時の足跡 ~second story~ 1章~5章
Ⅱ一章 ~ヒデさん~
幾つもの時の記憶は、変わりゆく季節に足跡を残して・・、迷い込んだ記憶の闇に、そっと繋いでくれた手が、
時の足跡に明かりを灯した、握りしめてくれた手は、涙で閉ざしてた心に僅かな灯りと沢山の愛の温もりを与えて・・、
その手のぬくもりの中で育んだ愛が、小さな命をやどしてた・・・、
慌ただしく始まった朝は・・・、
「亜紀ちゃん~俺も一緒に行くよ、一人じゃ心配だから、いいだろ~?」って言いながらヒデさんは、朝から落ち着かない・・・、
今日は病院での検診日・・、うちのお腹に小さな命を授かって、もう四カ月が過ぎてた、うちは一人で行くと言ったのに、
ヒデさんはどうも心配らしくて・・・、
「うん、いいけど~でもお店閉めちゃうことになるのに、いいの~?」
って言うと、ヒデさんは、
「構わないさ、一日くらいどうってことないよ」って言ってヒデさんは早くも支度を済ませてた・・、
少し呆れながらも、二人で病院へ行くと、病院での診察が終わって出てくるとヒデさんは、退屈だったのか外で伸びをしてた、
「ヒデさんお待たせ、終わったよ帰ろう~?お疲れさま?」って言うと、
少し苦笑いしながらヒデさんは、
「ああいや~?疲れはしないけどさ・・、何て言うか思った以上に退屈だな~ってさ、ははは~」そう言って笑い出してた、
それから二人で帰り道を歩きだしたら、前から歩いてくる男の人に、声をかけられた・・、
「あれ?ヒデ~?ヒデじゃないのか~、俺だよ俺、覚えてるか~?」って言われた、
するとヒデさんは、
「あっあ~ああ淳、淳か~?」って言うと彼は「そうだよ~、久しぶりだな~?元気そうじゃん、今もまだ店やってんの?」って言った、
するとヒデさんは、
「まあ~な、お前は、今何やってるの?」って聞いたら彼は「ああ~俺?まあ~色々だ・・・」そう言ってうちを見た、
すると彼は
「ええっと、彼女?」って言われて、ヒデさんが、「俺、結婚したんだよ、俺の奥さん、亜紀だ」って言った、
「あっ初めまして、亜紀です、宜しく・・」って言うと、彼は、
「ああいや~こちらこそ?お、おいヒデ?可愛い奥さん見っけたな~今度寄らせて貰うよ、結婚祝いしようぜ」って言った、
でもヒデさんは、何だか少し不機嫌な顔で、
「そんなことはしなくていいよ、じゃそろそろ行くよ、これから行くとこあるからさ、悪いな」って言うと無言のまま
うちの肩を抱いて歩き出した、
すると彼は
「なんだよ~ヒデ~冷たい奴だな~、相変わらずだよな~まったく、まあ~いいや、又な~」そう言って去って行った、
帰り道を少し怖い顔して歩くヒデさんに、うちは声がかけられなくて無言のまま、店に帰ってきた、
ヒデさんのこと、うちは何も知らない、いつも話す事はうちのことばかりで、そんなヒデさんは自分の事に触れようとはしない・・・、
(うちには言えないのかな~ちょっと寂しいかも・・)そんなこと考えてたら、ついため息が漏れてた、
するとヒデさんが、
「亜紀?どうした~?疲れたのか?何なら部屋で少し休んでなよ、な?」そう言ってうちの顔を覗き込んできた、
ヒデさんの事、気になりだしたら少し知りたくなって、思い切って聞いてみたくなって・・、
「あたしは大丈夫、疲れてないから、ねえ~ヒデさん?あたしね気づいた事があるんだけど・・」って言ったら
ヒデさん少し驚いた顔して、
「何、どうした~?なに?」そう言ってうちの前に椅子を持ち出して腰かけた・・、
ヒデさんの動作があまりにも唐突過ぎてうちは固まってしまった、するとヒデさんは「亜紀、なに?言ってくれ、ちゃんと聞くよ・・」
って言われて、
「そんな改まって聞かれる事じゃないんだけどね?今までずっとあたし、自分のことばかりで、気づいたらヒデさんの事何も知らずに
居たなってちょっと聞いてみたくなったんだけど、聞いてもいい?」って言ったら
ヒデさんは、
「そうだったっけか、そうだな?自分で言うのもなんだけどさ~?俺、不器用でさ?自分の事上手く話せないんだ、ごめんな?あっそだ、今日会った
あいつ、淳一って言うんだ、まだお袋が生きてた頃によく店に食べに来てたって言うだけの知り合いみたいなもんだな?俺には、友達って言っても、
みんなこの街から出て行っちまったからさ~今は誰も残ってないんだよ、俺にはお袋が居たから、まあしょうがないけどな?
あ~ごめん、詰まんない話だな、けど亜紀?俺は俺だ、これからゆっくりお互いに知って行けばいいと俺は思うよ、そうは思わないか~」
って言われた、そうかもしれない、
「そうよね?あたし何焦ってたのかな、ごめんね?・・」って言ったら、ヒデさん、「なにも亜紀が謝ること無いよ?悪いな?」って笑ってた。
それから一周間が過ぎた頃、サチから葉書が届いた・・・、
「ヒデさん~サチから葉書が届いたよ~」って言うとヒデさんは、「えっほんとに~何だって~亜紀、読んでくれよ~」って言われて、
カナ、ヒデさん、
お元気ですか、早いもので此処へ来てから、三ヶ月が経ちました、
なんとか此処の生活にも慣れてきたところです、でもやっぱり、ふたりに逢えないのは、
少し寂しいものですね・・・、と言っても、実はわたし、後ひと月したら、里帰り出来そうなんです、
だからその時は、また顔を見に行きたいと思います・・、と言う事で、カナ~ヒデさん、その時は
お邪魔しますので宜しく・・・、でわそれまでお元気で、逢える時を楽しみにしてます。 サチ・・。
サチらしい文面になんだか可笑しくもなったけど、でもサチに逢えるんだって思ったら、つい嬉しくなって笑みを浮かべたら、
ヒデさんが、
「亜紀、嬉しそうだな?そっか~もう三ヶ月経つんだな~?さっちゃん元気そうで好かったよ、来たときは、ふたりで持成してやろうな?」
って言ってくれた。
そして店のお客も減りだしてきた昼下り、うちはヒデさんの気遣いで居間で休ませて貰った、
そんな時、店にヒデさんの知り合いって言ってた淳って人が顔を見せた、
「よう~ヒデ?来ちゃったよ、あれ?奥さんは?」って言いながらテーブルに着いた、でもヒデさんは「いらっしゃい・・」
ってだけで返事もしなかった、すると彼は、
「まっいいや、それよりおかみさんはどうしたんだ~?顔が見えないけど・・」って言われてヒデさんは、
「死んだんだ、去年にな、それよりどういう風の吹きまわしだ?今まで顔も見せなかったのにさ~」って言うと、彼は
「ああ~いや~久々に会ったら、たまには寄ってみようかなって思ってさ?それにおかみさんにも会いたかったんだけど、そっか~、
亡くなったのか~そりゃ悪かったな余計な事聞いてさ」
って言うとヒデさんは
「あ~いいよそんな事、気にすんな、それで淳、今何処に居んの?まだあのアパートに居るのか?」って言うと彼は
「あっいや、今は友達のとこに同居させて貰ってるんだ、前のアパートは家賃が高くてさ~、払いも追いつかなくなったからな~まあ前に
比べたら今のとこは家賃が半分ですむからさ~、あ~こんな話しはもううやめよ~そう言えば奥さんはどうしたの?顔見せないけど・・、
喧嘩でもしたのか~?」って言うとヒデさん、
「ああ、いやそんなんじゃないよ、少し休んでるんだ、妊婦だからな、」って言うと、彼は
「へ~そっか、それは仲の宜しい事で、それじゃ~しょうがないか、なあ~ヒデ?今度飲みにでも行かないか?久しぶりにさ~?な~
いいだろ~な?」って聞いた、
するとヒデさんは、「そうだな、考えとくよ・・」って言うと、彼は
「ようし!期待してるよ?さて俺は帰るかな、どうもな?又来るよ、ごちそうさん、じゃな」そう言って帰って行った。
それから一周間が過ぎた今朝、昨夜から降りだした雨が、明け方には次第に勢いを増してきたら大粒の雨に変わった、
こんな日はお客の出入りも減って、寂しく感じる店の中で・・、ヒデさんは、椅子に腰かけ頬づえつくと、ため息漏らしてた・・・、
そんなお昼を過ぎた頃に、いきなりヒデさんが、「今日は店じまいにするか~?」って言いだした、
でもそんな時またあの人が店に入って来て・・・、
「こんちわ~よう!ヒデ、また来たよ、こんにちわ?えっと亜紀さん、だったかな?」って言うとテーブルに着いた、
するとヒデさんは、
「いらっしゃい・・」って言ったきり、無言だった、
すると彼は、
「なあ~ヒデ?考えてくれたか~?」って言った、するとヒデさんは「何を・・」って言った、
すると彼は
「いやだな~忘れたのかよ~飲みに行こうって話したろう?お前が考えとくって言うからさ~俺は期待して来たんだ、そりゃないだろう~」
って少しムキニなってた、
するとヒデさんは
「あ~あの話し~?いや~悪いな、ごめん俺行けそうにないんだ、ほんと悪いけど・・」って言うと彼は
「あ~亜紀さんか?そっか~焼けるね~?まっしょうがないか、いいや残念だけど、ねえ~亜紀さん?こっち来て坐んなよ、話ししようよ、
どうせこんな天気だ、お客も来ないんだろ?だからさ~・・」そう言ってうちに、手招きしてきた、
うちはどう応えていいのか戸惑っていたら、ヒデさんが
「淳、ここは飯屋だぞ、食べに来たんじゃないのか?」
って言うと彼は、
「いや~お前の返事を聞きに来たんけどお前に断られちゃったしさ~俺も暇になんだよ~いいじゃん、話しぐらい、な~亜紀さん?」って言った、
するとヒデさんは、
「俺が相手してるんだからいいだろ・・」って言ったら、彼は「お前の相手だけじゃつまらんだろ~?」
ってなんだか険悪な雰囲気になってきてうちは怖くなった、
ヒデさんの顔が険しい顔になってくのが分かる、ヒデさんのそんな顔、うちは初めて見た、そしたら此処に居たくなくて、
「あっあの?ごめんなさい、あたしちょっと気分悪いの、すみません」って、うちは部屋へと逃げた・・、
これで好かったのかなんて分からない、でもうちが居る事が、ヒデさんを追いこんでいく気がして、あの場所に、居るのが怖かった・・、
それからどれくらい経ったんだろうって、窓の外を見たら、あんなに降り続いてた雨は小降りになって道行く人の数も増えてた、するとその中に
見えたあの人の後ろ姿に、ヒデさんの顔が浮かんできて、うちは店にと階段を駆け降りた、その時ヒデさんが、
「亜紀~?危ないよ、走らなくていいから、ゆっくり降りな~?・・」って声をかけられた、でもうちは、つまずきそうになって
ヒデさんに抱きとめられてた、するとヒデさんに、
「もう危ないな~?亜紀大丈夫か~?転んだりしたら一大事だよ・・」って怒られてしまった、
「ああ、ごめんなさい・・」って言うと、ヒデさんは唐突に笑い出して、
「亜紀はここんとこ謝ってばっかりだな~?」って言われて「あっごめんなさい、あたしが・・」って言いかけたらヒデさんがクスッと笑って、
「ほら~また言った~亜紀~?もう謝るのはやめだ、な?俺のことであまり神経質にならなくていいよ、亜紀とずっと一緒だ、
亜紀が俺を嫌いにならない限りな?だからもう謝るな、な?」って言われて「分かった・・」て言うとヒデさんは、笑顔になって、
「ところで亜紀?何を慌ててたんだ~?」って聞かれてうちは思い出した、
「ねえ、あの人は帰ったの?あたし逃げちゃったから、ちょっと気になって・・」って言うとヒデさんは、
「そっか~、けど、亜紀が抜けてくれて好かったよ、あのままじゃあいつ帰らなかっただろうしな、だから俺も助かった、ありがとな?・・」
って、言われた、でも・・、
「それはあたしの言う事なのに、ヒデさんに礼言われたら、あたしが困るでしょう?・・」って言ったらヒデさんはまた、クスッと笑って、
「好かった、いつもの亜紀に戻ったな~」そう言って笑ってた。
Ⅱ 二章~親友~
一日降り続いてた雨が嘘のように晴れて、日差しが眩しく思えるほどに空は輝いて、空一面に青空が広がった、
そんな昼下り、客足も引いて来た頃にヒデさんに
「亜紀ちゃん、疲れたろ~?少し休もう~、な?」って言うと椅子を引いてくれてふたりで一緒に腰を降ろした、
そんな時、店にしばらく顔も見せてくれなかったアンちゃんが、「こんにちわ~ヒデさん、亜紀ちゃん?ご無沙汰~?・・」って入って来た、
驚いて立ちあがった時、うちは椅子を倒してしまったら、アンちゃんの方が驚いて、
「おっおい、亜紀ちゃん?そんなに驚くこと無いだろう~?久しぶり?」そう言って椅子を起こしてくれてた、
「アンちゃん、いらっしゃい・・」って言ったら、ヒデさんが、
「ほんと久しぶりだな~、全然、顔も見せ無いから、ちょっと気になってたんだけど、まあ~元気そうで好かったよ、亜紀、居間に行こうか?
靖、入んなよ?ゆっくりしてってくれるんだろ、な?」って言うとヒデさんは休業の札を表に掛けた・・、
それから居間に揃って腰を下ろした、
ヒデさんと一緒になった時、祝いに来てくれたアンちゃん、でもアンちゃんはあの日以来、顔を見せ無くなった、
ほんと久しぶりに顔を見せてくれたように思う、でも何処か元気がないように思えたアンちゃん、気になったけどでも何も聞けなくて戸惑ってた、
するとアンちゃんが、
「なんか、仕事中なのに悪い、すぐ帰るからさ?顔が見たくなってちょっと寄っただけなんだ、でも元気そうで好かった、亜紀ちゃん、
すっかり板に着いて来たって感じだね?いい顔になったよ・・」そう言って笑って見せた、するとヒデさんは、
「そんなに仕事は忙しいのか~?なんだかお前、見ない内に少し痩せたんじゃないか~気のせいかな?」
そう言ってヒデさんは心配そうにアンちゃんの顔を覗き込んだ、するとアンちゃんは、
「そんなこと無いよ、仕事は前から変わってないよ、ただちょっと他の事で色々忙しかったからさ、その所為かもな」そう言って笑ってた、
でもそんなアンちゃんは何処かいつもと違って見える、ヒデさんは、「そっか?」って言いながら少し考え込んで・・
「何か心配ごとでも有るんじゃないのか~?お前とはもう長いんだ、なにかあるならいつでも言ってくれよ?お前がその気になったら、
いつでも聞くからさ?そん時は遠慮は無しな?あんまり無理はするな?今日はゆっくりしてってくれ、な?」
って言うとアンちゃんが急に笑い出した、するとアンちゃん、
「あ~ごめん笑ったりして、でもありがと、俺、ヒデさんと知り合えてほんと好かったって思うよ、だからそれは今も変わってない、ありがと?
けどあの頃からヒデさん、変わってないよね?変な意味じゃなくてさ、真っ直ぐって言うか、それになんか無邪気って言うか、最高ですよ・・、
でも俺は大丈夫ですよ?ちょっと疲れてただけだから、心配させてすみません」そう言って笑顔を見せた、
でもヒデさんは、
「なんだよそれ~全然褒められた気しないんだけどな~?なんか全然嬉しくないよ、まあ~これが俺だからいいけどさ、けど、ほんと久しぶりだな~、
好かったよ顔見せてくれてさ~?」って言うと、うちの顔を見て、「亜紀?どうした~?」って聞かれた、
いきなりすぎて、うちが返事に戸惑ってたら、アンちゃんが、
「亜紀ちゃん?もしかしてヒデさんに虐められたの?」って聞いてきた、するとヒデさんが、
「おい~靖!何言い出すんだよ~お前は~?俺が虐める訳ないだろ~?」って文句言いだしてた、
こんなふたりの会話も笑顔も、久しく見てなかったようで少し嬉しくなった、もう此処には来てくれないのかなって少し不安にもなってたけど、
でもこうしてアンちゃんが顔を見せてくれたのはうちには何より嬉しい・・、だから、
「アンちゃん?お帰り?・・」って言ってみた、するとアンちゃんは、少し驚いてたけど、「ただいま・・」って言ってくれた、
何も言わなくても分かり合えたら、何も言葉にしなくてもそれだけでいい、それだけで十分だって思えた、だからうちは笑顔で返した、
「やっと帰って来てくれたんだ、ごちそうでも作るか?な~亜紀?そう言う事だから靖?今日はお前、泊まりだぞ、いいな?」
そう言って笑った、そんなヒデさんに、アンちゃんは何も言わず苦笑いしながら頷いてた、
その後アンちゃんは、ヒデさんに遅くまで付き合う事になって、お陰でうちは、アンちゃんと話す事は出来なかった、
それでも嬉しいって思える、いつまでもこんなふうに顔が見れたら、アンちゃんの笑顔が見られるなら、それだけでもいいって思えたから・・・。
翌朝、アンちゃんは、自分の事は、何も話さないまま帰ってしまった、でもヒデさんは、あえて聞くことはしなかった、
多分アンちゃんが自分の事は話してはくれないって分かってたように思う、でもヒデさんは、いつか話してくれるって信じてるのかもしれない、
そんな気がした・・。
それから二週間が過ぎた頃に、思いがけない人が、顔を見せた・・・、
「こんばんわ~ヒデさん~カナ~?ただいま~?帰ってきました~?・・」って言ってサチが顔を見せた・・、
「あ~サチ~?お帰り~」って言うとヒデさんは、
「よう~さっちゃんお帰り~?なんだ思ったより早かったな~?一か月くらいって言ってたのに・・」
って言うとサチは
「そのはずだったんだけど、色々都合が出来ちゃってさ、だけど早く逢いたかったから、わたしは嬉しいけどね・・」って笑顔を見せた、
「あたしも逢いたかった、さあ~入って~ね?」て言うと、サチは、
「うん、それじゃ、お邪魔します・・」って言いながら、うちを眺めて、いきなり「あれ?カナ~?もしかしておめでた?」って少し驚いてた・・、
「ああっうん、そうなんだ~?・・・」って言ったら、サチは、
「カナ~?やったね、おめでと?うわ~楽しみね・・!」って喜んでくれた、ヒデさんは、早くも店のかたずけを済ませて、
「さあて、これでゆっくりできるな、さっちゃん、今日は泊まっていけるだろう?そうしなよ?」ってちょっと無理維持してるようにも見えた、
でもサチは、
「やった~ありがとヒデさん、お言葉に甘えて一晩お世話になりますね?よろしく・・」・・だって、やっぱりサチには、敵わないなって思う、
するとヒデさんは、苦笑いしながら頭をかいて、
「ああ~大歓迎だよ、けどいつもながらさっちゃんには負けるよな~俺・・」って頭をかいて苦笑いしてた、
するとサチはクスクス笑いながらうちを見て、
「カナ~?ヒデさん、変わってないね?カナ幸せでしょう?」って言われて、うちは少し照れくさかったけど、
「うん、とっても、あっ嫌だな~サチ、いきなりそう言う事聞かなくていいの?さあ入って?」て言ったらサチは、ニコッと笑って、
「はいはい、御ちそうさま、ははは、カナが赤くなった~、変わらないんだねカナも、わたしは嬉しいからいいけどね、それじゃお邪魔!」
サチも変わらないままでうちも嬉しい、どんなに離れてたって、ずっと繋がっていけるって思えるから、うちの一番の友達・・・
サチが言ってくれた「親友」だから・・・。
居間に落ち着いた途端、サチはヒデさんの顔を覗き込むと、
「ヒデさん?好かったね願い叶って、わたし気になってたのよ?でも思ったより幸せそうで、好かった!おめでとう、ヒデさん?・・」
そう言って笑ってた、ヒデさんは照れくさそうに、
「心配されちゃったかな、ありがとな?嬉しいよ、そだ、処でさっちゃん、いつまで居られるんだ~?」って言うとサチは、
「あ~うん、春休み取ったの、だから一、二カ月は居る予定、そう言う訳で、宜しくね?」って言うと、サチが急に改まって
「あ~それでね?あの~お二人が好かったらなんだけど~?あたしに一日つき合って貰えないかなって思うんだけど、どうかな~って?
カナには無理させないようにするからさ、やっぱり駄目、かな?」って言った、ヒデさんは「別に構わないけど、亜紀どうかな?」
ってうちの顔を見た、
「えっああ、あたしは大丈夫よ?連れてってくれるのなら、ヒデさんさえよければだけど・・」って言うと、ヒデさんは
「あ~俺か~?俺は全然かまわないさ、亜紀さえよけりゃな?、それで何処に行くんだ~?」って言うとサチは
「う~ん、それは~内緒!」そう言って人差し指を口元に立てて、ニコって笑って見せた、するとヒデさんが、
「なんだよそれ~?まあ~いいか?それじゃ~明日にでも、行くとするかな?それでいいか?」って言うとサチは、
「あっほんと?好かった~それじゃ~明日!ありがと・・」そう言ってサチは嬉しそうに手を叩いて喜んでた。
Ⅱ 三章~命~
サチに誘われて訪れたのは、うちが育った町、お母さんのお墓へヒデさんと一緒になった報告に来た時、うちはまだこの町に、
何処か戸惑いを感じてた、でもいつか時がこの想いを和らげでくれるってそう願ってきた・・、
逃げてたうちにいつだって手を繋いでくれたサチと、怯えてばかりだったうちにいつも傍で支えてくれたヒデさんが居てくれる、
だから何時かこの町を受け入れる事が出来るってそう信じてきた、
そんなふたりが今のうちに気づかせてくれたのかなって思う、戸惑いより懐かしいって思える今の自分がいるから・・。
町に着くとサチは、
「ねえカナ~?もう大丈夫よね?この町から逃げる事ないよね?カナがわたしの前から居なくなった日から、わたしね?
いつかカナがこの町に来れたら自分の夢実らせて、カナとまた一緒にいられたらいいなって思ってたの、まあでも、もうカナには
ヒデさんが居るから一緒には居られないけど、でもカナとの思い出はこの町だから、形は変わってもわたしの気持ちは変わらない、
だからこの町にある場所を、カナに見せたいって思って来てもらったの、」
そう言ってうちの手を握り締めてた、
サチの想いがうちの迷いを変えたんだって想う、でもこんなにも暖かいサチの想いに、うちは返す言が葉見つからない、ただ
自分の無力さが情けなく思えて、今のうちに言えるのは「サチ?ありがとう~・・」ってそれだけ・・、するとヒデさんが、
「いいもんだな?幼馴染ってさ~、俺には無いものだから余計にそう思えるのかな~?羨ましいよ、さて、行こうか~?せっかくの
さっちゃんの想いの場所にさ?・・」って言ってうちの肩を叩いた、
サチは、うちの手を繋ぎり直して、
「カナ?行こう~見てくれるよね?・・」ってうちの顔を覗き込んで笑顔を見せた、そんなサチの笑顔に、うちは無力だけど・・、
でもサチの望んでいる事が、今のうちに出来る事なら、それでもいいのかなって思えた、
「うん、行こう~サチ?・・」って言うと、サチもヒデさんも笑顔を見せて、歩き出した・・。
そして辿りついた処は、サチの家から数軒離れた場所にあった、そこは、こじんまりとしてるけど、おしゃれな建物・・、
そこには小さな看板が立てかけてあって、その看板に、「あとりえ・幸」って書いてあった、うちはヒデさんは顔を見合せて・・、
「え~うそ~サチ、これって?まさかサチの・・・」って言うと、サチは、
「そう~、わたしの画廊・・、お父さんがね?出してくれたのお前ならやっていけるだろうって言ってくれて、本当は自分でって思ってたんだけど、
お母さんが口添えしてくれたみたいで、わたしが向こうに行ってる間に、ね?だから、カナに一番に見せたくて、実を言うとね?わたしまだ、
中覗いてないんだ?それで一緒に見てほしくて、だから、ねえカナ、ヒデさん、いいかな?・・」って言った・・、
「凄いよサチ?何だかあたしも嬉しい~好かったねサチ?・・」って言ったら、ヒデさんは、
「おめでとさっちゃん!是非見せてほしいな・・」って言うと、サチは少し顔を赤くして「ありがとう・・」って呟いてた。
それからサチは、持ってた鍵で扉を開けた・・、中に入ると、壁にサチが画いた絵が一面に掛けてあって、寮で見た絵も、それから、うちとヒデさんの
似顔絵も、まだ思い出に残ってる景色まで、一通り見終わるとサチは、
「此処までしてくれてたなんて、正直わたしも驚いたな、ねえ~カナ?いいのかな~わたしに、出来るのかな~、できると思う?」
って言いだして、
「何言ってるのよサチ?サチなら大丈夫よ?あたしが保証しちゃう?ねサチ?・・」って言うと、ヒデさんが、
「そうだよ、自信もてよ、さっちゃんなら出来るさ、そう思うよ?好かったな?」て言うとサチの肩を叩いて笑って見せた、
するとサチは、
「そうだよね、ありがとう、ヒデさん、カナ・・」そう言ってサチは満面の笑みを浮かべて、頷いた。
その後、帰る頃にサチが、
「あの、ヒデさん?わたしも店に、行ってもいいかな~?それとも~お邪魔かな?」って言いだして、ヒデさんは苦笑いしながら、
「構わないさ、なんだよ~お邪魔ってさ~?遠慮は無しだろう?なあ~亜紀?」ってうちの顔を見た、
「そうだよ~サチ?そんな事言わないでよ~、余計な気は使わないで、一緒に帰ろう~ね?」って言ったらサチは苦笑いしながら
「ありがと・・」って小さな声で呟いてた・・。
それから三人で、帰り着いた街は、ネオンが輝いてた・・、
駅から店へと歩き出したら、あの人に会ってしまった(もう会いたくなかったのに・・)彼はヒデさんを見ると、
「おっヒデ~?何一人、上手いことやってるじゃん!俺の誘い断ったくせにさ~俺も仲間に入れてくれよ~・・」って言いながらサチを見ると
ふらついた足取りでサチに絡みだした、
「君、可愛いね~?俺と飲みに行かないか~?ヒデはさ~つき合い悪いんだよ~、ねっいいだろ~ねっ?」ってサチの腕を掴んだ・・、
かなり酔ってるのが分かる,お酒の匂いが近くに居るだけで匂って、うちは咄嗟にサチって思ってた、でもヒデさんが、
「淳、やめろよ?彼女は、俺の事とは関係ないだろう~?・・」って言うと彼は
「何言ってるんだよ~、お前、奥さんが居るだろう~?二人も贅沢だろうが、欲張るなよ~?」て言いだして、彼は強引にサチの腕を掴んだ・・、
するとサチは「困ります・・・」って言うと彼は、「そんなつれない事言うなよ~な~?」って、サチの肩に腕を回した・・、
そんな彼をヒデさんは、彼の腕を掴んで、「やめろ~!」って言ったら、いきなり彼がヒデさんに殴りかかって来て、うちはヒデさんって
咄嗟に彼の腕に飛びついて、「辞めて~!」って叫んでた、
そしたら彼に思いっきり降り飛ばされて、うちは身体ごとブロックに打ちつけられた・・、
そんなうちに気づいたサチが悲鳴をあげて「カナ~!」って駈けだしてくるのが見えた・・、
でも、突然お腹に激痛がはしって動けなくなったらサチが、
「ヒデさん~ヒデさん~カナが~ヒデさん~助けて~」って叫んでた、うちは意識が遠くなった、ヒデさんの顔が頭を過ぎったけど・・、
ヒデさんの顔を見れずにうちは意識を失ってた・・・。
気がつくと、病院のベットにいた・・、隣を見たらサチがうちの手を握ってた、でもヒデさんの姿が見えなかった、
うちが見まわして居たら、サチが眼に一杯涙を溜めて、
「カナ?気がついたの?好かった・・」って言って泣いた、でもうちはヒデさんの姿が見えないのが気になって、
「サチ、ごめんね?心配かけて、あのサチ?ヒデさんは・・・」って聞いてみたけど、サチは黙ったままで何も応えてくれなかった・・、
そんな時ふいに、あのお腹の痛みを、思い出した・・、そしたら不安が巡って、うちは、手探りでお腹を触って見た・・・、
(えっいない?そんなこと無いよね、でも分からない・・)そしたら涙が零れた・・・、
そんな時、病室の扉の開く音がして、うちは思わず身を乗り出して見た、するとヒデさんが顔を見せた・・、
でもヒデさんの顔に笑顔が見えない、それに口元は少し切れて血が滲んでた、そんなヒデさんの眼は赤くて泣いてたかのようにも見えた、
(どうしたの・・どうしてそんな顔してるの、嫌だよ、そんな顔しないでよ・・)胸が痛くなった、そんなうちの傍へ来てヒデさんは、
「亜紀、大丈夫か?ごめんな、守ってやれなくて、ごめん・・」そう言ってうつむいてしまった、
ヒデさんがどうして謝るのか、うちには分からなかった、謝るのはうちなのに、そう思った時、うちの不安は確かなようにも思えた・・、
「ヒデさん?どうして謝るの?ねえ、どうして?可笑しいでしょ?謝らなきゃいけないのあたしなのよ?ヒデさん悪くない、あたしの所為だから、
だから謝らないで、やめてよ・・」
ヒデさんの悲痛な顔がうちの不安を大きくさせて、何を言いたかったのか分からなくなったら涙が溢れた、ヒデさんはそんなうちの涙を拭って
手を握り締めると、何も応えてくれずにただ坐り込んだ・・、
すっかり夜も更け出して来た頃に、うちは無理を言って、店へと帰って来た、サチには、
「無理しないで?」って言われたけど、でもうちはヒデさんの居る家に帰りたかった、ヒデさんの傍を離れたくなかった・・、だから帰って来た、
部屋に敷かれた布団へと寝かせて貰うと、サチが傍に付き添ってくれた・・、
「ごめんねサチ、あたしサチに迷惑ばっかりかけてるね、ごめんね?」て言ったらサチは
「何言ってるの~カナ?わたしそんな迷惑だなんて思ってないから、だからカナ?もうそんな事言わないで?・・」って言ってサチは泣いてた、
「ごめんサチ、ありがと?・・」うちはまたサチを苦しめたって思う、何時だってうちの事思ってくれるサに、ほんとうちは、無力だよね、
何も出来ない、そんな自分が遣りきれなくて、視線をヒデさんに向けてみた、でもヒデさんはただ、部屋の窓に頬杖ついて空眺めてるだけ・・、
そんなヒデさんの姿にいきなりサチが、
「ヒデさん~?お願いカナの傍にいてよ?ヒデさんが傍に居なくちゃ駄目じゃない、頼みますカナの事」そう言ってサチは、
うちに笑って見せると部屋を出て行ってしまった、
するとヒデさんはうちの隣にきて坐った・・、
うちが身体を起こしたら、ヒデさんが手を添えてくれて、「亜紀~、ごめんな?俺は・・」って言いかけて黙りこんでしまった・・・、
うちには分かってる・・、言葉を詰まらせてるヒデさんがうちには辛い・・・、
「ヒデさん?やっぱり赤ちゃん、もういないんだよね?あたしの所為、ヒデさん~、あたしが・・、あたしが赤ちゃん死なせたの・・、
だからヒデさん何も悪くないよ?悪いのはあたしだから、ごめんなさい、ごめん・・」
て言いかけたら、ヒデさんはうちを抱きしめて、
「そうじゃないよ亜紀、そうじゃないんだよ、俺が・・、いいんだ亜紀、もういいんだよ、亜紀の所為じゃない、ごめんな~?」
そう言ってうちを抱きしめたまま言葉を詰まらせた・・、
うちは気づいてたはずなのに、突きつけられたような現実は、うちの中で渦を巻いて掻き乱してた、どう受け止めたらいいのか分からない・・、
ヒデさんはうちを抱きよせて寄り添うように坐った、どれだけ、こうして居るのかさえ分からない、時が止まってしまったようにも思えた、
その時ヒデさんが、
「亜紀~?辛かったろ、ごめんな?亜紀の所為じゃないよ、だから自分を責めないでくれ、頼むよ、な?」
ヒデさんの方が、自分を責めてる、すべて自分だって思ってる、ヒデさんは、あの人のことも、サチを巻き込んだことも、一人で背負い込んで・・、
「ヒデさん、こんなあたしでもヒデさんの傍に居てもいいって言ってくれるの?赤ちゃん、失ったあたしでも、あたしの事愛してるって
言ってくれる?あたし、ヒデさんが好きよ?大好きよ?世界中で一番好きよ、だからあたし、ヒデさんを苦しめたくない、
ねえ~ひとりで抱え込んだりしないで、独りで背負ってほしくないよ?お願いだから、ねえヒデさん?・・」
って言っては見たけどヒデさんは何も応えてくれなかった・・、
ヒデさんの心がうちには見えないから、こんなヒデさん見たくない・・、苦しくて・・悲しくて・・、此処に居る事が辛くて、立ち上がろうとしたら
ヒデさんはうちの手を握って引き留めた・・、
「亜紀~?まだ無理はするなよ、頼む、此処に居てくれないか?・・」って、そう言ってうちの手を握り締めた・・、
言われるままにうちが坐ると、ヒデさんは、
「亜紀?俺も亜紀が世界中で一番好きだよ、すべてを失っても亜紀が居てくれたら何もいらない、これは俺の本心だ、信じてくれよ・・、
だから、俺の傍にいてほしい、ごめん・・」そう言ってうちに抱きついた・・。
気がつくと、空は薄っすらと明るくなりだして、失ってしまった悲しみよりも、心の中にうけた苦しみは、思うよりも深すぎて・・、
眼に見えない壁はうちの心の中を、不安だけで満たした・・、時が心の痛みを癒してくれるなら、癒してほしい・・・、
時が何もかも忘れさせてくれるなら、忘れてしまいたい、もういつものヒデさんに、戻ってはくれないのかな、そしたら、またうちは泣いてた・・。
Ⅱ 四章~願い~
窓の外が明るくなりだすと朝の日差しは、窓越しから零れ落ちた、何時しか零れだした日差しは夕べの事が夢だって思いたくなる程に
眩しさで輝いてた・・・、
なにも無かったように迎えた朝、眠ることもできずに迎えた朝、今もヒデさんはうちの傍に寄り添うように、佇んでる・・、
うちの手を握り締めたまま・・、半開きになったままの窓の外から、穏やかな風が入り込んで、顔を撫でて吹き抜けた、
そんな時、ヒデさんがふいに身体を起こすとうちの顔を覗き込んで、
「亜紀、ありがとな?亜紀の方が辛いのに、なんか俺は亜紀、苦しませちゃったな、ごめん?亜紀愛してるよ、こんな俺でも、
ずっと俺の傍に居てほしい、いてくれるか?」って笑ってくれた・・、
夢じゃない、そう想いながらヒデさんの顔を見た、
「好かった、夢じゃないよね?いつものヒデさんに戻ってくれたのよね?好かったほんと好かった、あたしも愛してる、だから
ずっと傍に居たい、あたしは居てもいいの?」
って言ったらヒデさんは
「それは俺のセリフだろ~?ありがとな?さっちゃんにも助けてもらってたな、迷惑までかけちゃってさ、亜紀?さっちゃんのとこ
一緒に行ってくれるか~?謝りたいからさ・・」って言いながらヒデさん苦笑いしながら頭をかいてた・・、
「ああ、でも亜紀?身体の方は大丈夫か?無理はしなくていいからな?ごめんな?・・」って言った
「許してほしいのはあたしのほうよ?だから謝ったりしないで?あたしは大丈夫よ、ほんと好かった、ありがと?」ってまた泣いてた、
そしたらヒデさんは、
「分かったよ、ありがとな?だからもう泣かないでくれよ?それじゃさっちゃんのとこ、行こうか?」って言われて、うちが頷いたら
「行こう・・」そう言ってヒデさんはうちの肩を抱きしめて二人でサチの部屋に向かった、でも、部屋には誰も居なくて、知らない内に出て
行ってしまったのかって、少し不安になって居間へ行って見ると、サチは居間のテーブルに頬づえついたまま、眠り込んでた、
そんなサチにうちは着てたジャケットをそっとかけた、
その時ヒデさんが、小さな声で、
「まだ寝かせといてやろう~な?亜紀~部屋に戻ろう~・・」ってうちの手を引いた、
でもうちはサチの傍に居てやりたいって、そう思ったら、
「ヒデさん?あたし、今思いついた事があるの、ヒデさん手伝ってくれる?」って言ったら
ヒデさん、少し驚いた顔をして、
「それは構わないけど、なんだ?思いついた事って?」
って聞かれて
「うん、サチのあとりえ、祝ってあげたいなって思って、どうかな?」
って言ったらヒデさんは
「あ~そうだな、お詫びの意味も兼ねて持成してあげるかな、これは俺個人的な事だけどな・・」って言って笑った、
「それはあたしも、同じよ!」ってついムキになったら、
ヒデさんはクスって笑って、
「悪かったよ?亜紀と一緒だ、それじゃ始めるか・・」って言って厨房に入った、
するとヒデさんが、
「亜紀?亜紀は休んでなよ?俺一人で大丈夫だからさ、な?亜紀はまだ無理しちゃ駄目だよ、頼む、俺に任せてくれないか?な亜紀?」
って言われて、うちは嫌とは言えなくて
「ありがと~、それじゃ~お願いします・・」って言ったら、ヒデさん、またクスッと笑って頷いた、
うちはサチの傍に坐って、サチの寝顔を眺めた、想いはいつも、いつまでもサチと友達でいられるように、ずっと手を繋いでいけるように、
そう願いながいながら居たら、サチの寝顔に、うちまでが眠気に襲われて、うとうとしだしてテーブルに顔を埋めて何時の間にか眠ってた、
ふと眼が覚めたらサチはもう眼を覚ましてうちの顔を覗き込んで笑ってた、慌てて飛び起きて見ると、サチにかけてたはずのジャケットが
うちに掛けられてるのに気づいて、声をかけようとしたらサチが、
「カナ~おはよう?大丈夫なの身体の方は?もう起きてていいの?ヒデさんとは話しできた?」って聞いた、
サチは、ヒデさんとのこと気にしてくれた・・、
「サチ、ありがとね?あたしは大丈夫よ?ヒデさんとは話しできたって言っても全部じゃないけど、でもそれでもいいかなって思ってる、
ひとりで何もかも背負い込んでるのってあたし辛いから、そんなのあたしは、ご、ごめんサチ、嫌だ、あたしほんとごめんね・・」
ってつい本音が出てしまったらなんだか恥ずかしくてうつむいてしまった、するとサチは、
「いいよ?カナはほんとにヒデさんのこと、好きなんだね?いいんじゃないかな~ヒデさんはカナの気持ちは分かってるって思うよ?
なんかね~?ヒデさん見てると、アンちゃんと何処かにてるのよね~、真っ直ぐで、それでいて何でも一人で抱え込んじゃうとこがさ~、
だから、わたし何となくだけど分かるの、カナもそう思わなかった~?」
って聞かれて、サチの見ている所はうちと一緒なのかなって思った・・、
「サチも気づいてたのね?驚いた、同じこと思ってたなんて、でもほんと似てるよね?なんだかそんなこと話ししてたら、アンちゃんにも
逢いたいね?・・」
って言ってたら、突然、ヒデさんが顔を出して・・、
「なに、靖がどうした~?今度逢いに行こうか~?皆でさ・・」
って言ったヒデさんの言葉にサチが、
「ええ~ヒデさん、アンちゃんの居るとこ知ってるの~?って言うか、ヒデさんアンちゃんの事知ってるの~?カナ~知ってたの?嫌だ~
どうしてわたしにも教えてくれないのよ~?ずるいよ~・・」って言って拗ねてしまった・・、
うちはすっかり忘れてた、サチが怒ってもしかたないって思えた・・だから、
「サチ、ごめん、あたし忘れてたの、ごめんね?別に隠してたわけじゃなくて、何ていうかあの~アンちゃん、サチの処、行ってたりしてたから
あたし、てっきりもう聞いてるって思ってたの、ほんとごめんねサチ!許して?ね~?サチ~?」って言ったら、
サチは、苦笑いして、
「分かった~!しょうがないから許してあげる、でもその代わり~カナ?アンちゃんに逢いに行く時は絶対わたしも一緒だからね?
アンちゃんさ~来た時はいつもカナの事だけで、さっさと帰るのよ~?だからゆっくり話もしてないんだよね~、でもヒデさんが
知ってるってことは、アンちゃん此処に来るんだ~?」そう言ってサチはヒデさんの顔を見た、
するとヒデさんは、
「ああ~そうだよ?あいつ此処によく食べに来てるからな~、ああ~そだ、亜紀?出来たよ、運んでいいか?」
って言われて、うちは慌てて「ああ~うん・・」
って言ったら、ヒデさんは、
「あ~亜紀、いいよ!俺が運ぶからさ?・・」そう言ってヒデさんが全部用意してくれた、そしてヒデさんが腰を下ろしたら、
サチは少し驚いた顔してヒデさんの顔を覗き込んでた、
するとヒデさんが、
「さっちゃん、色々ありがとな?それと俺の事で、さっちゃんには随分迷惑かけちゃったな、ごめん、これは、亜紀の提案で作ってみたんだけど、
さっちゃんの夢の門出と、世話かけたお詫びと、色々だ、もっと贅沢にしたかったんだけど、悪い、気持ちで、受けてくれよ、な?」
って言ってヒデさんは、精一杯の言葉を紡いでた・・、
うちには、ヒデさんの想いが、胸に痛くて何も言えなかった、苦しいのが、うちには分かるから、その時サチが、
「い、いやだな~ヒデさん、わたしは迷惑だなんて思ってないから~、わたしは此処が、ヒデさんとカナが居る此処が好きなのよ、
それにカナもヒデさんもわたしは大好きよ~?だからそんな迷惑だなんて想ってないわよ~、わたしのこと嫌いなら仕方ないけど、もしかして
そうなの~?そうならわたし嬉しくない、帰るからね~・・」ってサチは怒って泣いた、
するとヒデさんが、
「さっちゃん、悪かったよ、俺もさっちゃんと知り合えて楽しいしさ?大事にしていきたいと思ってるんだ、ありがとな?だから機嫌直してくれないかな?
言わなかったけど、これは亜紀の為にでもあるんだ、だからさ、な?さっちゃん・・」
って言うとサチは、泣き顔を隠すように、顔を手で覆ってから涙を拭うとヒデさんの顔を見て、
「好かった~、わたし嫌われてなかったのね、それじゃ~ヒデさん、握手?・・・」って言いだして、ヒデさんが戸惑ってたら、
サチは、
「このままじゃ、わたし行き場がないでしょ~?ヒデさんが仲直りしてくれなきゃ~、わたし仕切り直しが出来ないから・・」って言い出した・・、
予想外なサチの言葉にヒデさんと顔を見合せたら噴き出してしまった・・。
そんな時うちは、胸の鼓動が速くなったら息苦しくて咄嗟に胸を押さえた、
その時ヒデさんが、
「亜紀~?どうした~大丈夫か?顔色悪いぞ?無理しなくていいんだよ、少し横になってなよ・・」って言うとサチまでが、
「ほんとカナ、顔色悪いよ?休んでたら?」って言った、
こんな事で心配されたくなくて、
「大丈夫よあたしは、気にしないで?それより、ねえ~せっかくヒデさんが作ってくれたんだもん、食べようよ~ねえ?」って言ったら、
二人とも、うちの顔をじっと見て、なんだか不安そうに、二人顔を見合せてた、
するとヒデさんが、
「わかった、亜紀がそう言うなら、そうしよう?でも無理は無しだよ?な亜紀?」って言ってくれて、
「ほんと大丈夫だから、心配しないで、ね?ありがと・・」ってなんとかやり越せたかなって思った・・、
それからの会話も弾んでくれてうちは、胸を撫で下ろしてた、でもさっきのはなんだったのかな、でも思い反したら、寝てなかった所為だって、
築いたら、ついため息が漏れてた・・。
そんな時、ヒデさんが、
「さっちゃん、もしまだ居てくれるなら、亜紀の体調見てからだけど、靖のとこ、行ってみるか~?」って言った
するとサチは、
「え~ほんと~?ヒデさんとカナが許す限り、私は何時まででも平気よ?休みはたっぷり取ったしね?連れてってくれるなら、喜んで・・・、
ああそうだ、それじゃ私、カナが良くなるまでお店、手伝わせて貰おうかな?いい?」ってサチは嬉しそうだった、
ヒデさんは、うちを見ると、
「亜紀、どうかな~」って聞かれて、「あたしは、大歓迎よ?それにアンちゃんの顔も見たいし・・」って言うと、
ヒデさんはサチに、
「それじゃ宜しく頼むよ」そう言って頭をさげた・・。
これから店は賑やかになるなって思ったらうちは嬉しくなった・・。
Ⅱ 五章~すれ違い~
何時の間にかサチがこの店に来てからひと月が過ぎた・・、
すっかり体調もよくてもう店に出てもいい、筈だった・・、でも、何故かうちは店に出して貰うことも叶わず、何故か独り部屋の中・・、
賑やかに聞こえてくる、店からの声は、決ってヒデさんとサチの声、何処か楽しそうに聞こえてる声は、うちを孤独にさせた・・、
でも仕方ないことなんだってそう自分に言い聞かせてた・・、
サチが来てから、ヒデさんも顔を見せる回数も減って、サチも遠慮してか滅多に顔を見せ無くなってた・・、
うちが店に出て行くより、サチの方が上手くこなせるのかなって思えるようにもなった、それでも何処か寂しくて、辛くなる・・、
いつかうちは忘れられちゃうのかな、考えすぎだって分かってる、でも日を追うごとにそう感じてしまう・・・。
今日もうちは、部屋の窓の外を眺めた、もう夕暮だっていっても、この部屋に誰も来ない、来るのは店が終わってから・・、
今はそれが当たり前・・、窓に寄りかかりながら、暮れてく空眺めてたら、うちは何時の間にか眠りに入った・・・、
不意に眼を開けたらうちは大木の幹に腰を下ろしてた・・、枝の隙間から零れだす陽ざしが、何処かうちを癒してくれるようで微かに
見える空を仰いだ・・、独り寂しい時は、此処に来て紛らわせて・・、お兄ちゃんに怒られた時も、部屋に独りっきりになった時も、
此処はうちを癒してくれる、だからうちは此処が好き、
木に登ったら心も和むなって、そう思って木に登ろうと思った、でも身体が動かなくて、どうしてって思った、
その時、ヒデさんの姿が見えて、うちは必死になってヒデさんを呼んでみた、でもヒデさんは笑って通り過ぎてしまった・・・、
うちは悲しくて、辛くて、大声で「ヒデさん~」って叫んだら思わず飛び起きた・・、
するとうちの傍で、ヒデさんが
「亜紀~?大丈夫か?・・」って声をかけてきた、
でも夢と現実の境がつかなくて、また置いてかれるんじゃないかって不安に駆られた、でも心の何処かで引きとめたらいけないって
叫んでる自分が居て、うちは伸ばしかけてた手をひっこめた、
するとヒデさんに、
「亜紀?」って言われて、どうしていいのか分からなくて、
「ああ~あたしは大丈夫だから、ヒデさんはもう、店に戻って、あたしは心配ないよ?だから・・」って言いかけたら、
ヒデさんが、
「あ~店はもう終わったんだよ、だからもう店の事は気にしなくていいんだよ・・、」そう言った
うちは、ただ此処に居るだけ、ただのお荷物なのに、そう思ったら涙が零れた、するとヒデさんがうちの涙を拭いて、
「どうした~具合でも悪いのか~?独りにさせてごめんな?」って言ってくれた、
「あっああ、あたしの事は心配しなくて大丈夫よ?ありがと、ヒデさんの顔見たら元気になれたから・・ありがと?・・」
想いはいつも独りよがりで、空回りしてる、それでも愛しいと思う人を苦しめてしまうなら、心の底に閉じ込めてしまえばいい・・、
それでいいって思った、寂しさも、不安も、すべてを吐き出してしまえば、楽になれるって、暖かいその胸にすがったら、
きっと優しく包み込んでくれること、うちは知ってる、でも、もううちには分からない・・、できない・・、
「亜紀、無理はするなよ?ここんとこ亜紀、独りにさせてるから、ごめんな?・・」
「駄目だね?あたし、いつもヒデさんに守って貰うばっかりで、あたしは、ヒデさんにも、サチにも、アンちゃんにも、助けてもらってても、
なにもしてやれない、そんなのって不公平だよね、ごめんねヒデさん?でもあたしはいつものヒデさんの顔見れたら、それて十分・・、
だから心配しないで?今日は少し風に当り過ぎたみたい、ごめんなさい」
って言ったら、ヒデさん、
「亜紀・・、無力なのは俺の方だ、亜紀が謝ること無いんだよ?悪かったな?それじゃ~そろそろ寝るとするか、な~亜紀?」
そう言うとヒデさんは床に入ってしまった(ヒデさん・・・)
でもうちは寝る気になれなかった、自分に平気だって言い聞かせてるだけかもしれない、それは、ただの自己満足なのかも知れないって・・、
何処かでうちはそう思ってる、でもこれでいいんだって自分に言い聞かせた。
隣で眠るヒデさんを見てたら苦しくて、そっと床を脱け出して窓を開けた、空は星が、いつかのあの空のように、沢山の星が輝いて・・、
一番輝く星に、うちは、お母さんを思い浮かべた、顔も知らないお母さんだけど、それでも恋しく思えたから・・、
そんな時また息苦しくて深呼吸しながら眼をとじた、そしたら治まった頃にはいつの間にか眠ってた・・。
開けたままだった窓から、風が頬を撫でて、うちは眼が覚めた・・、いつの間にか寝てた自分にため息が漏れて起き上がろうとしたら、
いきなり誰かに背中を押されて、怖くなって咄嗟に、「ヒデさん~!」って叫んでしまった・・、
すると、背中越しから、
「亜紀?俺だよ、驚かせてごめん?」って言われて、振り向いたら、ヒデさんが「亜紀、大丈夫か?」って聞かれた、
「あっうん、ちょっとびっくりしただけだから、ごめんね・・」って言ったらヒデさんは、
「そっか~?けどあれはちょっとじゃなかったぞ?俺、呼ばれたしな?・・」って少し意地悪っぽい言い方で笑った、
「ええ~あたし、ヒデさん呼んだの?うそ~ヒデさん、あたしをからかってるでしょう?」
って言うとヒデさんは、
「ほんとだって~ほんとに俺は呼ばれたんだよ~、亜紀寝ぼけてたのか~?」って言われて、「そんなんじゃないよ~!もういい・・」
ってついムキニなってた、
するとヒデさんは
「悪かったよ?そんなムキニなるなよ?けど亜紀、ほんとに大丈夫なのか~?もしかしてほんとは具合良くないんじゃないのか?」
って聞かれて、一瞬あの息苦しさを、思い出してしまったけど、でも
「ごめんね?むきになって、でもヒデさんが意地悪いうからよ?、でもあたしは大丈夫よ・・」って言うと、
「そっか、ならいいんだ、けど亜紀がムキニなるのも珍しいな?まっ元気な亜紀で好かったよ・・」
そう言いながらうちを抱きしめてくれた。
でも、ヒデさん、
「さて~、店開けるかな~!亜紀、寝てな?また顔出すからさ、な?」って立ち上がると、階段を駆け下りて行ってしまった・・、
当たり前のように過ごしてたふたりの時間は、何処かに置き忘れてたように流れて、すっかり明るくなった空は、いつになく青空で、
こんなうちを、笑っているようにも見えた・・。
ヒデさんが、また顔を見せるって言ってから、一日が終わりに近づいて、結局一度も顔を見せる事は無かった・・、
始めから分かってた、そんな気がしてた、だからうちは驚く事なんてない、いつもの事だから・・、
そんな時、窓に寄りかかっていたら、また息苦しくなりだして眼を閉じた、治まり始めてきた時、少し疲れて横になってたら、また眠てた、
眼が覚めた時、ヒデさんはもう部屋に帰ってた、そしてうちの顔を覗くと
「亜紀?どうしたんだ~?こんなところで、風邪引いちゃうぞ?ごめんな顔出せなくて、けど具合でも悪いのか?顔色良くないぞ?」
って聞かれた、
「あ~平気よ、大丈夫、あたし寝てしまったみたい、ごめんね?心配要らないから、ありがと?・・」て言ったら
「それならいいけどさ、最近の亜紀、此処に寝てる事多いから、ちょっと気になってな、ほんとどっか具合よくないなら言ってくれ、な~亜紀?」
って言われて、そう言えばいつも眼が覚めるとヒデさんは居た、そう気づいたら、うちは言葉に詰まった、何ていえばいいんだろ・・、
言葉が見つからなくて咄嗟に
「あたし、山へ行きたいの、ずっと前から思ってたの、行っていいかな?・・」って言ってしまった、何故か連れてってとは言えなかった・・、
(なに言い出してるのかな、こんなこと言うつもりなかった、ただ・・)
するとヒデさんは少し驚いた顔して、
「亜紀は、独りで行きたいのか?俺とじゃ嫌なのかな?どうして一緒にって言ってくれないんだ?」って聞かれた
「あっごめんなさい、そんなんじゃないの、そんなつもりで言ったんじゃないのよ、ただ此処に居てもあたしは・・」って言いかけて
それ以上言えば自分の感情が抑えきれなくなりそうで・・、泣きだしてしまいそうで、言葉に詰まった・・、するとヒデさんが、
「独りにさせてたからな俺、ごめん、けど亜紀が行きたいって言うなら俺、連れてってやるよ、俺とじゃ嫌なのか~?」って聞いた、
「嫌じゃないよ、一緒に行きたい、でも、あ、でも、ほら、ヒデさん、サチとの約束があるでしょ?その為にサチは此処で、ごめんね忘れて?サチ
頑張ってくれてるんだから、あたしの事はいいよ、ね?」って言ったら、
ヒデさんは
「ああ、そう言えば、さっちゃんとの約束か~そっか、すっかり忘れてたな~、あ~それ聞いたら怒られそうだな・・」
ってヒデさんは、独り納得してた、
そんなヒデさん、何処か楽しそうで、うもううちの言った事忘れられてるだろうなって思った、
何時の間にか、またうちは、置き去りにされてしまったようで、うちの心の隙間が埋まる事は無いってことうちは知った・・。
時の足跡 ~second story~ 1章~5章