有神論

あなたは神を信じますか?

 と問うと、私はクリスチャンだと思うでしょう。

 ちがいます。
 この小説も、神を信じましょうとか、そんな理由で描いているのではありません。

 しかし、長い月日が流れる中で(まだ20代ですが…)
神様はきっといるんだなぁと思えるようになりました。

 なぜなら、つらい過去がたくさんあったからです。
でも、つらい過去があったからこそ、今があるのです。

 あなたは今、幸せですか?
私は幸せです。

 たくさんつらいこともありました。
うまくいかないこと、くじけそうなこと…
時には生きるのをやめたいとも思いました。

 しかし、止まない雨はない。
 明けない夜はない。
ということを皆様に感じていただきたいです。

 きっと、私よりもつらい思いをしてきている方々はたくさんいらっしゃると思います。
 こんなことで…と思う方もいらっしゃると思いますが、
広い心と温かい目で見届けていただきたいと思います。

 この小説を書いているもう一つの理由は、
単純に、自分の過去を忘れたくないからです。
 こんなこともあったけど、乗り越えてこれた!
と見直した時に思いたいのです。
 なので、文章力もないですし、
日記のようになってしまうと思います。
苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

※一応連載ですが、投稿は不規則です。ご了承ください。

始マリ

2009/10

 今私は教室にいる。


 時計は昼の1時をまわったところ。


 一人で食べる昼食の不味さにも慣れてきた。

 この後は、決まってイヤホンで音楽鑑賞しながら携帯いじり。

 
 教室の中に話せる人なんて誰もいない。


 教室の中だけではない
 ほかの教室にも、この学校にも…



 周りから見た私の印象はきっと
 『暗い・無口』
 だろう。

 こんな私に話しかける人なんて
 いるわけがない。


 ふと、
 いつもの癖で開いてあった缶の筆箱を見た。

 ふたの内側にはたくさんの人たちと撮った、たくさんのプリクラ。

 こんな時期もあったな。
 と、見るたび懐かしく思う。



 そもそも、私はこんな性格じゃなかった。
 どちらかというと
 明るくて元気なほうだった。


 こんな性格にしたのは、
 6か月前にあった
 クラス替えだった。

しあわせだった日々

2009/4


並木道の桜は大きな蕾を持ち、今か今かと自分の見せ場を待っていた。



今日から高校2年生になる私、弥千―やち―は、始業式に行くために、友達の梨緒-りお―と登校した。
少し歩いて、学校のそばにある歩道橋についた

「弥千ー!梨緒ー!おはよー!!」
歩道橋にいた千里―ちさと―が笑顔で手を振っていた。

千里の隣にはもう二人、愛良―あいら―、なち。
私と梨緒は笑顔で手を振りかえした。


梨緒、愛良、千里、なち、そして私。
このメンバーは、高校1年生の時同じクラスになり、いつも一緒にいた。いわゆる『いつめん』
梨緒と千里と私は、小学校からずっと同じ学校。愛良となちは、高校で出会った。

この5人でいる学校生活は、勉強なんて苦にならないほど、すごく楽しかった。

授業中以外はほぼずっと5人で一緒にいた。

初めて休みなんていらないと思った。


出会った年の春には、登校で通った桜の並木道の公園で開かれる桜祭りに、下校と同時に向かった。
学校のバッグを持ったまま、出店を回ったり、ソフトクリームを食べたり、
当たり前に思うかもしれないが、中学校の時に規則が厳しかった私にとっては、想像もできない日々だった。

そのほかにも、カラオケやカフェ、夏には浴衣を着て夏祭り。


もともと友達が少なかった私。
中学校時代なんて、こんなことは一度もなかった。

改めて友達といる幸せを感じた。


もちろん、4人を信頼していたし、『親友』と呼べる人たちだった。

中でも、一番信頼していたのが、愛良だった。
愛良には、困ったとき、悩んだとき、悲しいとき、いつも相談に乗ってもらっていた。
私が悩んでいると、いつもすぐ気づいてくれて、的確なアドバイスをくれた。
秘密なんてなかった。すべてを話していたと思う。

愛良も、私を頼ってくれていたから、さらに仲が深まった。

お互いに信頼できている、そう思えた。


そんなことを思い出しながら5人で学校へ向かった。

散った桜

学校の門までたどり着いた。
たくさんいる同級生の中の一人と目があった。

その時の私の心は、一瞬ドキッとしたが、同時にキュンと苦しくなった。

彼の名前は龍矢ーりゅうやー。
私の元彼である。

この人ともまた、高校1年生のクラスで出会った。

中学生のころ、男子には全く興味なかった…といえば嘘になる。
好きな人はできても、自分からはアピールできなく、結局片思いで終わってしまううじうじ女子だった。
なので、中学時代は彼氏なんて夢のまた夢であったし、それほどほしいとも思ったことなかった。


高校デビューをし、親友の5人で楽しい学校生活を送っていたある日だった。
1日の授業も終わり、放課後。今日も学校帰り5人で寄り道をする約束をしていた。
「弥千、今日どこの掃除?」
「えーっと…げ!教室掃除だ(;_:)」
「まじか!じゃあみんな終わったら玄関集合ねー!」

『教室掃除、一番時間かかるんだよなー…早く終わらせてみんなのところいこう!』
と、急いで掃除をした。

先生「じゃあ終わりね!解散!」
『よし!早く玄関いこーっと!』
ウキウキしながら教室の外に出ようとした瞬間、

「ねえ、アドレス教えて?」
話したこともない男子がいきなり目の前に現れた。
「え?あっはい!」
おどおどしながら私は彼とアドレスを交換した。
彼が龍矢だ。
龍矢とは、入学直後に行った宿泊研修で一緒にカレーを作る班が一緒だったことと、掃除の班が一緒だったこと以外関わったことがなかった。


その日から龍矢とのメールのやり取りが始まった。
毎日メールしてくれるのに、学校では一言も話さない、なんだか不思議な関係だった。
最初は私も何も思っていなかったが、彼の謙虚なアピールに日に日にひかれていった。

そして約1か月後、龍矢から告白され、私たちは付き合うことになった。

龍矢は私にたくさんの幸せをくれた。
一緒にいるとドキドキしておちつかなかったが、それ以上の幸せを感じた。
初めてデートしたとき、初めて手をつないだときの初々しい感情は、今でも鮮明に覚えている。

初めてこんなに人を好きになった。
初めて好かれている実感ができた。

お互いに気持ちが通じ合っていることが、こんなにも幸せだったことに気付いた。

付き合ってから数日後、デートで海に行ったとき
「ずっと一緒だよ」
と言い、私に優しくキスしてくれた。
夕日のきれいな夏の海だった。

龍矢と親友たちのおかげで、学校生活は本当に天国だった。
青春を実感できた1年だった。


しかし、龍矢との恋は雪が降ると同時に壊れてしまった。
原因は明らかに私の重たい気持ちだった。
何もかもが初めてだったわたしは、自分の感情の整理をうまくつけられず、ただわがままに彼にあたっていた。
デートの予定がキャンセルされるたび、たとえ理由が風邪だったとしても、自分の悲しい気持ちを抑えられなかった。
しかし、彼に直接いうのが怖かった私は、自分の素直な気持ちを、自分のブログにぶつけていた。

11.25 いつも通りの寝る前のメールのやりとり。
弥千「明日遊ぶのめっちゃ楽しみ^^」
龍矢「ごめん、やっぱり明日遊べなくなった…サッカーの試合が入っちゃって。ごめんね。」
弥千「そっか…」

 デートをキャンセルされるのは、これで何回目だろう?もやもやしていた私は、いつものように自分のブログに気持ちをぶつけた
 『なんでキャンセルされたらこんなに悲しく思っちゃうんだろう。もうこんなわがままな私どうぞふってください』
 もともとネガティブ思考な私、思ってもいないことを書き込んでいた。

弥千「でも、再来週は絶対遊ぼうね!!」
   だって、再来週は龍矢の誕生日だもん。



龍矢「別れない?」



弥千「…え?なんで?」

龍矢「もう疲れた」

弥千「龍矢がいなくなったら、私だれもいないんだよ?別れたくないよ…」

龍矢「お前のブログ、見たよ。ふっていんだろ?」
 
誰も見ていないと思っていたブログがいつの間にか龍矢に知られていた。

弥千「あれは病んでて…本当は違うの。ねえお願い別れたくないよ…」

龍矢「しつこい!俺はもう眠いんだよ」

  そういえば、気づけば夜中の12時を回っていた。
 とりあえず、一回落ち着こう。明日になれば、また変わるかもしれない。

弥千「寝てもいいよ…」

龍矢「別れてくれたら寝る」

 そんなこと言われたら
 別れるしかないじゃん…。



この日、私は一晩中泣いた。今まで幸せだった分、悲しみも大きかった。
心にぽっかりと穴が開いたような寂しさが、とても苦しかった。


しかも、私はとっても引きずるタイプのようで、
別れてからこのクラス替えの日まで、龍矢とは一言も交わすことはなかったが、一日も忘れる日はなかった。

天国から地獄へ

そして、ついに新しいクラスの発表時が来た。
学校の玄関の入り口に、大きな掲示板にたくさんの名前が書いてあった。
4人で一斉に自分の名前を捜す。


愛良「……あった!!D組だ!!」

千里「わたしもだ!!一緒だね!!」

なち「なちもー!!」

三人は喜び抱き合った。

しかし、私はまだみつけられない。
D組であることを願い、何度も確認するが、何度見ても私の名前はなかった。


見つかったのは、隣のC組の欄。名前は知っているが、話したことのない人、一年生の時多々の事情で問題になった人、いじめっ子と言われている人などの名前の間に、私の名前はあった。
喜び、抱き合う3人の隣で、私は不安を隠しきれなかった。

梨緒の名前は、C組の隣のB組のところにあったらしい。私と同じ状況のため、慰めあった。
ちなみに龍矢もB組だった。


そのまま、行きたくないがC組へ入る。
1からの友達作りなんて、何年ぶりだろう?
とりあえず、波長が合わなさそうなギャーギャーとした人が6割ほど。
あとの4割も割と元気な人たちで、女子9人中私以外の8人で仲良く話していた。

ふと、ある人と目があった。
「あ!やっちゃん同じクラスだね!」
それは小学生のころの親友、涼子-りょうこ‐だった。

涼子は小学校のとき、学校でもプライベートでもほぼ一緒に過ごした文字道理の親友というやつだった。
たしか、仲良くなったきっかけは…小学3年生の新学期の時に、ある男子に私の好きな人を大声でばらされ、泣いているところを慰めてくれたっけ。
「わたしはやっちゃんの味方だからね!」
その言葉に元気づけられたことを今でも覚えている。
それから、同じクラスだったこともあり、朝学校にいってから、夕方家に帰るまでいつでもどんな時でも一緒にいた。
涼子は私と違ってとても性格がいい子だったので、男子からも女子からもとても人気だった。
涼子がほかの子と仲良くしていると嫉妬してしまうこともあった。
今思えば、このころから私の性格は重たかったのかもしれない。

しかし、涼子との仲は中学校に入って途切れてしまった。
中学校は一緒だったが、クラスが離れてしまった。
性格の良い涼子はすぐ友達ができ、私も友達ができたが、涼子に対する執着が強く、同じクラスの友達よりも涼子だった。
部活も、涼子と同じテニス部に入った。
しかし、そのテニス部の同級生のトップに、望-のぞみ-という子がいた。いじめっ子だった。
涼子に執着し続けていた私は、”レズ”と呼ばれいじめられた。
しかし、涼子はその性格が望に気に入られ、いじめられることはなかった。
そのうち、涼子も望のグループにはいり、私をいじめてきた。中学生はいじめられっこをかばうと自分もいじめられてしまう時期。きっと自分を守る手段だったのだろう。
親友だった涼子にいじめられる…。裏切られたという感情がとてもつらかった。

そんなことがあってから、涼子と話す機会が一気に減った。涼子に対する執着心も消えた。


そのため、今回話すのはかなり久しぶりだった。しかし、その涼子の声と笑顔に安心感を覚えた。
”涼子とまた仲良くできれば、なじめなさそうな他の子こともなじめそうだ”
明日一緒にお弁当を食べる約束もできた。

次の日から涼子と、その周りの友達と一緒に過ごした。
一人でいることに慣れていないため、涼子に付いて歩いた。
お弁当も、9人全員で食べた。
これからもクラスのみんなと仲良くし、笑って過ごせる未来が想像できた。

しかし、そんな日々も新学期が始まって3日目までだった。

授業の間の10分休み、私はトイレに入っていた。
すると、涼子と、クラスの女子何名かが入ってきた。
涼子の口から
「そう!うざいよね!」
そういっているのが聞こえた。
私の名前を出しているわけではないが、直観で私のことを言っているのだと感じた。

その日のお昼休み、
C組の女子たちはいつもならC組内で机をくっつけてお弁当を食べるのに、今日はみんなでどこかへ行ってしまった。
私もついていこうとしたが、さっきの涼子の言葉が引っ掛かり、足が動かなかった。

しかし、一人でお弁当を食べるのはとても心が苦しかった。

”そうだ!D組へいこう!!”

そう思いたった私はお弁当を持ってD組へ行った。
愛良、千里、なちが机を並べてお弁当を食べていた。
「あ!弥千!」と快く入れてくれた。
D組は、1年生のころのクラスのメンバーが多く、まるで1年生の時のクラスに戻ったかのようですごく居心地がよかった。

その日からお昼はD組で過ごした。
”やっぱりいつめんは裏切らない。私の居場所はここなんだ”
そう思えた。


しかし、その心地よい生活も長くは続かなかった。

ある日のお昼休み、私はいつものようにお弁当を持ってD組みへ向かった。
しかし、3人の姿はなかった。
『まだ移動教室から帰ってきてないのかな?』
そう思い、私は教室の前で待っていた。

しかし、10分、20分経っても戻ってこない。


心配になった私は移動教室の方向まで行ってみることにした。

すると、丁度移動教室方面の階段から楽しそうに歩く3人が見えた。

「あ!いたーー!!ずっと待ってたんだよ^^」
私は声を張り上げて言った。

すると3人ははっとした顔になり、同時に下を向いた。
そして、まるで私が見えていないかのように、私の前を素通りして教室へ向かっていった。

『え……なんで?
聞こえてないはずないのに…』


「ね、ねぇ、なち。なんで遅れたの?何かあったの?」

「色々。」

3人はみんなすたすたと歩いて行ってしまった。


何が起こったのか
全く把握できなかった。


でも、こんな状況でも唯一わかったこと。

『私は嫌われた』

ということ。


なんで嫌われた?
クラスに馴染もうとしないから?
いつめんにべったりだから?

いくつも浮かんだが、
はっきりとした理由はわからなかった。

しかし、あのオーラは
確に『嫌い』というオーラだった。
単なるネガティブな私の被害妄想では収まりきらないほど、はっきりしていた。

あんなオーラを出された以上、
また近寄れば余計嫌われる。

もう"いつめん"には戻れない。

ふと、B組を見ると、知らない女の子と2人で楽しそうに話す莉緒の姿が見えた。
莉緒もその友達ができてからそのことずっと2人きりで過ごしている。
1年生の頃、一緒に登校していたが、
ある時からその友達と3人で登校するようになり、
話題はB組みのことでもちきり。

気まずくなった私は、2人と登校するのをやめてしまった。




私だけ友達を失った。

明日から誰と一緒にいればいいのだろう。
いつめんしかいなかったのに…



「あっ!弥千来たー!」

「体調大丈夫??」

「はいこれ、昨日の分のノート^^」



ふと、
一年生の頃の思い出がよぎった。

たしかあの日は前日に私が風邪で休んだ日。

何にも言ってないのに
ノートをわざわざルーズリーフに写してくれたっけ。
そんな優しい友達は初めてだった。


「一人欠けると、面白い事もあっけないよね。やっぱりいつめんは全員揃わないと^^」

そんな風に言ってくれたのに…




仕方ないから、今日から大嫌いな教室で食べよう。
そう思ってC組に戻った。

しかし、私の席はすでに8人のお食事場所で使われていた。


自分の席すらない。
私はこれからどうすればいいのだろう…。

1周り年上の友達

これからどうしていけばいいのだろう……


そんなことを考えながら、
5時限目のホームルームを終えた。

クラスの8人はまたみんな揃ってどこかへ行ってしまった。


大嫌いな教室に、女子独りぼっち。

耐えきれなかった。



ふと、目線を上げると、
ホームルームを終えて教室を出ようとする内木先生が見えた。
内木先生は、看護福祉課の授業を受け持つ女性の先生。

そうだ、何も変わらないかもしれないけど……先生に相談してみよう。


そう思い、教室を出て行った先生を追いかけた。



「先生!!」
私の声に先生は振り返る。

私はその瞬間、心の中に抑えていたものが溢れ出すように、頬に涙がつたっていった。

先生は慌てて、私を人目のない小さな指導教室に入れた。

私は
新しいクラスに馴染めないこと、
独りぼっちで辛いこと
友達がいなくなってしまったこと
これからどうすればいいかわからないこと
お弁当を食べる場所がないこと

全てを先生にぶつけた。
私の顔は涙がでぐちゃぐちゃだった。

すべてを聞いた先生は、私の手を握ってこういった。

「独りぼっちじゃないよ。ほら、ここに私がいる。
歳は離れてるけど、私は弥千さんの友達。だから、辛い時、悲しい時、嬉しかった事でもいい。またこうして私に話して。私は裏切らないから。」

この言葉がとても大きな支えになった。

居場所を失った私に、先生はお昼休みだけ、居場所をくれた。
それは職員室の迎えにある、廊下からは見えない小さな指導教室。
丁度この時期、そこからは校庭の桜が綺麗に見えた。
先生に話した次の日から、私はそこでお弁当を食べた。
時々先生も一緒にそこでお昼を食べて、たくさん話したり、授業準備の簡単なお手伝いをしたりして過ごした。

この場所は、昼休みの長い時の流れの中、独りの私を隠してくれる心地よいオアシスだった。



しかし、ある日、いつものようにお昼休みに
内木先生に指導教室の許可をもらいに行こうとしたところ、
職員室に内木先生の姿はなかった。
授業が長引いてるのかな、と思いしばらく待ったが戻ってこない。

仕方なく、他の先生に許可を貰おうと声をかけた

「先生、3-②教室を貸してください。」

「3-②?何に使うの?」

「あ、えっと……お昼を食べるのに……」

「え?お昼?教室で食べればいいでしょ。」

何も事情を知らない他の先生は、内木先生のように快く貸してくれなかった。

その日は、ちょうどパンだったため、
トイレの個室にこもってこっそり食べた。

後で内木先生が気の毒そうに謝りに来てくれた。

しかし、自分で何もできないのが情けなく感じた。


そこから数日後、内木先生が、席替えを実施してくれた。
そのおかげで、お昼休みに私の席を取られることはなくなった。
先生にも迷惑をかけると思い、席替えをきっかけにお昼を教室で食べることにした。
人目が気になったので、その日から軽食のパンにした。

次の日の朝
玄関で愛良と千里に会った。

おはよう!
と口から出る前に
目を逸らされた。

「昨日のNステ見たぁ?」
「見た見た!まじ山本くんかっこよかったぁー!」

そんな会話をしながら
二人は
私など見えていないかのように
素通りして行った。


誰にも話しかけず
話しかけられず

10分休みも
一歩も席を立たなかった。


昼休みも
ずっと椅子に座ったまま
携帯とにらめっこ。

前の私からは
予想もつかない状況。


先生はあんな風に言ってくれたけど
やっぱり教室では
独りぼっち。

差し伸べられた優しい手たち

そんな地獄のような日々をすごしていたが、
何故だか私はこの時期、人生最高のモテ期だった。
こんな状況だし、どうせ嫌がらせだろ?と思うかもしれない。しかし、私に想いを伝えて来てくれた人たちはみんなそんな人じゃなかったから、嫌がらせとかそんな幼稚なものではないと信じてる。
なぜあんなに暗くて無口な私に好意をもってくれたか、本当に不思議であるが、それでも、自分はC組みに存在するんだと思える糧になり、嬉しかった。


最初に想いを伝えて来てくれたのは、奈留斗-なると-だった。
奈留斗とは、1年生のときちょくちょくD組に遊びに来たり、共通の友達もいたことから、関わる機会が多かった。
とてもユニークでクラスのムードメーカー的な存在。いつも笑わせてくれた。
そんな奈留斗とクラス替えを機に同じC組になった。
バスケが得意で、よく体育の時間に見せてくれた。
私に告白してくれたのはクラスが新しくなって間もない頃だった。
あまりはっきり覚えていないが、確か内容は
「最近元気ないけど大丈夫?
俺は弥千の笑顔が好きだ。だから、これからもずっと笑わせていきたい」という感じだったと思う。
今思えばとても優しくて、でも男らしくて、いい人だった。

次は快斗-かいと-という男子。この人からは直接告白されたわけじゃないので、私の勘違いかもしれないが、なんだか行動からそう感じた。
快斗とは小学校から同じ学校で、小学校の頃男女友達を交えて遊んだりしたことがあった。
しかし中学校に入って全く関わらなくなった。それどころか、友達から変な噂も聞かれ始めた。
「あの人は変わってるから、関わらないほうがいい」
そう友達伝えに耳に入っていた。
事の始まりは6月頃、ある授業のプリントだった。
私はある日学校を休み、そのときもらった問題プリントの回答を貸してあげると、SNSのメールから連絡が来た。
プリントを見せてくれるならありがたいと思い、お礼のメールを返した。
次の日、周りの目を気にしてか、こっそり、自然に私の机にプリントを置いていった。
私はその日の夜、「ありがとう。明日返すね!」
とメールした。もちろん学校で返す予定だった。
しかし快斗は「家近いんだし、届けに来て!そしてついでに家でゲームしよう」と言い出した。
確かに近いので届けるのは問題なかったが、さすがに家に上がるのは抵抗がらあった。私は物事をはっきり言えない性格であるも、遠回しに断ろうとしたが、なにかしら理由をつけて家に上がらせようとした。以前に変な噂も聞いているので余計怖くなった。
結局私は怖くなり、快斗がバイトで家にいない時間を見計らって家のポストにプリントを入れた。
私と快斗の関わりはこれで終わった

有神論

有神論

~天国のような幸せな日々から地獄のような孤独で辛い日々へ~高校時代の私のお話を書いています。明けない夜はありません。今、友達・恋愛など、辛い思いをしている方に読んで欲しいです。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-03-22

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 始マリ
  2. しあわせだった日々
  3. 散った桜
  4. 天国から地獄へ
  5. 1周り年上の友達
  6. 差し伸べられた優しい手たち