鼻歌

外は快晴。
暖かくて、ぽかぽかして、きっと散歩したら気持ちいいに違いない。
友達や家族とお出掛けするのも楽しいだろうな。
目覚めて、そんな考えが過ぎった。

誰かを誘ってみよう。
あ、その前にお風呂に入らなきゃ。
昨日は仕事から帰ってきて、そのままベットにダイブしてしまったのだ。
お腹も空いてるみたいだし、先に軽く何か食べよう。
冷蔵庫を開けると、食パンが入っていた。
レンジで食パンを温めて、マーガリンを塗る。
それだけでもけっこう美味しい。

鼻歌を歌いながら、お風呂に入る。
少し気分が良いみたいだ。

化粧水、乳液、軽く化粧もしてみる。
髪は根元からしっかり乾かす。

服は何を着ようかな。
クローゼットを開けてみると、最近買ってまだ着てない服がこちらを見つめていた。
「折角だし着てみるか」
柄ではないその服。
鏡の前に立ってみると、案外似合ってた。

歯を磨く。鼻歌は今も健在で。
いつもより多めにうがいをしてみた。


ケータイを開いて誘う相手を選ぶ。
アドレス帳は○✕で埋め尽くされていた。
これは名前なのか、相手の顔も分からない。
「…」

電源を切り、ケータイを床に投げつける。
電池パックが外れた。


鼻歌は今も健在で。

鼻歌

鼻歌

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-04-11

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