世界干渉のオーバーリザルト

波乱の始まり

世界樹ユグトラシル、その樹は樹齢などという言葉では表せないくらい大きい。その世界樹ユグトラシルはさらに大きな湖の中にそびえ立っている。湖の周りには広大な草原が地平線の彼方まで広がっている。草原の中に一軒だけ赤レンガで造られた二階建ての小さな家があり一階がバー、二階が居住スペースとなっている。現在、数少ない居住者の一人、白髪青眼の女性クレアは外で洗濯物を干し、もう一人の居住者、白髪赤眼の少女陽無月楓はバーのカウンターに突っ伏して眠っている。クレアが洗濯物を干し終え、楓が目を覚ました瞬間、二人の姿は一瞬にして消えた。

バーのカウンターを目が認識した瞬間にカウンターは姿を消した、同時にカウンターを支えにしていた私の身体は前に倒れ床に顔を激突させていた。
「痛い」
私が呻くと私の相棒であり親友であり従者であるクレアが心配そうに顔を覗いてくる。
「大丈夫ですか?」
天使だ、天使が迎えに来た。
「ダイジョブ」
そう答えると私は起き上がり周りを見回した。周りは赤、黄色、青、緑等の光が混ざりあって上に昇っていっている一見するとフルーツ牛乳のような色合いの場所で足元には見えない床があった。
この場所には見覚えがあった。ユグトラシルの世界に来るときに通った道のはず。ということは
「私達の初仕事というわけか」
「初仕事という言葉が適切かどうかはわかりませんが恐らくはそのようかと」
あぁクレア可愛い。私達は様々な報酬が受け取れる代わりにこの仕事を行うことをユグトラシルと約束している。今回がその第一回目なのである、多分。お馴染みのBGMも流れ出すというもの。すると突然頭のなかに聞き覚えのある声が流れ始めた。
「ごめん!初仕事なのに急な呼び出しになって!あと今忙しいから声だけで説明するねっ」
「初仕事であってた」
「へ?」
「なんでもない」
はい、ユグドラが来ました。金髪青眼の正統派ロリっ娘です。いつもどこかの世界の服を着ているお洒落さんであり、全ての世界を管理しているユグトラシルです。
「さて、今回の仕事だけど。世界干渉を二発同時に喰らった世界があって。その世界が崩壊しそうなのね。だから、その世界からこちらの方を保護してきて欲しい」
頭のなかに画像も流されてくる。猫のロシアンブルーを擬人化したような少女だった。
「なんでこの娘を?」
素朴な疑問をぶつける。
「会えばわかるよ、じゃ私はこれで」
切れた。繋ごうと思えば繋げるけどめんどくさいのでやらない。
「ユグトラシルさんが保護して欲しいと頼むような少女ですから特別な力を持っていることは確実でしょうね」
クレア可愛い。
「そうだろうねぇ。まぁ気楽に行こうよ」
そう言った瞬間、また私達は消えた。


夜。発展途上国であるこの国では排気ガスが問題になっている。その国の首都である街の名所、高さ800mを越える自立式のタワーの頂上にゴシック服の上からフードを被っている碧眼の少女が街を見下ろしていた。

干渉する世界

昔々空気中を漂う魔力によって全ての機械を動かしている世界にとても優秀な少年が生まれました。
頭脳明晰、運動神経抜群、さらに眉目秀麗なその少年は子供の頃から一番を取り続けていました。
しかしそんな彼にも欠点がありました。
独占欲が人一倍では表現できないほど強かったのです。
地位もお金も女性も独占できるものは全て独占してしまいました。
それでも彼の独占欲は収まりません。
彼は遂に、この世界を支えている魔力を独占したいと思いました。
魔力が手に入ればお金は独占したようなものなのでお金をどんどん使って必要な物は全て揃えて世界中の魔力全てを集める装置を作りました。
彼は意気揚々とその装置を起動させ魔力を独占し始めていきました。
一定の量まで魔力が貯まると彼を中心に魔方陣が作り出されます。
そして集めた魔力を彼に注いで行きました。
彼は自身に魔力を貯めることによって独占しようとしたのです。
しかし、世界中の魔力を受け入れるには彼の体は小さすぎました。
溢れた魔力は彼の周囲に高密度で集まり続け干渉し続けます。
やがて魔力は限界まで凝縮、そして解放されて大爆発を起こしました。
爆発の中心にいた彼は跡形もなく消えてしまったのでした。彼の体に貯まっていた魔力と共に。


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コンクリートに包まれた無機質な街の人の少ない通りを美しい少女とも女性ともとれる見た目の三人が歩いている。
三人の中心を歩くのは、まるで夜の女王を思わせるゴシック服を着てその上から何かを隠すようにフード付きのパーカーを頭に被り首には銀色の鈴が付いたチョーカーを着けている灰髪碧眼の少女。フードの中からは三つ編みにした髪が出ている。腿までくるソックスには手術で使うメスが左右に八本ずつ、腰には注射器が五、六本固定してある。
その少女と言い争っているのは黒地に白のラインの袖が広がっているジャージに左右で長さの違うスカート、そのスカートとは反対の左右が長さの違うソックスに黒のロングブーツという格好の男性と見紛う程の高身長を持つ白髪赤眼の女性。髪が地面についてしまいそうなくらい長い。肩には剣先を前に向ける形で柄が四割、刃が六割程の日本刀を紐で吊るしている。
その二人の後ろをぴったりと付いて二人のやり取りを見守っているのは指先までの黒インナーの上から長袖のシャツ、さらにその上に青色のポンチョを着て黒のショートパンツ、厚目の黒タイツにロングではないベルト付きのブーツを履いている白髪青眼の女性。髪は高い位置で幅の広いポニーテールにまとめている。
「とりあえず詳しい話は私の家で聞かせてもらいますよ、陽無月 楓さん?」
と、灰髪の少女が赤眼の女性、陽無月 楓に話しかける。
「楓でいいわ。つまり私たちと一緒に来てくれるって言うことかなレイラ=ロードさん?」
と灰髪の少女、レイラ=ロードに話しかける。
「レイラでいいよ。楓。一緒に付いていくかどうかは詳しく話を聞いてからにするよ」
その返事を貰って楓は肩を落とす。そこに青眼の女性、クレアが慰めるように話しかける。
「突飛な話ですからすぐに信じろと言うのも無理なものだと思いますよ」
「う~」
そんなこんなで三人は最上階以外あまり電気の点いていない高層ビルの前に着いていた。
「ここだよ」

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視界から光が引いていくと新たに視界に入ってきたのは見慣れた居住スペースだった。
窓の外は暗いので夜なのだろう。
辺りを見回しクレアも無事到着していることを確認するとクレアを連れてバーがあるはずの一階へと降りていくと見慣れない風景が視界に現れた。
いつもの寂れたバーではなく暖かな照明で照らされ、カウンターにはベストを着ている男性がいる。
その男性が薄目を開け私たちを視認すると話しかけてきた。
「陽無月 楓様とクレア様ですね、お待ちしておりました。私はこの世界のマスターです。言うならばこの世界のユグドラシルでございます。マスターとお呼びください。どうぞ、お座りになってください」
私とクレアは目を合わせるとマスターに進められたカウンター席へと座った。
「なにかお出し出来ればいいのですが、私にはそのようなことをする余力が残っておりません。ですので貴女方に頼ませていただいた少女の保護、その少女に関する情報を今調べられる範囲で調べたのでお教えさせていただきます」
そうしてレイラ=ロードとこの世界の現状を知った二人はバーを出て街の暗闇へと沈んでいった。


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とあるビルの最上階、全面がガラスで出来ており何処からでも街を見下ろせるようになっている。
本来腰を下ろすためのベンチ以外なにもないフロアには組立式の仕切りが複数立てられ、白い蛍光灯に薄く照らされたフロアに血の臭いが充満している。
「初来店のお客様ですね。しっかりお出迎えしてあげなくては」
この空間に何故か馴染んで見える十にも満たない見た目の幼い少女は深々と帽子を被りそのフロアをあとにした。

はじまりはじまり

私は楓とクレアを連れて自分の住んでいる高層ビルの中に入っていく。
ビルの中には傷を負い苦悶の表情を浮かべている柄の悪い男連中がいて、私を気味の悪いものでも見るかのような、気に食わないものでも見るかのような、そんな目を私に向けていた。
私はそれを無視して目的の場所へと黙々と進んでいく。
後ろに付いてきている楓は怯えた様子は無く、しかし、男達は気になるようでキョロキョロと回りを見回している。一方クレアはどうかと言うと全てを見透かしているような落ち着いた雰囲気のまま楓を保護者の如く見守っている。
そんな調子のまま階段を上がりきり目的の場所最上階へとたどり着きそうな少し前の所に最上階にいるはずの私の妹がいた。
「ここから先は仕事場なのでなにか用があるならここでお願いします」
じゃ、と言って私は妹の横に移動する。
階段の上段に私達、下段に楓とクレアがいる構図になる。
「ご用件はなんでしょう?」
それを聞いた楓はこの世界が壊れること、私を保護するように言われたこと等を話し始めた。


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「魔導士……ですか……?」

子供を身籠った女性は医師からそう告げられ心の底から喜んでいた。
魔導士とは体内に魔力を宿しており魔力を消費することにより驚異的な身体能力を発揮することができる人種である。見た目の特徴として動物の耳であったり尻尾であったりが生えている。
彼女の夫も魔導士を身籠ったことを喜んでいたが同時に不安も抱いていた。

「……普通の人間が魔導士を産むのは難産になるらしい。……お前が死ぬような事は俺は望んでいないからな……」

魔導士を身籠った彼女は身体が弱く普通の出産にも耐えられるか分からないのであった。

「なぁに暗いこと言っちゃってるの。私もお母さんになるんだし、いっぱい食べて体力つけて、赤ちゃんに元気に産まれてきて貰うんだからっ」



しかし、そう上手くはいかなかった。
女性はやはり難産になり自分を殺すか子供を殺すかの状況になり、そして子供を生かした。
それを知った夫は悲しみに打ち拉がれ、悲しみのままに街を放浪し遮断機が降りた線路に迷い混み妻を追うかのように死亡した。

産まれ落ちたその日に孤児となった赤ん坊は孤児院へと預けられ魔導士特有の耳と尻尾がフェネックという動物の物であることを動物の専門家が調べその赤ん坊はフェネと名付けられた。




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今度続きを書きます!!
もう少し進んだらサクサク書き始めると思います!!

世界干渉のオーバーリザルト

世界干渉のオーバーリザルト

大量の世界を管理する世界樹ユグトラシルの手となり足となりチート級性能の主人公達が世界干渉によって生まれるチートな者達の対処に四苦八苦する物語です

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • アクション
  • 青年向け
更新日
登録日
2016-03-26

Copyrighted
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  1. 波乱の始まり
  2. 干渉する世界
  3. はじまりはじまり