天使狩人 3
前回と同じです。
天使狩人……見殺しにした人でなし……と、恵の頭の中では認識されているが、実際は違った。
『脅威である天使から安全を勝ち取り、我らを生かしてくれる戦士』
平和世界での常識だった。
本当は違う……。
人を見殺しにする人でなしだ…。
学校でも、どこに行っても天使狩人は崇められている。それを教える奴等は、天使狩人でもないくせに我が物顔で言う。
「天使狩人は偉大な戦士なんだ。だから、感謝しなさい」
いつも何処でもそれを言う。洗脳されているみたいだ。誰も天使世界を見たことない奴等なのに……。知らない奴等なのに……。どうして我が物顔ができる!!?
毎回その言葉を聞くたびに怒りが沸く。感謝しなさいって……てめェらは感謝してんのか? 毎回そう思う。
一度興味本意で聴いてみたことがあった。
「私たちは随時感謝しております」
はっ嘘をつくなよ。もし、本当だとしたら何故、無表情で棒読みなんだよ!?
くだらない
くだらなかった。聴いておいてくだらなかった。また、自分が情けなかった。何故なら、自分も行動で表せなかったからだ……。
「天使狩人は偉大な戦士なんだ。だから、感謝しなさい」
また、聞こえた……。今度は教師らしかった。グッと拳を握りしめた。そして、聖人面した奴に正拳を殴り込んだ。
「お前らみたいにいっつも決まった台詞しか聞けねぇなら、バカみたいだ。うせろっ」
こんなことをしたのは初めてだった。怒りに身を任せたのだ。とても心地良かった。初めて行動できた。初めて自分を出せた。
赤いサイレンが聞こえてきた。どうやら御迎えのようだ。
俺は悪くない
心に刻んだ。そう、悪くないのだ。事実を体で伝えただけ……悪くない。
警官に手を捕まれパトカーに乗せられる。
「うわっ! 酷い……」
最後に耳に入ったのは、警官が教師の具合を見て言った言葉だった。
パトカー内は静かだった。恐ろしいぐらいに……。警官も喋らずただ、エンジン音が響いていた。
やがて、警察署ーーではなく……茶色をした裁判所についた。そして、目隠しをされた。
何を裁くのだろう? 不思議に思ったが、声には出さなかった。出せなかったのだ。怖くて……。
椅子に座らされ、目隠しをとられた。一瞬目が眩んだがすぐに馴れた。顔を隠した人が目の前にいる。周りには大勢の人……。
「これより判決を行う。異論は認めない」
上等だ。悪くないのだから。
「一つ、現役教師の殺害……」
ちょっと待て、殴っただけだ。殺してはない……。
「少し待てよ!」
「異論は認めない」
すぐに黙らされた。ふざけるな!
「二つ、天使狩人の評判を落としたことについて……」
は?
「だって天使狩人は人でなーー」
「異論は認めない、以上二点。特に後者に関して長峰恵を罪とする!」
罪? いや、その前に事実を言っただけだろ? なぜ罪になる? そもそもお前らが悪いんだろうが! お前らが天使狩人を崇めるからこうなったんだ!
肩を捕まれた。そして、足を持たれる。
「ふっ……ざっ……けんな!!」
反抗も虚しく、一人の拳で鎮圧された。その拳は重かった。
「何が悪くない、だ……現実は違うだろ? 悪いのはお前で、正しいのが俺たちだ!」
最後に聞こえた言葉が心に刻まれた。
天使狩人 3
まだまだ続きます。