片思いはカジュアルに
片思いの風は、歌の羽根をよく回す。
始まりはナチュラルに
昨日までクールな奴で通ってて 自己管理には自信があった--
おはようと挨拶されただけなのにリズムに乗って跳ねる心音
おかしいな 何故か気付くと目で追って すれ違ったら振り返ってて
楽しげに他の男と話してる 背中全部が耳になってる
体温と心拍数を引きずって 面と向かえば上がるテンション
できるだけ普通に接しようとして なんだか変に冷たくなって
遠くからぼんやり背中見ていたら三度目は名を大きく呼ばれ
帰り道 やけに夕陽が寂しげな今日に限って道づれもなく
寝る前の瞼を閉じた暗闇に浮かぶポニテの跳ねる様とか
--「違うぞ」や「勘違いだ」と言い聞かす 毎度おなじみ恋の始まり
心はアンスタブルに
認めよう この症状はアレルギー ある特定の女子に対する--
繰り返し会う度ごとに確かめる ああもうダメだやっぱそうだな
専用の脳内ハードディスク内 オートセーブで溜まる画像は
枝を這う勘違いしたイモムシが輝く星を見上げるように
グランドの小さな影に手を伸ばし 我に返って手首を振って
繰り返し喉につかえて出ないもの 「す」から始まるたった二文字
不器用に指を絡めて手を繋ぐ夢から醒めて
叫んで二度寝
読み上げの緊張気味の「I LIKE ……」にすら騒めくバカな心臓
一介のクラスメイトの振る舞いを重荷に思うスクールライフ
--見上げれば飛行機雲が空を裂く 僕ら二人を隔てるように
思いはステディに
伝えれば何かが変わる そのことが僕を飛び切り臆病にする--
野良猫に残したパンをあげながらふと呟いたあの子の名前
はい?なんて背後で返事 驚いて尻餅付けば猫は爆走
気づいてた?
いやそんなこと……あるけれど
(ちょっと何だよこの状況は)
あの、実は話があるの
えっ?僕に?
最近なんか冷たいじゃない?
何かこう、気に障ることしたかなー
違うよ!そんな……そうじゃないんだ
問題は君ではなくて僕の方 あー何をどう言えばいいのか
一度しか言わないからな、よく聞いて
僕は!あなたが!
まあ、その……なんだ
取り敢えず、怒ったりしてないのよね?
……怒ってないよ (好きなだけだよ)
--じゃあ明日
うん、じゃあ明日
手を振ればカラスがバカにしたように鳴く
告白はストレートに
ああダメだ このままにしちゃ会う度に変な感じになってしまうし--
もやもやと湯船の中で考える 潜って泡を吐いてみながら
真っ暗な部屋の天井 不随意に再生される今日のあの場所
ああそうだ 覚悟を決める時が来た 出口は既に前にしかない
帰り道、昨日の場所に来て欲しい
今度は僕が話しがしたい
先に着く また野良猫にパンをやる 今度は僕が名前呼ばれる
振り向けば息を切らせた君がいて 謝る声が遠く聞こえて
会うまではできないかもと思ってた
だけど会ったらすごく自然に
好きなんだ それを悟られまいとして変な態度になってごめん
--驚いて俯く君の唇が小さく動く
いいの、わたしも……
片思いはカジュアルに