BARの定型

宝くじが当たったらちびっ子ハウスに寄付しよう、などと考えながらぐずぐず酒を飲んでいたら、カウンターに座った独りの女が目の前のカクテルグラスをカシャーって撮ってた。

SNSにその写真を上げるのだろうか。お洒落なカクテルの写真に添えられるキャプションは「今夜は行きつけのバーで一人飲み。頑張った今週の私、お疲れ様」ぐらいの感じだろうか。一人でバーに飲みに行ける世慣れた女性としての私であり、酒を嗜む大人な私であり、頑張って働いている私、なのだろうか。そして他の投稿は、今日はイタリアンでワインを飲みつつ女子会、みたいな都会でアーバンな暮らしを満喫する私だったり、出先から直帰、立ち飲みで一杯、ちょっとおじさんぽいところもある私ですテヘ、くらいの感じだろうか。あまりにも定型ではないだろうか。

そんなことを思ったが、彼女のことを何か知っているわけでもない。定型だと思っているのはこっちの方で、ただ酒の写真を撮っていたということから定型をこちらが思い浮かべているに過ぎない。もしかしたら一生懸命働いた給与の一部を毎月ちびっ子ハウスに寄付しているような女性なのかも知れない。

穿ったものの見方をしているのはたぶんこっちの方である。

BARの定型

BARの定型

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-04-13

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