月光
海月から読んでいたたきたいです。。。
人からもらえるものなんて、たかがそんなもの。
優しさも愛も友情も、気分によっては押し付けと同情に変わる。
あの人は、そう言っていなくなった。
今まで確かに目の前にいたはずなのに。
―――すべては、黒猫の鳴いた満月の夜に始まった。
あの日から、すべてがリセットされた。
「んんーっ気持ちイイーっ」
綺麗な長い青い髪を風になびかせて、一人の少女が大きく深呼吸をした。
目の前には、ずっと昔からそこにあったような、古い小さな家。
少女は今、この家ごと引越してきたところだ。
この少女の仕事――――魂の記憶が移ったもの≪遺品≫を、正しい持ち主に返す――――は、この家でおこなわれる。
(が、この店の存在はほとんど知られていないため、ほとんどの≪遺品≫が店の中で山をつくっている。)
店にごちゃ混ぜに置かれた≪遺品≫を見て、少女は悲しげな表情になった。
「お客が来ないと収入がないんだけどなー」
すると、どこからともなく強い風が吹き、少年が現れた。
「呼んでないけど?」
少女が冷たく言い放つと、少年はぶつぶつと小声で何か言って、家の周りを見渡した。
「次の仕事場所はここかー。。。・・・・・・何もなくね!??こんなんで客増えるのか!??」
絶句する少年に向かって、少女はニコッと笑って見せた。
その顔が、どんどん不気味に歪んでいく。
「ボクに口ごたえするの?えらくなったねぇ?」
そして、とどめ。
「消し飛ぶか、爆発するか、眼球からえぐられていくのか、どれにする?」
少年は冷や汗を大量にかきながら、作り笑いをした。
「気が変わった。まだ存在していたいんだ。」
少女が今度は天使のように笑った。
「ん。よろしい。」
そして、ものがごちゃごちゃ積まれている店の中に入ると、床に適当なスペースをつくって座った。
指を ぱちん、と鳴らして手本に分厚い大きな本を出現させると、おもむろにページをめくり始める。
《あの人》が残したこの本―――――――
それは、少女が存在し続けるための『力』が示されている、大切なもの。
――――――――――― 魔法 ――――――――――――――
それを使って、少女は人間ではなくなった。
少女はきゅっと本をだきしめた。
それを見て、少年は面白くないように顔をしかめた。
「俺だって、いる。」
そう言ったところで、店のドアが静かに開いた。
「客だ」
玄関に立っていたのは、やつれた女性だった。
長い金髪はもう何日も手入れされていないのか、ぼさぼさになり放題で、元は高級そうだが汚れた赤いドレスを着ていた。
「いらっしゃいませ」
にこやかに少女は笑った。
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月光