえよ。」
「私?」
「う…」
「あやちー謎だし…」
アヤは毎回、前日までは全て空欄なのに当日になると全部埋まってるという謎の技術の持ち主だ。誰も写せない。
「じゃ、とりあえず町に繰り出しますかー。」
「あー、らんとさかちー部活なんだー。」
そう言い、教室の隅に置いてある竹刀を見る。2人は剣道部だ。特にカッキーの家は剣術道場で、本人もこの前部長になったらしい。大会に向けて燃えているのだろう。
「んー、そっか。残念。」
「ごめんねー。」
「また今度な。」
「うん、長い休みだし。今日は解散で良いと思うよ。」
「何言ってんのアヤ、2人でも行くよ?」
「ええ…」
「いーくーのー。」
「むー…あとでアイスね。」
「おっけー!」
そこでランがクラスの横の方に目をやる。
「もしかよかったらー、ねむちー誘ったげてー。」
「ねむちー?」
あたし達も同じく目をそちらに向ける。
「ああ、白石音夢?」
そこには3人で話してる男子。その内の1人、下手すれば女子と見紛う見た目の男子の事だろう。
「うんー。昔からの友達なんだー。最近はあんまりだけどねー。」
「いわゆる幼馴染ってやつらしいよ。ま、あんまりってのも納得いくけどね。」
なんでー?とランが聞くがカッキーはニヤけながらはぐらかす。
「へー、そうだったんだ。」
「初耳。」
でもあまり話したこと無いし、男子誘うのもどうよ…
「あれー、でももういないやー。」
ランが言う。確かにその姿は友達ごともういなかった。あたしは内心少しホッとして、残念だねー。と言った。
「ラン、もうそろそろ部活だぞ。」
「あー、ほんとだー。行かなくっちゃー。」
と、いうことで今日は2人行動。たまにあるけどね。
「ばいばーい!」
「じゃあなー。」
「またLINEするー!」
「またねー。」
「ま、最初はここだよねー。」
「ねー。」
放課後に行動する時はよく来るゲーセン。カッキーとあたしはクレーンゲームとか、プリクラとか。アヤとランは音ゲーとか格ゲーとか。
「うーん、夏休み始まりだし、目新しいものがあると思ったんだけどなー。」
「やっぱり明日からなんじゃないかな…?」
「んー…しょうがないか…明日出直そう。」
「明日また来るんだ…」
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