ピースサイン


笑い声が響く教室に化け物はふいに現れた。
全身黒色のおぞましい姿をした化け物は一番笑っていた男女4人を食べた。
ぐちゃぐちゃと、ガムを噛むように。
それから四つん這いになって吠えた後それを見て悲鳴を上げた数人を捕まえて食べた。逃げようとする人がいれば、机に置かれていた花瓶を掴んで投げた。
器物が割れる音とともに、教室にはさきほどまで楽しそうに笑っていた生徒たちは消えていた。

バラバラになった机
引っ掻き傷のある黒板
ゴミが散乱した床
ビリビリになったカーテン
飛び散った花

学級崩壊、頭に浮かんだ言葉はそれだ

壁に背を預けずるずる足から崩れ落ちる。
化け物はまだ口をもごもご動かしていた。

怖いはずなのになぜだか清々しい気分だった。

瞬きをした直後、化け物は目の前に立っていた。
黒の手がvの形になったので、それを真似するようにピースサインをすると化け物は満足そうに笑いながら消えた。



時はたち、生き残った少女は笑い声が絶えない賑やかなクラスの人気者となっていた。
机の上に座って、女の子なのに股を大きく開いて、げらげら笑っていた。
教室も、彼女が望むように施されている。

ある箇所だけを遠ざけるようにしてレイアウトされた机
赤で様々なコメントを書いて賑やかにした黒板
汚いからと、水をぶちまけた床
光を遮るようにして閉じられたカーテン
落書きだらけの机に置かれている花瓶

全部、全部が笑いのネタだ
これから何をすればより面白いだろうか、そんなことを考えていると黒色のお化けが現れた。

あっという間に、教室中はすっからかんになってしまう。
化け物が全部食べてしまったのだ。

後ろに気配を感じ、振り向くと口を動かしている化け物が立っていた。

「あ、はは」

ピースサインをする間もなく、あたりは黒色に染まった。
どこかで、何かが割れる音が聞こえた気がした。

ピースサイン

ピースサイン

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-04-17

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