飯盛り神様

うちには、飯盛り神様が着いているらしい。

家の神棚には神様がいるというが、果たしてほんとだろうか。

ふーっと、床を一階から三階まで一気に拭き上げて、私は手を止めた。
塗れた手、袖まくりしたままおでこの汗を拭く。

最近断捨離に凝りだしたのだが、それと同時に掃除意欲もぐわっと湧き、家族のいない日は犬を遊ばせながら洗濯、掃除機、床拭き、玄関の掃き掃除と続けてする。
お風呂場はカビの生えない構造で、弟が一日に何度も風呂に入るのでパスだ。

私はずいぶんと世に貢献しているぞ。そんな気になる。

一か月に一度の二千円募金をヤホーで終えて、読書をしながら、そうだ、植物に水をあげなくては、と立ち上がった。
その時だ。

ちゃりん。

何か落ちた。
部屋の隅の方。角の神棚から。
拾ってみると、500円玉。

はて?

うちは手を合わせて正月年始に参る以外、神棚に用はない。金なんて供えてない筈だ。
不思議に思いながら、小皿に入れて、清めの水とばかりにボトルウォーターを注いでから、また神棚の上にて供えておいた。

次の日、私はさぼりの日だった。
一応コロコロを絨毯にかけた後、犬と一緒に寝ていた。
しかし、風呂場もそろそろ限界だな、と腰を上げ風呂のタイルをピカピカに磨いたところ、またちゃりんと、神棚からお金が落ちてきた。
今度は5円。

はて?何かと縁があるの5円だろうか?

では、出かけるとしよう、と犬を連れて散歩に出た。
着いた神社で、先ほどの5円玉を賽銭箱に入れ、頭を下げて帰ってきた。
途中、道端にサボテンが捨てられているのを発見した。
まだ育てられるだろうに、と家に持って帰り、水を与えて日向に置いた。


そのまた次の日、今日は壁を拭いた後、トイレ掃除をして床の乾拭きをし、弟に料理を作ってやった。
その洗い物をしていると、またチャリンと音がする。

今度はまた、500円玉。

白いご飯をお供えして、ありがたく頂戴することにした。
たこ焼きを兄弟分買い、100円の犬のおやつを買って帰った。
我が家には神様が着いているらしい。
祖母がよく参っていた理由が今分かった。
私はこれを、飯盛り神様と名づけることにした。

勉強がはかどったり、犬の世話をしたりしていると、しーんとしているが、掃除や飯炊きをすると小遣いをくれる。
祖父の写真が飾ってある。

じいちゃんきょうもありがとう、と私は手を合わせ、新しいご飯と取り換えて、冷ご飯をレンジでチンした、
今日はパラパラご飯のピラフだ。

ささやかでいいんだよ、幸せなんて。
祖父のそんな声が聞こえた気がした。

飯盛り神様

まっすぐなことをすると、人間まっすぐになるもんです。

飯盛り神様

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • SF
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-04-18

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