文恋2

結菜と太陽、会う!


……ああぁぁぁ!!!


なんてことを約束しちゃったんだろう!

後悔はしてない、会ってもみたいと思う、だけど!

知らない人だ、もし…
非常識だよな…
もうそろそろ話してから3か月くらいになるけど、あぶないかもしれない…

いろんなことが頭の中をぐるぐる、ぐるぐる……


約束は、土曜日だった。
2人はほどほどに近い県に住んでいた。

「〇〇駅に11時、集合な
近くに大きな金の時計があるみてぇだし、その下で」

それはお互いの住む場所から1時間ほどの駅だった。

ぐるぐる…ぐるぐる…



「ぁぁああ、もうっっ…!!」


結菜は大きな声を出した。


「女は度胸だっっっー!」

もしも、もしも仮に太陽が変なおじさんだったりしたら、気づかれないうちに逃げよう!

それからもっと大事な…


「お、女磨きーー!!」
(※彼女はテンパっていますご容赦下さい)



太陽も結菜の不安を分かってくれているらしかった。
「結菜ごめんな、女の子だし不安だよな。」

「うん、ちょっと。でも好奇心が勝っちゃう!」
なんかことさらデートみたいではないか。


「そっか」
ちょっと太陽が笑ってる。

「じゃー俺も一肌脱ごうかな!」

どういうこと?

「ネズミ夢ランドで買ったネズミカチューシャ、つけてってやるよ」

「ほんとですかぁ!!」

「うん、それなら大抵の人が見るだろ?
結菜がこっち見ても多分結菜だってわかんないし。
でも結菜にはひと目でわかるだろ?」

「…ありがとう」

「どういたしまして?
言っとくけど11時ぴったりにしかつけねぇからな笑」

この優しさにかけてみよう、そう思った。



当日


白くフワッとした短いワンピースに存在感のある淡色のネックレス、薄いストッキングを履いて、靴は淡いピンクの、透け感のあるスニーカーだ。
軽くお化粧もした。
少し長い髪の先をアイロンで内巻きにカールさせる。あくまで、ナチュラルに。

うん、可愛いくできたかな。
気合いを入れる。

「リュックよし、お財布よし、ポーチよし、携帯よし……」

手は空いていた方がいいかな、と思って小さいオシャレ用リュックにした。

よし。

「ああっもうこんな時間!!」
いってきまーす!

慌てて飛び出した。


予定より出発は遅れたけれど、思っていたより早く着いた。

10時50分。あと10分か。
金の時計の下にはたくさんの人が集まっていた。
(うわぁ、見つけられるかな)

あたりはカップルや友達同士で待ち合わせする人でごった返している。


どんっ
「あっ、すみません」

リュックが隣にいた人に当たってしまった。

「いえ、こちらこそ」
お兄さんは軽く会釈をして返した。

かっこいいなあ…
横をチラッと見ると彼も辺りを見渡している。
彼もきっと彼女と待ち合わせているのに違いない。

細身の腕時計を盗み見る。
あと5分…

結菜も辺りを見渡した。

ネズミのカチューシャ…



5.4.3.2.1…ポーン、ポーン…

金の時計が11時の合図を打ち始めた。

ネズミのカチューシャ、ネズミのカチューシャ…

周りを見渡しても…

「え、どこ??」

金の時計の反対側も見渡したが、居なくないか??
ひとが多すぎてわからないのかもしれない。

ふと、視線を感じてすぐ隣を見ると、さっきのお兄さんが目を見開いてこっちをみている。

頭には……

「あ、ネズミのカチューシャ!!!」

ばっ!
お兄さんは急いでカチューシャを外した。

「あっ、、え、えっと……」
気まずさで結菜はもごもごした。

「ゆ、結菜?」

「はい、結菜といいます」
自己紹介3度目だっ、と思いながらペコリとお辞儀

「太陽といいます」
相手もお辞儀をした。

…きっとはたから見たら変な絵ヅラだったに違いない。


あとから太陽に聞いた話だが、結菜のことを見ていたのは「すみません」の声が電話の声と似ている気がしたから、なのだそうだ。

それに、隣で「ネズミのカチューシャ…」と何度も呟かれて相当驚いてしまったようだ。

「声かけてくれたらよかったのに」

そう言ったら、

…恥ずかしかったんだよ、わかれよ

とそっぽを向いてしまった。



そのあと、太陽は結菜をつれてファミレスに言った。

「ここならゆっくり話せるっしょ」

「お腹も空いたしね!」

メニューを開いて2人で眺める。
向こうからいい匂いがながれてくる。

「うーーん」

「いま何で悩んでる?俺はハンバーグか…」
「オムライスっ!」

こっちを見て、太陽はまたヘヘッと笑った。
「俺もおなじ」

「じゃー私オムライス頼もうかな」

「じゃー俺はハンバーグにする」

頼んで、しばらく沈黙…

「…結菜さ」

沈黙を破ったのは太陽だった。

「可愛い」

…ググッ!
驚きのあまり喉がなった。

「目ぇくりくりしてるし。
なんか、いい匂いする笑」

「うわぁ、それは変態発言だなぁお兄さん」
褒められて嬉しくて、ちょっと下を向いてそう言った。

「太陽も、服とか、よく似合ってると思う」

ネイビーのジャケットを白黒の横縞Tシャツの上に羽織り、白い細身のパンツをはいている。
パンツには銀のチェーンがついていた。

顔立ちも整っていて、爽やかな大学生そのもの…


簡単に言うと、カッコよくて、
「…ストライクだよ」

太陽にも少し目を伏せた。

心なしか赤くなってるきがする。

か、かわいい、、!

「そういえば身長何センチあるの?
結構あるよねー、175㎝くらい?」

「惜しい、178」

高いなぁ〜!

「結菜は?どれくらいあるの?」

「当ててみてよ」

「ひゃくー、、130くらい?」
そしてヘヘッと笑う。

「もーっ、そんなに低くありませんよーっだ」
べろを少し出してあっかんべーした。

「156㎝!」

すると、太陽が手で顔を抑えた。

「…?どうした?」

「可愛すぎ」

撃沈……結菜はテーブルに突っ伏した。

「ねぇ結菜」

うん?

体制はそのままに、上目遣いで太陽を見る。

「今日食べちゃいたい、結菜のこと」

な、なんて答えたらいい??
太陽のこと、好きになってる自分がいる
いいよ、って言ったら軽い女になっちゃうのかな

……

「お待たせしましたぁ、ハンバーグとオムライスです」
お、美味しそう笑

「じょーだん」
太陽は笑った。
「とりあえずお腹めっちゃ減ったし、食べよっか!」

「えぇ、冗談なの?考えてたのになぁー」

え、まじでっ?!

ちょっと攻めてみたら慌てたのが面白くて、オムライスを得意げに頬張った。

半分こし合ったオムライスもハンバーグも、美味しかった。



くもりだった空からはだんだん雨が降ってきて、道路は湖みたいになった。

文恋2

次回、どうなる……??
文恋3に続く!

文恋2

じわじわ縮まる2人の距離が…… そしてハプニングも起きて?!

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2016-04-07

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