星の子と金平糖

やない ふじ

きみは朝食の代わりに金平糖を食べる。
透明と黄色。
「わたし、ほしのこどもよ」べたついた指で僕の頬にふれる。きらきらひかる、夜空の星よ。僕たちの体をつくっている元素、みなもとは同じだね。そう返せば不機嫌にとがる口。
「むずかしいおはなしはきらいだわ」
はいはい、わがままなお嬢さま。きみは星の子。でも僕は違う。それで良いかな。だめよ、と六つ目の透明が僕の口にとびこんでくる。指といっしょに。ほうき星。
「だって、おんなじでしょ」矛盾している論理、僕だってもう慣れたよ。きみは星の子。そうだった、そうだった。地球でなら通用する論理も理屈も、構いっこなしだ。
 
きみは昼食の代わりに金平糖を食べる。 
ピンクと水色。
雲のない空にういた白い月。「あれはお友だち」はねた声が聞こえた。きみがうれしいと、僕もうれしい。「でも会ったことはないの」知っているよ。きみは飛んでゆくことができないんだ。だからどこにも繋がっていない電話線を引きずって、古めかしいダイヤルを回している。呼び出しのルルルを口ずさむ。僕がじっと見つめているのにきづいて、慌ててガチャリ、切ってしまった。
「何でもないのよ」弁解? そうじゃない。悲しそうに、謝るようにいう。
「少しさみしいから」
そうか。そうだね。僕にもそんなときがある。

「わたし、本当に星の子か、不安になるの」

きみは夕食の代わりに金平糖を食べる。
白と紺。
撒き散らした絵の具みたいな星。きみのなかま。そう、きみが思っているもの。
「ね、いつになったら辿り着けるのかしら」いつだって、と僕が呟いても、きみは砂糖のかたまりを口に運ぶのをやめはしない。星の子でいるために。ずっと何十年先も、星の子であるために。
「星になってしまったから分かるの?」
答えない。くしゃりと笑ったきみを撫でてやりたいとおもう。でも僕はきみにさわれないんだった。金平糖の魔法。呪縛。信じられなくなったら消えてしまう。だから微笑んでいようか。せめてきみがまだ、僕の子どもであるうちは。

きみはあの日のもとで、金平糖を食べていた。

星の子と金平糖

星の子と金平糖

ふわふわ。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-03-23

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