ネックレス
三日月ver
あなたから貰ったネックレス
いつ貰ったかも
忘れてしまっているのに
捨てられないままで
ただそれを
じっと見つめて
どのくらいの熱量で
あなたを愛していたかを
忘れられないままで
穏やかに笑う
落ち着いた声で
私の名前を呼んでいた
物足りなさすら感じていたのに
重みのない鎖で離さない
もうあなたは、好きと言ってはくれないのに
太陽ver 〇
君は真珠のネックレスを綺麗だと言った。
私は真珠のネックレスをこわいと思った。
真珠のネックレスは別れを想像させる。
君が私から離れて結婚したら、
私は真珠のネックレスをつけて結婚式に行くのかな。
君を離したくない、
私は君と一緒に
真珠のネックレスのいらない世界へ行くよ。
太陽ver
君からもらった華奢なネックレス
もらったのはいつだったか
このネックレスを捨てられないまま
私の中のその記憶はきえてしまった
このネックレスを見つめて
二人がどのくらいの熱量で愛していたのかを
私は忘れられないままでいた
穏やかに笑う、君
落ち着いた声で私の名前を呼んでいた、君
華奢なネックレスは
私の心で重い鎖になって
私を離さない。
三日月と太陽の共同制作
女にとってネックレスというものは"いつ"貰う日であるか考える。
だいたいは恋人から誕生日、クリスマス、ホワイトデー、記念日などのイベントに貰うものだろう。
ところが、今問いたいのは彼女はそれらの"いつ"だったかという事だ。
4月12日。
なんの変哲もない
春の日差しが眩しい穏やかな日を平和に過ごしていた。
その日、1人の男が永眠した。
そしてその男が残していったのは一人の女宛のプレゼントだ。
高校生にしては少し値段が高そうな首飾りが入っていた。
この時、男が女を好きであったと確信できた。
同時に女も男の事が好きだったのだと確信できる。
あの日から何回変わらぬ4月12日を迎えた事だろう。
いや、正確には一人の男がいなくなっているのだから「変わらぬ」というのは間違いになる。
それでも変わらない。
春の匂い、風、日差しもあの日のままだ。
そして変われないのは一人の女も同じだった。
今となっては自分で買えるような値段の首飾りを捨てられないでいる。
4月12日、春の日差しにあの首飾りをかざしてしまうのはあの男を忘れたくないと思いつつも、
忘れて次の恋ができないと分かっているからだろう。
あの一人の男を一人の女がどれだけの熱量で愛していたのかを、
春の日差しにてらされたこの首飾りが教え続ける。
落ち着いた声で私の名前を呼んでいた彼の声。
穏やかに笑う彼の顔。
物足りなさすら感じていたのに
この首飾りは重みのない鎖で、私を離さない。
それでも良いと思ってしまうのは、私がまだ彼に伝えられていない事があるからだろう。
ネックレス