ギブミーたこ焼き

たこ焼きをね、買おうと思ったんですよ。
今日は寒かったし、でもこれからきっと暖かくなるし。今日のうちに食べておきたいなと、思ったんですよ。
だって寒い中で食べるたこ焼きって、半端ないですよ。めっちゃ熱いからハフハフして、そしたらとろーんって生地が溶け始めて、タコはくにくにだし、ソースは甘辛いし、マヨネーズとかつお節は柔らかいし。
とにかくね、たこ焼きをガツガツ食べたかったんですよ。
そんで、たこ焼きやさんの前で、ホクホクバックの中身漁るんですよ。もう口の中はヨダレまみれですよ。だってもう、目の前でいい匂いしてるんですもん。
しかもね、ついでにいうと私朝ごはん食べてなかったんですよ。たこ焼きやさんの前についたのが大体二時くらい...。丁度いいっつーか、十分すぎるくらい腹減ってたんですよ。
そんで、そう、財布。ホクホクバックを漁ってたんですけども、右手に財布の影すらつかめない。私もいよいよ、どうも嫌な予感がする。
私のね、嫌な予感ってたいてい当たるんですよ。自分が間抜けだってことを、誰よりもわかっているもんですから。
あ、そうそう財布。いや〜、無かったんですよね。これが。
もう、ホクホクなんてしてられません。あせってバックに顔突っ込んで探しましたよ。うんこ座りで、ですよ。
おいおいおいおい、まさかここまで来て財布無いの?え?嘘でしょ?嘘やん、ここ店の前ぞ?ちょちょちょーい、これは、おま、これは、ちょ待てよ?これ、おま、えぇぇぇえええ???
こんな具合の独り言をね、人通りの多いたこ焼きやさんの前でぶつぶつ呟いちゃってたんですよね。私声大きいからね、はい。
それで、パッと我に返って周りを見渡してみたんですよ。
もうなんか、いたたまれない目で私を見ないで、って感じですよ。結構多めのひとが、私をじっとり見てたんですよ。
子連れのお母さんなんて、目を合わしちゃダメって言ってたんですよ?私始めてみましたよ、そんな有名だけど絶対無さそうなシチュエーション。
んでね、このままだとヤバイって思ったんです。何がやばいって、私の豆腐メンタルのことです。大豆ですからね、プルプルですからね。もうあの時点では粉々でしたよ。
だがしかし、ここは何としても蘇生させたいと思ったんです。自分の繰り出した鳥頭と独り言のダブルパンチが、廻り巡って私の顔にクリーンヒットですもん。しかも公衆の面前。トリプルパンチですよ。ア○パンマンもびっくりですよ。
とにかく、自分にメンツを取り戻したい。
その一心で、私はカバンを背負い猫背を思い切り伸ばしてこう言いました。

「Give me Takoyaki .」

どう考えても、日本人の汚い発音です。
沈黙と自分の英会話のセンスのなさが、やっぱりダブルで私の顔面にヒットしましたとさ。

ギブミーたこ焼き

異国の人間だったら、許されるかなと思いました。

ギブミーたこ焼き

めちゃくちゃ私的な今日の出来事を書きました。なんか...、書かないと羞恥心を消化できそうになかったんですよ笑 ※日記みたいな内容です。ほんとに。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-03-26

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