リバースノート②

もし人を生き返らせるノートを拾ったらあなたはどうしますか。

幼馴染B、生き返る

目を覚ましたらそこは暗い箱の中だった。
むせかえるような花の匂いと、外からは身内の啜り泣く声が聞こえた。
ここは一体何処だろう。どうして皆泣いているんだろう。
途端に怖くなって箱の中から手を伸ばしたら思いの外大きな音が出てしまった。
すると泣き声が一斉に止み、頭上の蓋がゆっくり開いた。
そこには目を真っ赤に腫らした母親の顔と、目を剥いてこちらを凝視する父親の顔があった。
「生き、生き、生き」
生き返った。
その言葉で私は死の淵から蘇ったのだと気がついた。


私が目を覚ましたのは火葬される直前だった。
そこから再び病院に搬送され、色々な検査をした後、学校に通うまでそう時間はかからなかった。 クラスメイトたちは皆涙しながら口々にお帰り、良かったね、と再会を喜んでくれた。
ただ一人、Aを除いて。
「そういえば、Aは?」
彼の姿だけ何処を探しても見当たらなかった。
ばつの悪そうに口ごもるクラスメイトたちに違和感を覚えた。
そこに幼馴染のCがやってきた。
「B、一緒に帰ろう」
彼に誘われるまま鞄を持って一緒に教室を出た。
「Aは死んだんだ。Bが目を覚ましてすぐに」
帰り道、Cの言葉に私は絶句した。
彼は当然生きていると思っていたからだ。
「急性の心臓発作だってさ。…折角Bが戻ってきたのに」
Cはそう言って顔を歪ませた。
私たちは幼馴染みで幼い頃からずっと一緒だった。
私が死んで生き返ったのも束の間、Aも死んでしまうなんて。
ショックで言葉も出なかった。
「でもBが戻ってきてくれてよかった。じゃあまた明日」
そう言ってCは去っていった。
私はCの事がずっと好きだった。
卒業式に告白するつもりだった。
だから彼と再会することが出来て嬉しかった。
だけど今は素直にそれが喜べなかった。
私は事故で確かに死んだ筈だ。
なのに何故か私だけ生き返ってしまった。
まるで死んだAの命を奪い取るように。
それがとても不気味に感じてならなかった。


自宅前にある林道に差し掛かると、ふと道端に白いノートが落ちていた。
普段なら見向きもしないが、何故か私は立ち止まりそれを手に取ってしまった。
誰かの落とし物だろうか。
確認のために中身を開いたが、その内容に思わずそれを手から落としてしまった。
「ヒッ」
白いノートの一番最初の行には自分の名前が書かれていた。
自分が書いた覚えはない。
誰が一体何のために。
恐ろしくなってノートはそのままに私は家まで走っていった。

「はぁ…」
ガチャン、と施錠して自分の部屋に籠る。
一体あのノートは何だったんだろう。
誰かのイタズラだろうか。
忘れようと思ったが、自分の名前を書かれたノートをあのまま放置しておくのも気味が悪いと思った。
翌朝、早く起きて学校に持っていってCに相談しよう。
あのリバースノートを。

リバースノート②

リバースノート②

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-03-29

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