来迎の日に

目を開くと無機質な四角形 春の足音がすぐそこに来てる
あの木に咲く桜が舞い散る頃 まだ声を出して笑えるかな

少し痩せた背中を擦り心が痛む こんな風にしたのは自分だから
平気なフリをして振る舞うけれど 毎日見る目が赤くて辛いんだよ

遺された時間はきっと少なくても 君と歩んだ日々に勝てるわけはない
ただ愛しい君の頬を流れ落ちていく 涙さえ拭えなくなるのが怖かったんだ

無敵な自分を誇る人生だったけれど 終焉の幕は呆気なく引かれたものだ
大好きだったあの祭りも観れず 君のその笑顔さえも護ることが出来なくて

ついにやって来た最期のサヨナラ 沢山の涙で今夜は雨が降りそうだな
遺していくことをどうか許して欲しい 恨み言なら幾らでも聴くから

全て燃え尽きて魂に還る 高い空を見上げると後ろ髪強く引かれるんだ
崩れ落ちそうな君を支える役がいない それが自分だけの使命だったのに

見えなくても良い 聴こえなくても良い
ただ忘れないで共に過ごした日々の記憶を
自分にとって誰よりもかけがえのない存在だったと誓えるよ
もう泣かないで良い 不安も心配も要らない

ただ穏やかに時間を過ごしてから ゆっくりしてからコッチでまた逢おう
何も言わずに最期まで不器用で 愛の言葉ひとつ言えなかったから
また逢えたら 君に此処で逢えたら
その時は… きっと…

来迎の日に

来迎の日に

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-04-03

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