大空に翔べ。
はじまり。
入学式から早くも一ヶ月。昔からの夢だった陸上部に入部し、毎日が楽しくてしょうがない千海だった。幼馴染の藤崎漱汰も同じ陸上部だ。「千海!朝練、早く行かないと間に合わないぞ!」グランドに近い窓から漱汰の声が一年二組に響く。「うるさいなぁ、分かってるって!」私は漱汰に聞こえるよう大きな声で返事をした。
ともだち。
私は一年二組三番宇野千海。漱汰は、三組だ。
小学生の時はクラスなんてなかったから、今でもクラスがあるのが不思議でたまらない。それに、漱汰と同じクラスじゃないなんてつまらない。千海は、少しだけもやもやしていた。すると、「千海ちゃん、誕生日いつ?」と声をかけてくれたのは、入学式の時に少し話した子、斎藤叶さんだ。優しそうで肩まで伸びた綺麗な黒髪が風で揺れた。「8月27日だよ。どうかしたの?」「私、入学式話した時からずっと千海ちゃんと仲良くなりたいと思ってたんだ。部活は違うけど、頑張ろうね!」「うん!」私もそう思っていたのでとても嬉しかった。叶さんは私の友達第一号になった。
大空に翔べ。