天使狩人 5
前回と同じです。
男が恵の牢獄に訪れる数時間前ーー
「コイツが、例の……」
男は、研究室らしき部屋にいた。そして、その周りには同じ服装をした人達。ただ、ローブの代わりに白衣を羽織っていた。科学者のような服装……。
「はい、この長峰恵は数年前、《聖天使ゼクアス》の出現によって家族を亡くしています。そして、現在ただ一人だけ、ゼクアスと接触してします」
そう……恵を助けた天使狩人は死んだ。だから、長峰恵だけが《聖天使ゼクアス》の情報を知る者だ。問題は、そのことを記憶しているかどうか? だ。
白衣を羽織った奴がこちらの意思を読み取ったかのように言った。
「長峰恵は、前々から天使狩人の批判を行っています。恐らく、家族を殺されたことがトラウマになっているんでしょう。その記憶も鮮明に覚えていると思います」
そうか……覚えている、か…。覚えてないほうが、良かっただろうに。
男は、フッと笑い。長峰恵が隔離されている牢獄へ向かった。
時は現在に戻るーー
恵は、いまだ自分に突きつけられた言葉が信じられなかった。
「長峰恵……お前を天使狩人に招待する」
そう言い放ったのだ。招待する……と。
ふざけるな……。
人でなしに成れと?
ふざ……けるな。
フザケルナ。
フ……ザ……ケ……ル……ナ。
「悩んでるっぽいな」
「ふざけんな!」
怒りで反論した。
「俺は……お前らに…親を殺されたんだぞ! 天使狩人に!! そんな野蛮人になれるか! お断りだ!!」
「……そうか、それは残念だな。こちらは、お前の親を殺した天使を知っているんだがな。それでも嫌と言うならしょうがないな」
……!! 親を殺した天使を知っている…だと?
「ちょっと待て、親を殺した天使ってどいつだ?」
「《聖天使ゼクアス》だ。どうだ、コイツに復讐したくないか? 親を殺めたんだろ? なら、お前が殺せばいい。このまま、平和世界にいても意味がない! こい! 天使世界へ! 成れ! 天使狩人へ!」
でも……天使狩人は、親を見殺しに………。
「お前が、天使狩人を嫌っているのは知ってる」
「だったら……なんで!!?」
「お前が変えてみせろ! 腐りきったと思うなら…………自分で正せ!! そして、証明しろ! 俺が変えるまで天使狩人は野蛮人の集いだったと! そのためには…まず天使狩人に成らねばならんがな」
変える……この腐りきった奴等を変える……? そして、証明する……? 今まではこうだったと? そうすれば、こんなふざけた掟は無くなるだろう……。そんなことができるならーーーー。
「成るよ……天使狩人に……。成って、変えて、証明してやるよ!」
「話は終わりだ、長峰恵……共に来い! そして、共に戦うぞ!」
恵は、座って痛みだしていた腰を上げた。上げる途中に、余計な思いは消えていた。ただ一つの思い……。
変えて、証明してみせる
そうして恵は、天使狩人への道をあるきだしたのだったーー。
天使狩人 5
まだまだ続きます。