Eye love color
恋愛の駆け引きに於いて重要な事は相手の気持ちを読み取る事であるが、それは相手の瞳を見れば一目瞭然である
ー20世紀の有名な哲学者の名言ー
21世紀の現代に於いて恋愛に臆病な若者が多く、その原因は何かと考えるとそれはやはり”振られる事の恐怖”が往々にして考えられる事は明白な事象である。
誰しも勇気を出して告白して振られる事は避けたい。相手が自分の事をどう思っているのか?告白する前にそれが分かっていれば、告白して振られるという惨めな想いをする事を回避出来るー
遺伝子操作により人間は”気持ち”を瞳に宿す事に成功した。人間が相手を見つめた時に相手に好意を抱いている場合は瞳はピンクに輝き、恋人になっても良いと迄に想いが高まると瞳はパープルに光り輝く様に進化を収めた。(レッドだと、ただ単にコンタクトレンズの調子が悪く瞳が充血しているのだと捉え兼ねられないので好意がマックスに達するとパープル迄に輝きが留まる様に設定されている)誠にもって一目瞭然。これなら勇気を出して告白し、振られて惨めな想いをしなくて済む。
あの人は自分に好意を抱いている、恋人になっても良いと思っている…瞳を見れば分かる。だから交際を申し込んでも断られる事は100%無い。それは決して思い込みでは無く、揺るぎない事実なのだからー
瞳で恋愛感情を表現する事が出来る様になった人間。これで振られる事に躊躇する事無く交際する若者たちが増える…と考えられていたが瞳の感情表現は恋愛だけに留まらず、全ての感情を表現する事が出来る様に自ら進化を遂げてしまった。
退屈のグレー、喜びのイエロー、怒りのオレンジ、哀しみのブルー、全ての感情が瞳が見れば一目瞭然。自分が何を思っているのか、どう感じているのかが相手に分かってしまう…バレバレではないか。感情を隠す事が不可能になってしまった今では、嘘や詭弁が通用しなくなり、人間は戸惑った。非常に気不味い。自分の感情を、本当の気持ちを相手に悟られたくない…では相手の瞳を見なければ良い。瞳を見なければ瞳の感情表現システムが発動する事は無いのだから。恋愛関係のみならず、家族家族や友人家族にも人間は消極的になっていった。相手の瞳を見てはいけませんー誰しもが誰にも知られたくない想いや感情があるのだから。瞳を見れば一目瞭然、なんて真っ平御免。
そもそも一目瞭然などと、瞳の感情表現システムがなかった遥か昔の人間が言っていた事が、情や義理などという感情を持ち合わせていない現代の人間には理解不可能な、不可思議な事象な事になりつつある。瞳の色彩無くして相手の想いや感情を計り知るなんて…昔の人々はどうやっていたのだろうか?
けれど恋愛感情に於いて成就しない想いや隠しておきたい感情は現代では非合理的。何故なら皆、相手に分かって欲しいんでしょう?自分の想いを、気持ちを。知りたいんでしょう?相手の想いを、気持ちを。瞳の感情表現システムは初期の設定である恋愛感情のみに特化する様に現在改良中である。
あの人私に気があるのね…あいつ俺の事が好きなのか…さあ、恋せよ若者たち!瞳を見れば一目瞭然。何を躊躇する必要がある?振られる事は100%無いのだからー
Eye love color