軽い石を積む
出来れば明るく生きましょう。
鬼に知られないように、軽い石を積んでいく。
今日は図書館はお休み。
そのことに気づいたのは、既に着いてしまった後だった。
エレベーターのボタン見て、がびーん。お休みシールが貼ってある。
ここから家まで結構あるんだけどなあ。そう思いつつ、其処を辞す。
次は、と考え、帰ったらまた近所の噂好きな好々爺や婆さんたちの餌食になることを考え、えい、いっちょやったらぁっと、警察署に行き、ボランティア登録所の道を聞いた。
携帯は持ってますか?と聞かれ、すみません、持ってませんと答える私はどこの田舎者だどこのドイツ人だ、呆れられながらも受付の子が優しかったのにほんのり癒された。
さて、ここから10㎞はあるぞ、と考えて、いざ歩き出したものの、信号で待っているうちに、また私の電池が切れたら困ると思い、結局出直すことにした。
情けなや、情けなや。これも病のせいである。
本当は家でゆっくりしていなければいけないのを、これも修行と出張ってばかりいるせいで、あちこちで笑われる。
「あの人、ほんまに元気やなぁ」
いいんだ、これが私だ。と仁王立ち。犬を連れて、時には一人で、私は常に行動している。
歩くとは、本当にいいことだ。
帰りがけにメロンソーダを100円自販機で買い、久々のご褒美、と口をつけたが、普段お茶ばかりの私には少々甘すぎた。
お菓子は平気、でもジュースは、なんか吸収力激しい気がしてダメ。
ジュース業者の方に迷惑。捨てるわけにもいかず、大事に飲むことにして、冷蔵庫にしまう。
犬は一人にされても、散歩の後だとすごく呑気。機嫌よさげに吠えようともしない。
いつも一緒にいるからね、飽きたんだろう、私に。
いずれは子供を作りたかったと、父が去勢したことをまだ根に持って言う。
だから癌になる確率があがるんだって、と言っても、そんなん詐欺に決まってるだろ、と信じない昭和生まれの男。
いや、漢。
かれは土建屋業界で名の知られるごんべたれだ。
しかし根は易しくて、徳が高い。しっかりと物事を知性と理を持って順序良く進めていく。
私は見上げるばかりである。
夕飯に、ほたての弁当を父に買ってあげ、旨いだろうね、旨いだろうね、と言っていると、食べづらいわ、と笑われた。
ここ最近の親不孝と世間様への不義理を切なく思う。助けられて持っているのに、なんだあの言い様は、と自分に呆れ返る。こういうのを恩知らずの親知らずという。
笑われて当然、怒られて当然だ。
三途の川で、子供は石を積むという。鬼に倒されないように、気を付けて、気を付けて。
気を付け!と私に号令する。
これからは、周囲と仲良く過ごすように!嫌味も愚痴も、全て作品に変えてしまえ!
そう言って、私は一つ石を掴み、盛大に鬼に向かって振りかぶった。
これからも私は懲りないだろう。
死んでしまうその日まで、毎日楽しく生きていこう。
倒れた鬼のそばに立ち、私は青空を見上げた。
軽い石を積む
素直な気持ちです。