リップ

三日月ver 〇

僕は祭りが嫌いだ。
あっけなく終わりを迎える場所だと知ったからだ。

彼女のくちびるにりんご飴の赤が移っていくのを横で眺めていた。
彼女はリップクリームしか塗らなかったので、
可愛らしい彼女が一気に色っぽくなるようだった。
そう思ったのは僕だけじゃなかったらしい。
どうして 無駄に大きな花火の音、花火の上がる瞬間にはぐれてしまったのかと、その場で後悔した。
君の赤は他の誰かに移されていたのだ。

夏祭りの騒然、

それらが無駄に頭に響いた。

花火が不完全燃焼するように
僕の中はムカムカした。

そう思うより早く僕は走り出していたと思う。
遠くへ、彼女の元からずっと遠くへ逃げてしまいたい。
花火を見上げる人達の波を僕はからだをぶつけながら彼女に背を向けた。
必死だった。

気付くと家の近くの公園まで来ていた。
祭りの灯りも見えない。
ブランコで1人座った。

夏祭りの笛の音が聞こえる。
いや、正確には聞こえていた。

さっきまで騒がしかった人の声も
花火が散る音もなくなっている。

すっかり静まり返ってしまったはずの道なのにずっとパチパチと音がなっているように思えた。

リップクリームしか塗らなかった彼女のくちびるが僕の中ではじけて消えない。

太陽ver 〇

むかしからまつりが苦手だった。
たくさんの人がいるのに一人だけ取り残された気分になるからだ。

今日は夏まつりがあるらしく
笛の音がきこえる。
私は一人、公園のブランコでその音をきいていた。

君は今ごろ夏まつりの騒然の中にいるのだろうな。

いつもはリップクリームしかぬらない君のくちびるは
りんごあめで綺麗な赤色にそまっているのだろうな。

君に会いたい。

その想いで足はすすんでいた。

やっと見つけた君。

大きな花火の下で
君のりんごあめでそまった綺麗なくちびるは
ふさがれていた。

私はまつりが嫌いだ。

一人取り残されて
私は歩き続ける。
頬をぬらして。

私の中の君はいつもリップクリームだ。

三日月ver


君に可愛いねって言われたくて
いつもと違う髪型
いつも付けない ピンクのリップ

教室の入り口で 笑う君の声

「おはよう」の後

次の言葉は、どんなだろう

ほんの少し期待する


無邪気で子供っぽく 笑う顔を

照れながら、はにかむ顔にして

「いつもと違うね」 って

太陽ver

私が「おはよう」というと
無邪気な笑顔で「おはよう」とかえしてくれる。
それだけでも幸せだ。

けれどもっともっと幸せが欲しくなるのだ。
皆にみせる笑顔ではなく
私だけの笑顔が欲しい。
私だけの言葉が欲しい。

今日はくちびるにピンクのリップをのせて
いつもはおろしたままの髪を
少し早起きしてむすんでみた。

「おはよう」の後の言葉を想像しながら
教室のドアをあけた。

「おはよう」
私の声で
あなたは私を見た。
そして驚いた顔をしてから
てれた笑顔になってこう言った。

「今日なんか可愛いね」

あなたの言葉でこんなにも幸せになれる。

リップ

リップ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-03-21

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 三日月ver 〇
  2. 太陽ver 〇
  3. 三日月ver
  4. 太陽ver