王道ラブコメなんて信じない14

時間軸は少し戻って幽霊撃退事件が終わった帰り道。足尾に「か弱い女を一人で帰らすな」とよく分からんことを言われて不良を家まで送っている最中。繁華街を通っている時に
「ここの路地裏懐かしいな」
と不良が唐突に言った。
「初めてカツアゲした場所か?ある意味いい思い出だな」
「そんなんじゃないよ!アンタがここで助けてくれたじゃん」
「助けた?そんな記憶無い。捏造はするな」
「アンタのおかげで普通に通えているんだよ…。もう…」
面倒だから話を逸らそうとしたが、俺も知っている。いや、忘れるはずが無い。俺と不良が初めて出会った時だから。

あれは一年前。足尾に頼まれて繁華街の調査をしていた時に偶然起きた。
「薫!あの男はなんだ!お前のせいで酷い目に遭っただろ!」
「うちは知らないよ!昴が先に手を出したんでしょ!」
「あの事を学校に言っていいのか?」
「そ、それはやめて!」
繁華街の店や路地の写真を撮っている時に裏路地から揉め事をしている声が聞こえた。
興味本位で覗いたら隣のクラスの橋本がガラの悪そうな黒髪の男に絡まれていた。俺は写真を撮って後で足尾に見せてやろうかと思っていたら
「何見てんだよ!この女を助けに来たのか?やめとけ。この女は一生俺のものだからな」
なんだ、この黒髪。人権を無視した酷いことを言っている。それに気に食わない。
「別に助けに来た訳では無いですが、大声で怒鳴っていたもので気になって見に来ただけです。迷惑なら帰りますね」
敬語で穏便なまま引き返そうとしたら
「星宮!昴を何とかしてくれ!」
何だ何だこの女。俺を面倒事に巻き込むな。
「お前、薫に手を出したのか?なら帰す訳にはいかない」
じゃあ、黒髪を地に還してやるよ。と言おうとしたが流石にこれは面倒になる。
「関係無いので。では、帰り―」
帰りますねと言おうとしたら腹に鈍痛が走り、その場に蹲った。
「気が晴れるまでお前を殴るから覚悟しろよ」
はい。キレました。完全にキレました。敬語になるレベルでムカつく。
「昴とか言ったな。ふざけんな!」
「なっ!」
鳩尾を殴りそのまま倒れた。
「はぁ。面倒なことに巻き込まれた」
飛んでいったカバンを拾いに行こうとしたら
「あの…。ありがとう!」
「気にするな。ただ、面倒事に巻き込んだのは末代まで恨むからな」

「あの時星宮が来なかったら桜庭学園に転校するかも知れなかったから感謝してるよ」
嫌な出来事を思い出してしまった。俺もあれから面倒事に巻き込まれてもいいようにメガネからコンタクトに変えたりなんだかんだで影響を受けている気がする。
「だからね。今日も幽霊が来たら―」
「もう着いたぞ。じゃあな」
これ以上は俺の心臓がもたない。こんなラブコメは俺は望んでいないしそもそもラブコメなんてものは創作物だけの世界だ。
「海斗のバカ…」

王道ラブコメなんて信じない14

王道ラブコメなんて信じない14

偶然という名の必然により集まった捻くれ者とその仲間が起こす不思議な学園ストーリー

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-03-19

CC BY-NC-ND
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