木漏れ日

夏みかん

春、快晴の空の下で。

今日は何も予定がない。

春休みに入ってから、今日で三日目。
昨日は友達と一日中だべり、駄菓子屋で駄菓子を買ったり自転車で商店街に行って古着を見たりして、夕方まで遊んだ。寒くなったころ帰った。
今朝起きて、メールチェックし、おはよーと返事してから、誘われたけど、「今日はいいわ」と断り、一日を孤独に過ごすことに決めた。


今付き合ってる友達と、私はたぶん、大人になったら付き合わないだろう。高校に入ったらなんとなく新しい関係を作って、今の友達とも挨拶だけして、別々の学校に通うのだ。
将来の夢で、なんとなく京都の芸大に入りたいと漠然と考えている。ろくろを回して、器だか土瓶だかを作りたい。
経験がないからこその憧れ。親にはまだ言ってない。言えば非難の集中業火を浴びて、恐らく佛教大だとか経理系の専門学校だかに入れられるんだろう。
そういった未来に、私はとんと興味が持てなくて、具体的に将来の恋愛観や自分の家族像などを話す友達に、心の中で「べ」と舌を出す。
自分でも持て余してるのに、その上誰かの物になったり、子供を持ったりするのなんてまっぴらだ。私の子供はきっと学校でいじめられて、それを私は助けてあげられない。

五体満足で生まれてくる確率がわかんないのに、どうしてそうぽんぽん子供を作りたがるんだろう、女って。
軽い絶望性の私はこんなことを考えている。

だって、最近のニュースだって子供を殺してるじゃないか。ちょうどこんな奴が。そう思いながら、仲間の一人を思い浮かべる。彼女は高校を卒業したらすぐ家庭を持ちたいと語る。子供は5人ほしい。女の子三人と、男の子二人。かしましくて良さそうだと一見思うが、彼女が塾やら部活やらをバンバンやめては周りに迷惑をかけているのを知っている。それでもかわいいから人気はあって、今も野球部の先輩とメールをしてるんだそうだ。
彼女のいいところは、男慣れしていて話すことが垢抜けているところだ。女のどろどろした会話を一切しない。さらっとしているところが私も気に入って付き合っているのだけど、子供は生むなよ、と思う。


外は晴れだ。

軽くパーカーを引っ掛けて、ジャージを履いて家を出た。携帯は部屋に置いておいた。今日は一人で過ごしたい。
去年の三学期、同級生の別のクラスの子のジャージがハサミで切り裂かれていた。机に「死ネ」と書かれていて、その子は学校を辞めてしまった。
犯人は分からない。
私はいつも隅で固まってる愚鈍でださくて、悪口ばかり言っている女子たちが犯人だと思ってる。彼女が辞めた時も大声で笑って喜んでいたし。
それで却ってあからさまに嫌われていくのに、まるで病にかかったみいに、彼女らは話を止めない。

なんていうんだろう、ああいうの。ヤンデレ?確実に病んでる。

その後も様々な人に嫌がらせは続き、明らかに美人な子が被害に遭っているのがなんだか滑稽と言えばそいつらを言い表すのに滑稽で、私は上に書いた彼女が標的になったとき、先回りして隠された上履きを焼却炉から見つけ出し、洗って休みの日に返しておいた。
連中の一人がうちの近所に住んでて、顔を合わすと必ず手を振ってくるのが不思議で私はいつも無視する。友達がほしいなら、それなりの行動で慎むべきなのに、好かれたいという表現方法を間違えている。


家を出て、近所を歩く。ぽかぽかと暖かくて、背中が非常に気持ちがいい。脳まで血が巡る感じ。保育園の遠足のときの嬉しいあの感じ。公園に回ると、桜のつぼみから匂いが香ってきて、「ああもうすぐ咲くなあ」と考える。
裏の駐車場で猫を撫でた後、近所を散歩してジュースを買いに行った。

「あ」

見つかった。
上履きを返した彼女。
今日はカラオケに行ったんじゃなかったんだろうか。
彼女はサイダーを飲みながら、「こんな日もあるよね」と自転車の上で笑った。ブロック塀に乗せた長い右足がかっこいい。
「あるある」
私もサイダーを買い、この好みが合うところが彼女のいいところだ、彼女も同じことを思ってる。そう思った。
立ち話をして、野球部の先輩とは別れた、と聞き、「また良い人見つかるよ」と返したら、彼女は当然のように「うん」と返事した。

足元を見た。私のスニーカーと、彼女のパープルのラメ入りサンダル。爪も淡い紫で塗ってある。
なんだか気が合うけど、私たちはばらばらになるだろう。

こんな時間が流れたことを思い出しながら、それでも大人になるんだろう。
私が芸大に入りたいことを話したら、「恵子ならいけるよ」と、彼女が優しく笑った。

木漏れ日

出会い、昔を思い出して。

木漏れ日

中学生の春休みの一日。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-03-23

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