短歌1

「またいつか」 曇ったガラスに書いた文字。そっと消えてく。二度と会えない。


幽霊で君の不在を埋めている。おかしくていい。まだそばにいて。


闇の中、不眠症の心臓が目を覚ましてる。怖い。怖いの。


べっとりと甘く腐りし恋心。恋の屍骸は火にくべて焼け。


ほどかれた、赤き女の後ろ髪。黒く流るる怨念の川。


ギシギシと空気を軋ませ降り落ちる、悲鳴にも似た雪の降る音。


冷やされて青く凍った薄い空。真白き雲が空を砕いて。


流れない涙の分だけ散らばった、壊したガラス、壊れたこころ。


愛さえも差別につかう世界なら、創りなおそう、神を殺して。


動き出す時間を刻む歯車の音が聞こえる。胸打つ鼓動。

膝かかえ、凍える夜に聞く風は、叶わないよと。叶わないよと。

揺らめいた心の影を土足にて、踏まれて止まる影踏み遊び。


悪意なく言葉で人を刺し合って、見えないままに街は血まみれ。


キラキラと輝く物を集めよう。カラスのように黒い心で。


太陽に白い素肌を反射させ、空に溶けよう夏の僕らは。


愛情を石のかわりに積み上げる。賽の河原で。愛されたくて。


花言葉、思案にふける日溜まりの、風に揺れるは君という花。


噛みしめた唇割れてこぼれてく、血がなぞるのは僕の非力を。


誕生日、迎える数のいつの間に、僕はこんなに大人になって。


散り桜。ふわりふわりと誘われて、春の嵐は桃色の風。

切り裂いた手首の溝を流れる血。神の不在を私は憎む。

去りし冬。名残を惜しむ残り香の、降りて滅びる四月の雪。


生娘の心になりて狂おしく、一途に燃ゆる憎悪の炎。


忘れられ、二人のそばで泣きじゃくる、『愛』という名の小さな天使。


神無月。 神様の無い夜だから、何も言わずにただ抱き締めて。


静けさをまとって落ちる白い羽。眠れぬ夜に降り積もる雪。


死んでいく。残す言葉もないままに。生まれ変われぬ人よいずこへ。


画用紙に置かれた線のつたなさは、二人の日々の生きるつたなさ。


煙草からけぶる紫煙にたゆとうは、吐き散らされた魂の声。


静止した時間の中に閉じ込めて奪い去りたい。君よ、我が花。

あなたへの期待が声を奪ってく。人魚姫なら泡と消えるのに。


あやまちを、過去を、弱さを、せつなさを。封じた心、パンドラの箱。


安らかに眠る子供に捧ぐ花。『無垢』なる意味の、花よフリージア。


牙立ててケモノの武器を噛みちぎる。爪に残るは人の醜さ。


日溜まりのシーツの海で抱き合って、泳ぐぼくらは二匹のイルカ。


重力があって本当に良かった。きみの重さを胸に抱いてる。


薬はもういらないから毒をくれ。心を吐くほど強い毒を。


恋をしてガラスの靴を置いていく、少女の素足はかくも美し。


薄墨を溶かした空から雨が降る。雲光らせて龍の鳴く声。


日々の中、知らないキミを見るたびに、初めてキスしたあの日に帰る。

飽きられて抱かれなくなるぬいぐるみ。ガラスの目玉がほろりと落ちる。


悲鳴さえあげられぬまま朽ち果てて、引き裂かれしは巨木の亡骸。


きみのいた季節はすぐに過ぎ去って、今度町にはサーカスがくる。


ママゴトの父親のまま老いたれば、子を持ちてなお悲しき遊戯。


死んでもいい、思える夜は星さえも掴めるような。キミと二人で。


「幸せよ?」 言った言葉に影を見て、心の羽が一枚落ちる。


恋をして心に生えた白い羽 。すべて抜けたら恋の終わり。


別れたら会えなくなると知ってれば、キミに恋などしなかったのに!


水晶の蝶がふれあうかのように、そっと近づく初めてのキス。

恋心、もしも明日に死ぬのなら、きみの袖ひく娼婦になりたい。


君よ花よ、枯れゆく頃にまた会おう。色が二人をまどわさぬ頃に。


麦藁帽、風に連れられ飛び去れば、少年の日も共に帰らず。


ブランコに座る少女のゆれる足。誰待つものぞ、その赤い靴。


太陽が少女の胸を甘くする。真夏を吸ってふくらむ果実。


船着場。帰る漁師を待ちわびて、猫が居ならぶ「おサカナまだかニャ」


悲しみは、ふくらんでいく水風船。あなたの針でわたしは割れる


すくいたい。思えど網は薄すぎて、金魚すくいの我が手の無力。


この場所にいたくないから矢と化して、触れるすべてを突き抜け去りたい。


知恵の実も食べられなければ腐るだけ。恋の林檎が赤くしたたる。

蝶を焼く、焚き火みつめる少年の、誰にも届かぬ翼なき歌。

はじめてのタバコが胸に苦いのは、背伸びしきれぬ少年の罪。


愛されて、愛されるほど真っ黒に、心焼かれる太陽の愛。


夜具の中、きみの不在を押し殺し、思い知るのは唇の孤独。


晴天の川原にごろり寝ころんで、大口あけて青空を飲む。


耳の中、住んでいるのはアフリカ象。鳴き声聞けば旅にゆきたし。


優しさに戸惑う心、ほどけずに、纏いしトゲはサボテンの恋。


恋愛は甘くて痛いイチゴ味。ケーキに仕込んだカミソリの刃。


青空をめくった裏は赤の空。誰も知らない涙の血色。


雨上がり、青空映る水たまり。キスするように空を飲む犬。


 

きみの持つ弱さを利用し甘えてる(好きです。ごめん。そばにいさせて)

「いま人を殺してきた」と言いそうな顔をしてるよ? 恋をした顔。


静脈を流れていくのは黒の歌。使われつくした血色の歌。


くたびれてしわしわになった心です。ゴミ捨て場にでも捨ててください。


肉体も心もここにいるけれど、魂だけが居場所のない夜。


言葉ならゆっくり効いてくるけれど… 。待ってられない、熱で教えて。


葉ですからドレッシングでいただきます。飲めない言葉に涙をかけて。


殺虫剤。きみが殺したその時にわかったんだよ恋の結末。


殺恋剤。無慈悲に浴びたこの恋は、ジタバタしてからあおむけで死ぬ。

短歌1

短歌1

「生きていく」 その意味をまだ知らぬまま、きみの隣でぼくは生きてる。(──短歌)

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-04-03

Public Domain
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  1. 「またいつか」 曇ったガラスに書いた文字。そっと消えてく。二度と会えない。
  2. 膝かかえ、凍える夜に聞く風は、叶わないよと。叶わないよと。
  3. 切り裂いた手首の溝を流れる血。神の不在を私は憎む。
  4. あなたへの期待が声を奪ってく。人魚姫なら泡と消えるのに。
  5. 飽きられて抱かれなくなるぬいぐるみ。ガラスの目玉がほろりと落ちる。
  6. 恋心、もしも明日に死ぬのなら、きみの袖ひく娼婦になりたい。
  7. 蝶を焼く、焚き火みつめる少年の、誰にも届かぬ翼なき歌。
  8. きみの持つ弱さを利用し甘えてる(好きです。ごめん。そばにいさせて)