即興小説 各あらすじ&解説
第o作目 ちいさい女は嫌いですか
作品URL:(原本)http://sokkyo-shosetsu.com/novel.php?id=258172
(微修正版)https://slib.net/57078
お題:どうあがいても列車 おすすめ度:☆☆
【あらすじ】
風呂あがり、土砂降りの夜長。感傷に浸っていると携帯が鳴り出した。
一番好きで、一番嫌いなやつ。3日ぶりに見たそいつは、いつも通りの調子で話しかけてくる。
「しりとりしようぜ」。その誘いに何重にも込められた思惑とは――。
【解説】
まだツイッターアカウントが無かった頃に初めて書いた即興小説。当初この小説を宣伝するためにツイ垢を取得したのは良い思い出。即興小説トレーニングの作品リストには載ってないが上記URLより閲覧可能。
実は挑戦自体はこの時点で三回目だったが、このお題を見たときはじめて最初から最後までの構想が一瞬で頭に浮かび、完結まで書ききり公開することが出来た。今見直しても素敵なお題だったと思う。処女作につき短いのはご愛嬌。
作風自体はこの時点で固まっているといっても差し支えないが、ネガティブな感情から始まる小説はこの頃までのマイブーム。以降の作品から一転して明るい作品を書くことが多くなった。
これに限らず即興小説シリーズには登場人物の基本情報が明かされることが少ない。心境や事情は物語の断片から想像を膨らませていくべし。この物語に深く触れている、かくいう私も貴方も「読者」の一人なのだから。
第1作目 新卒クエスト
作品URL:(原本)http://sokkyo-shosetsu.com/novel.php?id=263105
(微修正版)https://slib.net/57079
お題:愛と憎しみの新卒 おすすめ度:☆☆☆☆☆
【あらすじ】
「気に入った! お前を採用してやろう!」
面接室のドアが開かれ、そこに立っていた可愛らしい社長は元気いっぱいに言い切った。
新卒してもなかなか就職出来なかった青年にはじめて言い渡された仕事。それは竜を退治すること――!?
【解説】
名前付きで初めて公開したという意味でも、この作品が無ければこの後のシリーズ展開も無かったという意味においても、堂々と「第1作目」を銘打っている旗揚げ作品。タイトルを見ればあまり現代感の無い小説であることは予想が付くかもしれないが、書き始めた当初は不運な新卒の辛さを描く純文学の予定だった。急展開が始まるのは終盤になってから。書きながら作者でも予想の付かない方向へ話が転がるのはよくあること。
タイトルもそれに沿ったものが付けられ、私の中で「現代ファンタジー」というジャンルの流行りが始まった。現代社会と魔法が共存し、ぶつかり合う世界観の地盤を築いた。以降の作品は(第0作目も後付け設定で同じ世界観になったが)この作品と共通する世界での外伝となっている。そういう意味では即興小説シリーズを紐解く上で必読の一作である。
なお同じ世界観とは言ったが、時間軸はバラバラである。矛盾がある場合は平行世界の話で片付けることも出来るので、あくまで「同じ世界観」という程度に考えるべし。登場人物の繋がりは自由に想像するべし。
第2作目 人魚姫になりたかった話
作品URL:(原本)http://sokkyo-shosetsu.com/novel.php?id=263540
(微修正版)https://slib.net/57080
お題:何かの体 おすすめ度:☆☆☆(微修正版は☆5つ) 百合度:☆☆☆☆
【あらすじ】
奇抜な転校生がやってきた。名前は碓氷峠 泡姫といい――色んな意味で読めない。
そいつは中学生にもなってランドセルを背負いドレスを身に纏い、ちぐはぐで自由な格好の少女。
成り行きでそいつと仲良くなってしまった私は、彼女が抱える「秘密」も背負うことになって――。
【解説】
まだ難産だった頃の2作目。即興小説シリーズはじめての百合作品。後記するヒロインのイラスト化、及び絵描きさん本人の宣伝力によってやたら読者数が多くなったが、色々と中途半端な作品なのでおすすめ度は普通。好きな人は満足できる絶妙なボリュームなので読みやすさはある意味ナンバーワン。好き嫌いのはっきり別れる後味だと思う。読み返してももう少し何とか出来なかったのかと自問自答。なおサイトの仕様で一度投稿した小説を修正することは出来ない。
お題について思ったことは、抽象的すぎてどう調理していいか分からなかったこと。その抽象的なテーマから碓氷峠泡姫という複雑な設定を抱えたキャラクターを産むに至った。平凡な主人公と歪なヒロインのバディは涼宮ハルヒを引用するまでもなく月並みである。とはいえたった二時間でこれだけ複雑な設定を練り上げちゃんと描き上げた当時の私はかなり頑張っていたのではないかと褒めてあげたい。オチは雑だけどそれもご愛嬌。
原本公開から一年半の月日を経て微修正版の公開が叶った。当時は時間の都合と腕不足で微妙だったラストシーンも大胆に書き足しているため必見。
第3作目 病的これくしょん
作品URL:(原本)http://sokkyo-shosetsu.com/novel.php?id=291810
(微修正版)https://slib.net/57081
お題:情熱的な部屋 おすすめ度:☆☆☆☆☆
【あらすじ】
壁一面に飾られていたのはカレーパンの写真と、標本よろしく今までに食べたカレーパンの袋。
早くも俺はこの部屋に入り込んだことを後悔していた。そして彼女にプロポーズしたことも。
しかし彼女には、そうしなければいけない事情があるのかもしれない。俺は説得を試みたのだが――。
【解説】
そこそこ長いスランプを乗り越え、前作から4ヶ月のブランクを隔てた3作目。この作品でシリーズの方向性と世界観はだいぶ定まり、以降の作品から安定して書けるようになった印象。この作品はファンタジー要素こそ無いものの前作と共通して普通の主人公と歪なヒロインの物語である。前作のリベンジも兼ねていた今作は学園要素が無くなった代わりに閉じた箱庭の中で主人公がヒロインを口説くストーリーになっている。各作品の主人公やヒロインの事情を対比してみるのも面白いかもしれない。
終わり方は捻りがなくて物寂しいが、それにさえ目を瞑れば丁度いいボリュームの作品でありおすすめ度は☆5に設定した。何故かリアル母から「よく出来ている」と好評価を頂き、女性向け小説としては十分成功と言えるか。男性からの評価も気になるところ。
ここで少し裏設定を投下するが、今作の主人公・総司は「新卒クエスト」に登場した社長(美穂)の従兄妹にあたる関係。苗字は亘理。財閥名家の一つであり、現当主の恩恵と寵愛を受けている二人である。美穂は分家の娘なのに対し、総司は本家の息子なので生まれながらにして金脈は十分にある。美穂が小学生にして会社を立ち上げ、社長を務めているのも全ては亘理家当主のサポートが成せる業。「総司」という字面からもかなり棘々しいものをイメージしてもらえればと。
即興小説 各あらすじ&解説