種

よく躓くんだよ
小さな小石に
小さな何かに
何も無いはずの道端で
何も無いはずの人生で

だから
だから躓いた度僕のポケットに入っている種をその場所に蒔いていったんだ

僕が進んだ証拠になればいい
同じ場所には種は蒔いてはいないから
多少なりとも進めている証拠でもあるはずなんだ
そう信じている

どのくらい経っただろうか
ふと後ろを振り返ってみると
そこには

見渡す限り一面に花が咲いていた

形も色もばらばら
それでいてきれいに咲いている花なんてそんなにもない

何も無いはずの道だと思っていたけど
何もないはずの人生かと思っていたけど

それは全くの間違いで
確かに少しずつだけど前に進めていて
それが証明されたようで口元がにやけてしまったけど

どうせならもっといろんな花を咲かせてやろう
まだ種は尽きることを知らず
ポケットから溢れるほどあるんだ

前を向いたらまた何もない道だったから
さっそく種を蒔くために

僕はまた歩き出した

確かにこの足は前に進んでいる

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-03-30

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