江戸の春/楼下の宴 征四郎疾風剣(Ⅲ)より
限りなく季節は移り
再び巡り来たる春
楼下の盃に心華やぎ
花吹雪の中舞い踊る
妓の袖の艶やかさよ
川面に浮かぶ屋形の上
三味の合間に小判が飛び交い
路傍に伏して食を乞う物さえ笑みを浮かべ
童の声かん高く辺りに響き
屋台の煙濛々として芳香を漂わす
墨堤の流れに眼を留むれば
まるで花天井のもと
浮かれる幾十万の人々を乗せ
大川を遡る巨船の如く見ゆ
江戸は今まさに春爛漫
人々はこの世の春を心ゆくまで謳歌せり
(征四郎疾風剣Ⅲ 巻頭句より抜粋)
江戸の春/楼下の宴 征四郎疾風剣(Ⅲ)より